土門くんのお隣さん | ナノ




もしお隣さんが人見知りだったら…






もし、自分がもう少し可愛かったら。
もし、自分がもう少し痩せていたら。
無いものねだりだなんて、我ながら子どもじみたことだとは思うけれど。
やっぱり、そう誰しも一回は思うと思う。

「じゃあ次、土門」
「あ、はい」

わたしの隣の席の土門くんは、何でも出来る人だ。
アメリカに留学経験があって、英語はペラペラだし、おまけにサッカー留学らしいので、スポーツマンでもある。
あの帝国学園からの転校生でもあるから、もちろん頭がいい。
誰にでも明るく気さくに接してくれるし、見習うことばかりだと思う。
極め付けに、あの腰。
もう女として負けている気がする。

「…よし、座っていいぞ」
「うす」

わたしにとって、英語の英文をみんなの前で読むのは、かなり緊張する。
どんなことでもそうだけど、わたしは注目を浴びることが苦手。
だから、わたしはいろんな面から、土門くんを凄く尊敬しているのだ。

「…え、俺の顔になんか付いてる?」
「あ、う、えっと
凄いなあって思って…」

席に着いた土門くんは、思わず見とれていたわたしに気がついて、それから小さくありがとうと言ってくれた。
わたしはそれだけでも、顔がりんごみたいに真っ赤になってしまい、土門くんに向けていた視線を慌てて外した。
わたしは、極度の人見知りである。
相手をじっと見つめるのも、相手にじっと見つめられるのも、胸がなんだかむずむずしてきて、上手く話せなくなってしまう。
なおしたいとは思っているんだけど、やっぱりいざというときになればあがってしまい、もう即会話終了。
中学二年にもなって、情けない。
この人見知りさえなければ、やりたいことはたくさんある。
きっと、「やりたい」だけで終わらず、「やれる」と思うのだ。
本当は、人気のある放送委員とか、やってみたいと思う係はたくさんある。
それでも、名乗り出るだけで、わたしの小さな心臓はこれでもかとばかりに脈を打つ。
だから、毎回手を挙げず仕舞いで、いつも人気の少ない余り物の係にしかなれないのだ。

まだ十三年と少ししか生きてはいないけれど、後悔ばかりの人生、だと思う。
確か、小学生の時に一回勇気を出して学芸会でやる主役に立候補したら、まさかの誰も居ないという事態で、自分がなってしまった事がある。
その時は、勇気を出して良かったと思ったのだけど、本番で物凄く上がってしまい、台詞は間違えるわ、躓いて転けるわでもう最悪な思い出になってしまった。
また同じような目になってしまったらどうしよう。
そんな不安が胸の中を渦巻いて、気分が悪くなってしまうのだ。















放課後、静かに自習をしたい生徒や、本を借りたり返したりしにくる生徒だけが利用する図書館。
図書館のカウンターの後ろには「図書館では走りません・静かにします」という何時から貼ってあるのかさえ分からないくらい、古くなった貼り紙が貼られている。
わたしは学校内では別名「不幸委員」とも呼ばれている図書委員に、二年連続属している。
クラスに一人で、さぼる人もいるからか、三年生の委員長でさえ、来なかったりする。
だって貸し借りの手続きなんて簡単で直ぐ終わってしまうし、暇潰しには難しすぎる分厚い本しか棚には入っていないし。
暗黙のルールを、律儀に守るような堅い生徒しか、来ない。
そんなつまらない仕事を、代わってと頼まれれば、断ることなんて出来ないわたしは、毎日のように図書館のカウンターに座っている。
今日だって、本当は見たいドラマがあるから早く帰りたいのに。
人見知り故に、部活には所属していないから、周りからすれば好都合なんだろう。
嗚呼、もう最悪だ。

「なんか顔色悪いけど、大丈夫?」
「はえ? う、あ…大丈夫、です…」

放課後、いつもは部活に所属しているはずの土門くんが、何故かわたしの目の前にいて、心配そうに首を傾げていた。
大きな声を上げそうになったわたしは、慌てて自身の口を塞ぎ、でも滑り出た言葉は段々と小さくなっていった。
わたしに少し、図書館内の視線が集まった。
恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
そんなわたしが面白かったのか、少し明るい表情になった土門くんは、本を持っていた。

「か、借りますか…?」
「うん」

わたしが本を受け取った時、まるで見計らったように下校のチャイムが鳴りだした。
わたしは驚きすぎて肩が上がり、声が漏れた。
すると今度は、土門くんは楽しそうに笑った。
わたしは下を向きながら手続きを終えると直ぐに、本を突き返した。
恥ずかしすぎてしにそうだ。
もう、帰る。
パソコンをシャットダウンし、自身のスクールバックを掴んでカウンターの椅子から立ち上がる。
チャイムが鳴り始めてから、段々と人が居なくなっていく図書館。
戸締まりをして、電気を消すと、雨が落ちる音―――――リズムだけが哀しげに流れ始めた。

「あ、雨?」
「そう
だから今日俺、部活休みになってさ
帰ろうかと思ったんだけど、ちょうど本返してないの気がついてさ」
「ど、土門くんッ?!」
「え、なにその反応
あれ、もしかして気付いてなかった?」

俺、ずっとここに居たんだけど。

図書館の鍵を締め、必死の思いで入った職員室へ鍵を返して。
玄関で外を見つめていたら、隣には土門くんが立っていて。
うわあ、さっき恥ずかしいとこ見られたのに。
下を向いたわたしは、スクールバックの中を探したけど、傘はない。
少しうなだれていると、また隣から、楽しそうに笑う声が聞こえる。
また、見られた。

「やっぱり、面白いね巡ちゃんは」
「お、面白くなんか…ないで、す、」

「あ、ごめん
そう言う意味じゃなくて」
「?」
「おっちょこちょいで、人見知りで
女の子らしくて可愛いってこと」





メルトダウン


(あ、傘無いなら送ってこうか?)

顔が真っ赤に染まったわたしに、そんなことを出来る余裕はなくて
外に飛び出せば、まだ上履きだった。

(ちょ、ちょっと巡ちゃん!)
(、見ないで、くださ、いッ!)












土門にお返しを渡させる予定だったのですが
元々は、巡ちゃんはこんな感じの設定だったんですよっていう裏話(*´ω`*)
簡単に言えば、余計な短篇
ま、最初は土門くんに振り回してもらおうと思ってたんですよ
巡ちゃんをめっちゃ純情な、人見知りの女の子にして、ね
今と真逆ですね、はい

今回は間に合いました!
が、またまたホワイトデー関係ないというね、うん

時間があったら、普通にホワイトデーの話書きたいんですが
そろそろ、学校説明会あるからなあ
クラス分けのテストあるからなあ

わたしを待ち構えるのは、多忙な日々です… 泣



11_03_14





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