泡沫 | ナノ




「あんちゃーん!」

わたしの隣の家に住む、土方家は
同級生で幼馴染である長男、雷電くんが、忙しい両親の代わりに
小さな弟くんたちの世話をしている

割烹着に身を包んだ雷電くんを、今ではすっかり見慣れてしまい、面倒見のいいお兄ちゃん、というよりはお母さんに見えてきた

わたしの家は、お父さんは他界しちゃって、お母さんだけ
頼れるお兄ちゃんな雷電くんがいるからと、小さな頃から、土方家に普通に寝泊りしてる
同級生だけど、わたしも何かしら雷電くんを頼って甘えていたりする
だから今日も、土方家へと足を踏み入れた

「ただいまー」
「! なまえねーちゃーん!」

雷電くんは料理上手だから
ご飯はすべて雷電くん任せ
さすがにお弁当まで甘えるわけにはいかないから、
「別に気にしなくてもいいぜ?」という雷電くんをなんとか説得し、お弁当だけは日替わりで作らせてもらってる
夕食に使う野菜を畑に採りに行った雷電くんに、留守番を頼まれたらしい弟くんたち
いつもは、部活に入っていないわたしのほうが早く帰るんだけど
今日は委員会の仕事があって
外は暗いし、頼れるお兄ちゃんはいない
不幸が重なって、きっと追い詰められたんだね
だから雷電くん程ではないけど、わたしも結構懐かれているためか、抱きついてきた
五人一気に

「ぅ、…(し、しまってる!)」
「なまえねーちゃーん!」
「あんちゃんまだー?!」





こいしくて、こいしくて

しっかりとした大黒柱なお父さんで、暖かく家族を照らすお母さんで









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