呟く | ナノ


★星屑パレット

自分のお題サイトにあげたヤツを使うつもり。
元々自分用に作ったんだもん!

稲妻一之瀬相手でこんな感じ。
だけど、続きが思い浮かばなくて断念。





土砂降りの雨が降る。

朝、快晴。
「今日は晴れるでしょう」天気予報のお姉さんが、あの優しい笑顔で言っていたのだ。
だから間違いないと、わたしは御機嫌に鼻歌なんて歌いながら登校した。

天気予報が、嘘を吐いた。

わたしの知る限り、外れたことの無いお姉さんの予報だったから余計、ショックだった。
勝手に信頼を置いていたのだけど、やっぱり雨のせいなのか。
気分は下に下に、下がっていく。
小学生ではないのだから、置き傘なんてしていないし、生憎いつも一緒に帰る友達は、今日に限って用事があると先に帰ってしまった。

「あー…止みそうにないよなぁ」

玄関には置いたたままなのか、いくつか傘があるのだけど、だからといって人の傘を使っていいわけが無い。
わたしも何回か誰かに傘を捕られたことがあるから、あの悔しさは忘れられない。
だから、ムカつくけど、わたしが誰かにしてもいいわけじゃない。

それにどれだけ溜息が出ても、結局は傘が無いわけだから帰るにも帰れない。

「ほんとに、どうしよう……」

わたしは、委員会の集まりを済ませ、今玄関で靴を片手に固まっている。
他の委員会は、運悪くわたしの所属する委員会よりも早く終わっており、誰か知っている人は居ないかと探すも、無駄だった。
嗚呼、とんだ災難じゃないか。

「…、よし、走ろう」

少し待ってみたが雨は止まないし、今はかなり遅い時間だから、校門が閉まってしまう可能性が高い。
諦めよう。
ええい、ままよ!と威勢よく飛び出そうとしたとき、ふいに背後から声が掛かる。

「、ちょっと待って」
「…?」

片腕が捕まる。
走りだすわたしを引き止めようとしたのか、相手の引く力にわたしはバランスを崩す。
あ、と思ったとき既に遅し―――――わたしは倒れた。

「おっと、…ごめん、大丈夫?」
「え、」

倒れた。
助けようとしてくれたであろう相手の胸の中に。
見上げると、女の子のように可愛らしい男の子が、わたしを心配そうに見ていた。

「あ、ありがとう」

とりあえず、わたしの中の常識が働いて、言葉が出た。
彼は助けてくれたのだから、わたしのことを。
いや、それにしても彼は誰なんだろう。
身長はあまり高いわけでもないし、運動部なのかちょっと筋肉質だけど。
この中学に二年も通ってるわけだから、大抵の人の顔くらいは知っている。
でも、知らない。
この人は、誰なんだろう。
え、先輩だったらどうしよう。
それよりも、いつまで抱き締められてんだろう。
一人思いに耽っていた。
「大丈夫?」と、わたしの顔の前で手を振る彼と、ザアザアと降る雨の音が、わたしを現実に戻してくれた。

「あ、えっと、………俺の傘、使って」
「え、」
「女の子が風邪ひいたら大変だしね」

なんなんだろう。
普通、こんなキザな台詞、こんな簡単に言えるだろうか。
彼が微笑むと、きらっと星が出てきて煌めいたような気がした。
不思議な感じだ。

「でも、あなたが濡れちゃうから」
「別に俺は大丈夫だよ」

大丈夫なわけないだろう。
外は大雨、少し風も吹いてきた。
夜の闇に似合うくらい、怪しげな雰囲気と、恐い印象を醸し出している。

「ほんとに、走って帰るので、大丈夫です」

わたしは意を決して、そう切り出した。
見ず知らずの人に、迷惑をかけるわけにもいかないし、正直どうしたらいいか分からなかった。

わたしは彼が、「じゃあ、俺は帰るね」とでも言ってくれると思っていた。
しかし彼は、わたしの予想の遥かに上を行った。

彼はわたしの手を引っ張って、可愛い青のチェックの傘を握らせ、「よし」と呟いた。
そして、この大雨の中、外へ走りだしてしまったのだ。

「俺、一之瀬一哉!
いつか返してくれればいいから!」

「え?! あ、あの…!」

ありがとう
わたしの声が届いたのか。
彼は振り返った。
嬉しそうに、笑っていた気がした。





Trust your gut feeling.
自分の直感を大切にせよ

君を見たとき、稲妻に打たれたように、衝撃を受けたんだ。



01/03 14:50