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★一之瀬成り代わり女主

デフォルト:一之瀬 和葉(イチノセ カズハ)
愛称:カズ

Old:10→14
High:132→158
Weight:28→43

一之瀬一哉の成り代わり。
つまり、彼は出てきません。

女子サッカー、アメリカジュニアリーグの絶対王者。
「フィールドの魔術師」の異名を持つ。
MFでありながらシュート、ディフェンス技も持つ、攻守共に優れたプレイヤー。
負けず嫌い=努力家。
雷門中に現れるまではアメリカで過ごす、本場育ちのジャパニーズ。

つまりは彼と似たような道を着々と進んで生きているが、性別の壁にぶち当たっている。
だから公式戦には出ない。
FFIは検討中。

本人は成り代わったことを知らない。

※「」が日本語、『』が英語とでも解釈していただければありがたいです。



アメリカの広く雄大な空に広がる白い雲を、一つ、二つと数えていく。
50まで数え終わった頃には、大分日が昇って来ていて、時間がかなり経過したことを知らせていた。

両親の仕事の都合で、わたしは気が付いたらアメリカに住んでいた。
普段はバリバリの英語で生活しているし、日本人だからと、差別されるわけでもない。
ただ少し、アメリカの子たちよりも発育が遅いことは、確かだった。
友人は可愛いと言ってくれるけれど、大人びてきた同級生たちを見ていると、嫌でも自分の小ささや、違いというものがわかってしまう。
ただアジア系の顔というものは、皆と違うからか、魅力的に見えるらしく、わたしは平凡な顔立ちだったけれど、これだけは自慢だった。

広い牧草地なら、もう少し空が広く見えるのだろうか。
住宅が立ち並ぶ都市には、個々に立派な広々とした芝生の庭が在るけれど、やっぱり何処までも続いている広い草原や牧草地に比べたら、ちっぽけなもので。
去年、お父さんの仕事仲間の人のお家へ遊びに行かせて貰ったとき、広がっていた牧草地は壮大なスケールだったなあ。
いつか、あんなところでおもいっきり走ってみたい。

『あ、やばい
もうこんな時間だった…!』

わたしは近くの公園の芝生に寝転がって、空を眺めていた。
大分前から、見に行きたくてウズウズしていたサッカーの試合を見に行っていいと言われ、舞い上がって家を飛び出してきたものの、試合開始の時間までかなり時間があったからだ。
いつもは肌身離さず持っているサッカーボールで遊ぼうと思っても、スタジアムは混むから、無くしてしまってはいけないとお母さんに怒られたから、今日は家に置いてきてしまった。
手持ちぶさたに携帯電話を取り出してみるも、何もすることがない。
あーあ、どうしよう、と近くの公園の芝生に寝転がり、そのまま時間を持て余すあまりに雲の数を数えていたのだ。

気が付けば、かなりの時間が経過していて、よく自分は飽きずに寝転がっていたなあと半ば驚きながらも、わたしは飛び上がるように起き上がって走りだした。
今日はスカートといってもキュロットスカートだし、大丈夫だろうと公園のフェンスに右手を掛け、一気に飛び越えれば、目の前にはスタジアムが大きく広がっていた。
ぱらぱらと集まってくる人影の中には、友達同士、家族、様々な人がいる。
もやもやとした感情が胸に込み上げて来たけれど、わざと気にしないようにして、わたしは足取りをしっかりと踏み締めて、スタジアムへ向かった。
人混みにまぎれてスタジアム内に入ると、そこにはアメリカ国旗と、チームカラーの横断幕が堂々と存在をアピールしていた。
鮮やかな色で彩られた会場は、既に熱気が広がっている。

『ど、どこに座ろう…』

念願のスタジアムでのサッカー観戦が出来るのだから、前の方の席で観たいのだけど、既にハンカチやタオルでほとんど場所取りをされている。
何処か、空いている席は…。

キョロキョロと辺りを見回していた時だった。

『ねえ君、どうかした?』
『え?』
『誰か一緒に来てないのか?
……もしかしてはぐれた?』
『あ、いえ
そういうわけじゃ…』

メイプル色に輝く髪に、青い瞳。
これぞアメリカ人と言えるような外見をした、わたしとあまり歳が変わらなそうな男の子が目の前に立っていた。
人の良さそうな顔が、面倒見のいいお兄さんのような印象を受ける。
彼の手にはたくさんのコーラが握られているけれど、入り口付近で立ち止まっていたわたしを、人混みにのまれないように、さりげなく避けさせてくれる―――試合観戦になれているみたいだ。

『え?もしかして、一人?』
『あ、はい
『ええ?!
女の子が一人で来ちゃ危ないだろ!』

彼はそういって、何故かわたしに手招きをした。

『あ、まだ自己紹介してなかったな
俺はマーク、マーク・クルーガー』
『え?
わたしは、一之瀬和葉』
『和葉…?ジャパニーズか?』
『うん、
でもカズでいいよ
みんなそう呼ぶから』
『そっか!
じゃあカズ、名前も知ってるわけだから、俺たちはもう友達さ!
だから一緒に試合観ようよ!』
『! え?いいの?』
『ああ、もちろんさ』

