泡沫 | ナノ




―――ごめん、先に行ってるね

朝起きて、朝飯と弟たちを隣のおばちゃん家に預ける支度をするために
まだ眠い、疲れたと文句をいう体に鞭をうち、無理矢理起こす
結局昨日は、寝たの夜中だったな、
一人ぶつぶつと呟きながら、着替え始める

「なまえ、起きろ」

俺の部屋には、自分となまえの布団が並べて敷かれている
一々なまえん家に帰らなくたっていいくらい
もう、俺の部屋は大分なまえの色に染まっている

「聞いてるのか、なまえ…」

着替え終わり、布団の方を振り替えると
敷き布団、掛け布団、枕、きちんと畳まれて積んであった
あれ、いない

「…あぶねぇな、俺」

なまえが居るのが当たり前のようになっちまってるから
日常、無意識のうちに、話し掛けてる
そりゃあ、家族みてぇにずっと一緒にいるけど
最近は、なんか、…必要以上になまえのこと考えてるんだよな
家族とか、幼馴染だとかじゃなくてさ、あれだよあれ

―――恋、ってやつ

あの笑顔を見るために、飯とか家事全般頑張っちゃうとか
もう末期か、俺



台所の机には、一つ丁寧に包まれた弁当箱と
女子特有のまるっこい字で書かれたメモが置いてあった
あぁ、今日はなまえが弁当作る当番だったっけ

―――ごめん、先に行ってるね
今日は委員会で準備があるから、早く行かなくちゃいけないの

はぁ、と無意識のうちに出た寂しさの籠もる溜息
やばい、絶対末期だわ





かなしくて、かなしくて

夕飯はチャンプルーがいいな、その一文に一瞬でやる気が込み上げてきた







- 5 -




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -