土門くんのお隣さん | ナノ




ミスガール




「てってれー!」

某どっきり番組の効果音を叫びながら
(一之瀬のせいで)身につけ(てしまっ)た、アメリカンポーズで登場した巡ちゃんは
いつも以上に、瞳を輝かせていた。
どうやら、話を聞いて欲しいみたいだ。

「え、いきなり何、どうしたの巡ちゃん」
「どもんくん、巡決めました!」
「なにを?」

俺が聞いてあげると、
待ってましたとでも言わんばかりに
巡ちゃんは嬉しそうに、えっへんと胸を張った。

「サッカー部のマネージャーします!」
「え?マジで?」
「はい!」

胸の前に拳を握り締めた巡ちゃんは、やる気満々で止めようにも止められない状態だったから
俺はもう、放っておくことにした。
別に酷くないからね?
悟ったんだよ俺は。
こういうときは絶対、なんか起こるって…。

「なあ、土門
なんか考えてるとこ悪いんだけどさ…」
「この子、誰?」

実は、巡ちゃんが現われたのは
サッカー部の部室だった。
しかも、放課後の部活動前の、着替えてる時間に。

「あー、みんな知らないんだ」
「あ、いちのせくん、こんにちは」
「え、何その今気付きました的な冷たい反応!
俺傷つくんだけど」
「だって、巡はどもんくん(の腰)しか興味がないので」
「「(なんか変な子きた!)」」

ぎゅーっと、いつも通り俺に抱きついてきた
不思議すぎる巡ちゃんに、みんなビックリしているようで。
まあ、そうだよね。
俺も、最初そうだったし。
ま、抱きつかれるのに慣れてしまった俺も、十分おかしいと思うけど。

「俺の隣の席の子だよ」
「和希巡です!」

ぺこっと頭を下げた巡ちゃんは、嬉しそうに笑いながら敬礼した。

それから、数秒も経たない内に抱きつかれて…
あの、着替えたいんですが。

ヘルプを求めようと、とりあえず部室の入り口へ向かったとき
背後に真っ黒いオーラを漂わせた秋と、ビックリしたような顔の円堂が居た。

「あ、巡!」
「まもるくん!」
「巡ちゃん、やっぱりここに居たのね!
探したんだから!」
「あう、…あきちゃんごめんなさい、‥‥」

巡ちゃんは秋に頼まれてマネージャーを引き受けたらしいけど
案の定、自由人な巡ちゃんは気が付いたら居なくなっていたらしく
秋はカンカンに怒っている様子だ。

「巡ちゃんはとにかく
着替え中に普通に入って行かないの!」
「だ、だってどもんくんが…」
「え、今なんで俺の名前出てきたの」
「巡にはどもんくん専用のセンサーがついてるので!
どもんくんがどこにいるか、すぐにわかるんです!」
「、…どうゆうこと」
「巡すげぇな!」
「当たり前ですよまもるくん
これがあいのちからです!」
「そうなのか!」
「ちょ、ちょっと待って!
話の内容に全くついていけないってば!
てかいろいろとおかしいよね、特に円堂、理解しちゃいけないと思うんだけど?
!」

マミー、今日はツッコミが冴えてるね!じゃねえよバカズヤ。
ちょっと黙っとけ。

「え?
巡、なんかまちがったこといってましたか?」
「うん、おかしいのはいつも通りだけど
突っ込むところがありすぎだよ」
「もう!土門くんもいい加減にして!
とにかく巡ちゃん!早く出るわよ!」
「俺、今怒られる要素あった?!」

巡ちゃんは名残惜しいとでも言わんばかりに
着替え中だから、軽く上半身裸の俺に強く抱きついてきて
ぴったり30秒後に離れた。
巡ちゃんと秋が部室を出ていってから
サッカー部の連中に質問攻めにされたのは
言うまでもない。



**********



休憩時間になるまで、もちろん俺たち選手は練習をしていて
秋たちマネージャーは、その手伝いをしてくれていて。

そう、そうだよ。
マネージャーが選手のサポートをするのに
なんで俺はマネージャーの巡ちゃんをフォローしてるのかなあ?

「土門くん!巡ちゃんが洗濯籠を持って転けちゃったの!」とか
「土門さん!和希先輩がドリンクをぶちまけてしまって!」とか

なんでそのたびに俺は呼び出されて、
片付けを手伝わされてるんだろうか。
まあ、犯人の巡ちゃんに片付けをさせたら、余計にひどくなるのは目に見えてるわけだけど
俺は関係ないはずだ。
おい、音無なんでビックリしてるんだよ。
ばか、彼氏じゃないから!

今日はマネージャーの人出が多かったからと、休憩時間にはおにぎりが出て来た。
俺もいつもの倍(いや、それ以上だ)疲れて
お腹も空いていたから、有難い。

しかし、明らかに異様なものがあった。

「な、なんか変なにおいがするでやんす…!」
「しーっ!栗松!
マネージャーに聞こえたらどうするんだよ!」
「あ、絶対巡ちゃんが作ったやつだ」
「やっぱりどもんくんは、巡のことわかってくれてます!
あいのちからですね!」
「巡ちゃん、それは違うと思うよ、」
「にゃんですとぉ?!」
「巡ちゃん振られたね」
「ダマレ、バカズヤ」
「もう土門が変なこというから
巡ちゃんが覚えちゃったじゃないか!」
「てめえの所為だろ」
「クタバレ、バカズヤ」
「え?!巡ちゃん、自分の意志で言ってるの?!
……………………もう、一哉泣いちゃう」
「「…」」
「そこは無視しないで突っ込んでよ!」

秋や音無が作ったであろうおにぎりは、綺麗に大きさも形も揃っていて
雷門が作ったおにぎりは相変わらず不恰好だけど、味はいい塩加減だった。

しかし
明らかに見た目もおかしいものがある。
もちろん、それが巡ちゃんのだ。
なんで茶色いんだろう…。

妙に気合いが入っていて、
何故か俺は部室から追い出されたと思ったらこれか。

「塩のかわりに、黒糖を混ぜてみました!
健康にいいですよ!」
「どうりで茶色いわけだ!」
「さあ、どもんくん、たべてください!」
「俺さすがにそれは無理だわ!」
「やってみないと分かんないよ、土門!」
「そうです!
やるまえから諦めちゃだめです!」
「円堂だって……言ってたじゃないか!」
「何これデジャヴ?!
だったら一之瀬がやってみろよ!
俺はまだ死にたくない!」
「あいのちからで頑張ってよマミー!」
「てめ、こらっ逃げんな!」

おかしいなあ。
巡ちゃん、お菓子系は天才的に上手なのに。
なんで普通の料理は出来ないんだろう。

「どもんくんどもんくん!」
「え?あ、ちょっとそれだけは勘弁して…!」

後日談、
そう言って走りだした俺のスピードは、風丸にも負けない速さだったという。





ミスガール


結論、
和希巡ちゃんには、マネージャーは無理です!












この子は書きやすいったらありゃしない
まだ付き合ってませんね…
この辺りでこの子は土門くんの腰だけじゃなくて
自身を気に入っている様子が出てきました…!

つまり、そろそろくっつくであろう…

すみません、自己満足です(m´・ω・`)m



11_06_15





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -