泡沫 | ナノ




微妙な空気で固まってしまったわたし
しかし綱海さんは何を思ったか、いきなりぱたぱたと走っていった
少し経って戻ってきた綱海さんは、にかっと笑いながら、差し出してきた
美味しそうな、焼そば

「食ったら第二部な!」
「はい!」

いっただきまーす!と手を合わせ、綱海さんは大きく口を開けて焼そばを頬張る
それを合図に、わたしのお腹の虫も鳴った
ちょっとした沈黙が過ぎ、綱海さんがぷはっと吹き出した
は、恥ずかしい
それでもわたしは食い気に、負けて食べ始めた
あれ、何で悩んでたんだっけ

「次はどうしますか?」
「そうだなー…」

そのほか、いろんな屋台を食べ歩いて、そろそろ第二部
オバケ屋敷はどうだ?
にやっと笑った綱海さんに、わたしは嫌な予感しかしなかった



「つ、綱海さん」
「ちゃんと居るぜ?」

あわあわ、
必死で嫌嫌とアピールしてきたなまえに構わずに
俺達はオバケ屋敷へ入った

「あ、歩くの早、い……ひゃあっ?!」

作り物のゾンビが壁から出てくる
それを見た、数歩後ろを歩いていたなまえはびくっと飛び上がった
か、かわいい
泣き顔なんだけど、やっぱなまえはかわいい
大体、気があるからデートに誘ってること、気がつけよ
まぁコイツ、ほんとに男に鈍いからな
親友の誰だったかは、呆れ顔で、少しでも自覚させようと、勉強のために少女マンガをかしているくらい

「つ、つなみ、さん…」
「ん?」

手、つないでいい?
涙を必死にためた瞳でそういわれ、
う、嬉しいけどよ…
! いい機会だ、これは利用する他に何もない

「前みたいに名前で呼んでくれたら、いいぜ?」

なまえは、恥ずかしいから、と男子は名前で呼ばない
それなのに、幼馴染だからとか、土方だけは「雷電くん」なんて呼ばれてて
ずるい
ずるい、ずるすぎる
俺だって、小さい頃はじょうすけにーにって呼ばれてたんだからな

「お願いします…条介にーにッ」
「! ッ、おう」

手を繋ぐと、なまえはぴったりとくっついて歩きだした
早く出たいらしく、やや急ぎ足で歩くなまえ
それでもなまえの小さい歩幅は、俺からしたら駆け足なくらい
またこれが、ぴょこぴょこと音が聞こえそうでかわいんだよな

本当に、冗談なんかじゃないくらい、俺はなまえが好きだ
それでも、叶わないことだってくらい分かってる
お互い鈍感だから、あいつらは気付いてないんだ
俺からすれば、両思いなのに
あいつからの嫉妬の光線に気付かないなんて
なまえ、どんだけ疎いんだ





せつなくて、せつなくて

お幸せに、なんて言えるほど、俺は大人じゃないから







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