泡沫 | ナノ




「あんちゃん、」
「ご飯、まだー?」
「え? あ、あー、そうだな」

晩飯を作る手が、自然に止まっていた
何やってんだ、俺
遊園地楽しかったか、ってなまえを笑顔で迎えるって決めたじゃないか
あ、あいつが綱海のことを好きでも、見守るって決めたじゃないか

なまえが昨日、笑顔で話していた

―――明日、綱海さんと遊園地行くんだ!

太陽のように暖かい瞳、海のように大らかな心
一緒にいすぎたからなのか
隣にいるのが、当たり前になってた
でもなまえはなまえなんだ
いつまでも俺のそばにいるわけじゃないんだよな
勘違いするな、
思い上がるな、俺

「俺が我慢すれば、いいんだよな」

弟たちの世話で自分の時間が削られるのも、好きなヤツを思い続けるのも
俺が諦めれば、全部解決する話なんだ

「…よし、出来た」

いつもと比べものにならないくらい、時間をかけてしまった
洗濯もの畳まなきゃな、と思いながら、弟たちを夕飯の並べた机の周りに集め
しっかり手を合わせ、食べ始めた

家事に没頭することで、考えないようにしている俺がいて





「ただいま!」

「なまえねーちゃん!」

夕飯を食べ終わる少し前、がちゃりと玄関が開く音がした
帰ってきた、なまえが

「雷電くん、ただいま」
「おう、おかえり」

俺が意を決して、「どうだった?」と聞こうとしたとき
体に何か感じた

「………たった一日なのに、なんか寂しかった」

なまえに抱きつかれたことに気づいたのは、弟たちの驚く顔が見えたときだった





さみしくて、さみしくて

思い上がる自分が誇らしくもあり、悔しくもあった





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