緑川と基山




少しだけ開いたドアから中を覗けば、窓枠に腰掛けぼんやりと空を眺めている赤を見付けた。

「…ヒロト、何してるんだ?」
「あぁ、緑川か」

ゆるりとこちらに顔を向ける。それと同時に風で揺れるカーテンと赤い髪。
手招きされておずおずと近くに腰掛ければ、視界に入る一枚の写真。そこに映るのは三人の姿。一人はヒロト、残りはバーンとガゼル。その写真に何故か苛立ちを覚えて見なかったことにした。

「何が好きなのか、考えてたんだ」
「好き…?」
「うん」

相変わらずよくわからない人だなぁ、とかついつい思ってしまう。
再び外を向いた彼の視線の先には、星の海が広がっていた。夏の大三角形、ベガ、アルタイル、デネブ。

「父さんと姉さんと、円堂君、それに晴矢と風介、あと玲名と由宇でしょ…」

指折り数える彼は端から見ても楽しげで、名前を挙げられる人たちが羨ましかった。どれも彼に近い人だ、自分はこんなにも傍に居るのにすごく遠い気がする。
手を伸ばしたら触れられるのに掴むことは出来ない、そんな感じ。

「あぁ、緑川も好きだよ」

こっちを向いたかと思えば、いつもと同じようにふにゃりと笑う。そしてあまりにもさらりとそんなことを言ってみせるこの人は、本当に何なんだろうか。
思わずくらりと目眩がした。