『ちょっとうるさいヤツがいるけど』と、眉を下げながら言った彼―――マークくんの後について歩くと、かなり前の方に場所取りをしたらしく、どんどんと下に降りていく。
話していくと、マークくんは同い年みたいで、今日一緒に来ている友達も、同い年らしい。
仲が良いんだなあ。

『あ、カズの分のコーラ………
今から買いに行っても間に合わないだろうし、俺と分けようか』
『え?! わ、わるいよ
ただでさえ迷惑かけちゃってるのに』
『気にしない気にしない』

まだ出会って5分も経っていないのに、マークくんは本当に女の子に優しい。
紳士、って感じだ。





**********



『遅くなってごめん!』

マークくんが立ち止まった先には、楽しそうに話す二人の男の子が居た。
マークくんの友達だろうか。
二人の背中にマークくんが声を掛けたけれど、ぴくりと小さく反応し、振り返っただけで、マークくんの友達らしい二人は、何も答えなかった。
どうか、したのかな。

『あ、この二人はドモンとニシガキ、ジャパニーズなんだ
最近俺たちのチームに入って来たんだけど
全く言葉が通じなくてさ…』
『チーム‥?
マークくん、もしかしてサッカーやってるの?』
『ああ、クラブチームだけどな
言葉は通じなくても、サッカーなら分かりあえるかなって思って、一緒に来たんだけど……』

ジャパニーズ、か。
わたしもパパやママは家だと日本語で話してるから、わたしも話せるけど。
パパとママ以外とは話したことがない。
通じる、かな。
自信がないけど、やってみるだけの価値はあるよね。
自分に暗示をかけて、言い聞かせるように。
勇気を出せるように拳を握れば、三人は不思議そうな顔でわたしを見ていた。
わたしは大きく息を吸い込んだ。

「こんにちは、ドモンくん、ニシガキくん
わたしは一之瀬和葉
さっきマークくんと友達になったの
よろしくね」
「! 日本語、話せるのか?!」
「うん、パパもママも、ジャパニーズだから」

わたしの隣で、マークくんはコーラをもったまま、驚いた表情でわたしをその瞳の中に映す。

『そうか!
カズはジャパニーズだもんな』
『自己紹介したよ
コーラ、渡せばいい?』
『ああ!
ありがとうカズ、すごく助かった』
『わたしなんかで役に立つなら嬉しいよ』

わたしがマークくんと二人の間を通訳して、少し話をしていると、『Hey!マーク!』という声が、後ろから聞こえてきた。
マークくんの友達、だろうか。

『おう、ディラン
遅かったな』
『聞いてよマーク、エリックがミーのポテトをくれなかったんだよ!
うっかり忘れてたとかって……あれ?ユーは‥』
『彼女はさっき一人でいたから、一緒に観ようって誘ったんだ
カズ、こいつはディラン
うちのチームのストライカーさ』
『お、お邪魔してます、一之瀬和葉です
カズでいいよ
はじめまして‥ディラン、くん?』
『そうだよ、ミーはディラン・キース!よろしく、カズ!
ちょっとマーク、今大事なところ抜けてたよ!』
『ん? ・・・
………ああ、エースストライカー、な』
『そうだよ!』

『そこ大事なんだからね!』とマークくんを叱るように追い詰めるディランくんは、どうやらムードメーカー的存在らしい。
『マークがナンパしたのかと思ったよ!』なんておどけた調子で言ったディランくんに、マークくんの拳骨が飛ぶ。
わ、わたしなんかナンパされるわけないのに…。

『それにしても、女の子が一人で試合見に来るなんて、珍しいね!』
『そうだ、カズ
今度からは一人で来ちゃダメだからな?
ただでさえ人が多いスタジアムで迷ったりなんかしたら大変なんだから』
『マーク、ママみたいだよ!』
『べ、別にそういうつもりで言ったんじゃないから…!』
『……うん、そうだね
気をつける』

女の子の友達で、話が合う子なんかいないなんて、言えるわけがない。
ママやパパだって、仕事で忙しいし。

そうだ、きっと今日はマークくんみたいな優しい人に出会えて運がいいんだ。
後先を考えずに、衝動的に動いていた自分が恥ずかしい。

『Oh!もうすぐ始まるよ!』
『あ、ディランくん
そんなに乗り出したら危ないよ』
『カズも立って応援しよう!』
『‥まだ始まってないぞ、』

わたしのせいで狭くなってしまった席に座り、ディランくんからポテトを、マークくんからコーラを貰いながら、わたしは初めてのスタジアム観戦をした。
初めて、パパとママ以外のジャパニーズと話せたのも新鮮だったけど、やっぱり一番心に残ったのは、



(サッカーは楽しい!)

という気持ちだった。



幼少期からスタートで、完全に捏造。
結果的には土門かマーク辺りとくっつけたい。

まあ、予定だからね(;´∀`)



01/03 15:20