霧野と神童



※ゲームでの一部実録ネタ
※うちの霧野がパスミスしたんです



「――霧野っ!」

名前を呼ばれて気付いたら目の前にパスされたであろう、自分に向かって飛んで来るボール。しまった、と咄嗟の判断でそれを避けるが明らかに自分のミスだ。

「霧野さんっ!け、怪我とか無いですか…?」
「あぁ、大丈夫だ」

すぐさま駆け寄り俺の心配をしてくれる松風。でもミスをした当の本人である俺は、未だあるものから視線を外せないでいた。

「らしくないですよ」
「…悪い、」

「神童を見てた」

風になびく緩くウエーブのかかった柔らかい髪。
的確な指示を伝えるよく通る声。
時に涙を溜めることもある綺麗な瞳。


「お前は何を言ってるんだ」
「本当だけど」

「俺は神童を見てた」

嘘なんて言ってない。
いつだってそうだ、気付いたら神童ばかり目で追いかけている。練習中も、公式試合中も、準備運動中だって作戦会議中だっていつどんな時でも無意識に彼を探して追いかけてしまう。

「…違うな、神童しか見てない」
「俺、頭痛くなってきた…」

堪らなく恋しくなって、頭を押さえる彼を人目も憚らず抱きしめた。もちろん後で怒られたけれど。
(あぁもう!お前が好きだ!)