佐久間と源田 「佐久間、プリント忘れてる」 「あぁ、悪い」 ほら、と差し出されたプリントを眺めれば頭が痛くなるようなテストの日程。佐久間が溜め息をひとつつき、ちらりと源田の方を伺えば目が合った。 「…何だ」 「源田数学とか得意だよな?」 「だったら?」 ぐっと腕を掴み、源田を図書室へと強制連行。教師の説明より源田の解説の方がずっとわかりやすいことを、佐久間は理解していた。 意味を察知してされるがままに連れて行かれる源田も、断る理由も特に無いし暇だから、ということで付き合ってやることにした。 「で、何からやるんだ?」 「理数で少し曖昧なとこあるからそれが先だな」 「…どうした?」 鞄から取り出し開いたノート、そこに源田の視線が集中する。なんとなくそわそわして佐久間は思わず問いかけた。 「いや、あんまり見たことなかったけど」 「なんだよ」 「佐久間って綺麗な字書くんだな」 (…自分の方が、もっと綺麗な字を書くくせに) 源田の方が字が綺麗なことを、佐久間は知っている。いつも、とは言わないものの時々ノートを借りているからだ。 そんな綺麗なノートだから、自分も少しはマシな字を書こうと佐久間はこっそり努力をしていた。その結果を、今、認めてもらえた。 「そんなのいいから、まず証明について」 「あぁ、そうだな」 (やけに可愛らしい落書きについては、触れない方がいいだろうか) ノートの端に持ち主の佐久間が描いたであろう小さな落書きを、源田は見逃さなかった。それがあまりにも可愛らしかったものだから源田は思わず笑ってしまう。 「…源田、」 「悪い…続けるか」 佐久間が源田をギロリと睨み付ければ、再び源田はノートにペンを走らせ始めた。 君が目の前に居て、君の心地良い声を聞きながら、君の書く綺麗な文字を眺める。 これは俺だけの特権! ――――― 実は好きな二人です でも上手く動かしてあげられないのが…残念 |