2、僕がアンドロイドです




月の上で二人、手を繋ぐ夢を見る。
地平線を眺めながら寄り添う。
そっと指先に力をこめて、祈るように目を細めた。
月の地平線から、星が昇る。
君の瞳と同じ色の星が。

隣の君に早く伝えなければと思うのに、僕が口を開こうとすると、夢は醒めてしまうんだ。

凌牙……、―――
――――
――






「フォーマット完了。
主電源切り替え完了」

IVの意識がゆっくりと持ち上がって行く。

「……IV。
聞こえるか」
「ええ。ごきげんよう、凌牙」

IVの両目にあるステレオカメラが、目の前の凌牙に焦点を合わせる。
肩にかかる髪はIVより少し長い。東洋系の顔立ちは慎ましいが、幼さが際立って神秘的だ。青い目はまばたきするたびに朝凪や夕凪を連想させる。
彼の声をIVの体の後方と前方、各所に取り付けられたマイクロフォンが捉えて空間の位置関係を把握した。
フォーマットのため本来の基盤を抜かれ、バックアップ用で動いていたのを、ようやく元の備品に戻れたのだ。
動作は快適だ。

「あのレディはどうされましたか」
「追い出した」
「凌牙……、そうやってるといつか開発費を援助されなくなりますよ」
「いらない。
お前以外にもう造る気はない」

IVがゆっくりと起き上がる。先ほど動作できなかった統合転倒運動制御がうまく動いているようだ。
倒れた状態の体を起こすにしても、立ったままでいるにしても、IVの体は常に制御と電力がいる。

「やっぱり予備装備じゃ動きにくくって仕方なかった」

指と手首、肘に肩。
順々に動かしていき、動作を確かめる。
その滑らかな動きはもはや人間と変わらない。
しかし、人間の腕の関節が「肩」「肘」「手首」の大きく三つしかないのに対し、IVは「上下」「左右」「回転」の動きだけで間接一つにつき三軸も要している。
人間の動きを再現するため、彼の両腕には14、指を含めて42以上の間接軸があるのだ。

「フォーマットはうまくいったんですか?」
「……」

凌牙は考え込むように腕を組んだ。
IVのように人工知能が複雑なアドニスには、フォーマットは必要不可欠だ。
人間ならいらない記憶は捨て、無関係な事象は関心を示さないという行動が取れる。
しかしアドニスはそうはいかない。
「削除」「省略」「短縮」の判断が、人工知能には難しいのだ。
定期的にそういった不必要なメモリを初期化(フォーマット)することが必要となる。

「IV、ここ最近はメモリがパンクしてるぞ。
お前ならもう少し効率的に動かせるはずだ。フォーマットの処理が追いつかない」

凌牙の肩がいつもより細く見える。
ここ最近はIVのメモリに突きっきりだった。疲労は相当だろう。

「すみません……」
「……ふ……、そうしてるとお前の方が人間らしいな。俺よりも」

申し訳なさそうに目を伏せる仕草すら、芸術かもしれない。
髪をかきあげながら、凌牙は深いため息をついて笑った。

「凌牙、レモンパイを作っておいたからコーヒーでも淹れましょうか」
「その前に服を着ろよ」

チェアから立ち上がる姿は何も纏っていない。
それは充実した青年のありのままの姿だ。
人間で言えば二十歳たらず、若さ溢れる美しい肉体だった。

「凌牙、心拍数、上がりましたね」
「い……いつもロボットらしい振る舞いは嫌うくせに。
こういう時のお前は、あらゆる機能を駆使してきやがる」

根っこの部分が性悪なんだよな、と凌牙はそっぽを向く。
そんなことをしたって、IVには凌牙の心拍数や呼吸など全てお見通しだ。
もう何百何千と繰り返されたメンテナンスだが、IVが裸になるたびに凌牙は目のやり場を失い心拍数を上げる。
これはアドニスのIVでなければ気付けないほどの変化だ。

「なんだかいつも、嬉しくなるんです。
凌牙がどきどきしてくれてるのが」
「……」

お前はいつも素直でいいよな、凌牙がそう呟いた。
その瞳がほんの少し、寂しそうだ。






「ぁっ、っ……、
ん、っ」

乳首に吸いつくと、凌牙の胸は筋肉がひくつき、ぴくぴくと可愛い反応をしめす。
散々弄ばれた乳頭は既にぷっくりと立ち上がっていて、さながら女のようだった。
凌牙の体は暴かれることに慣れてしまっている。

「ふ、ぅ、……はぁーっ、っ、はぁっ…、…」
「凌牙……」

深く呼吸をして喘ぎ声を隠そうとする凌牙だったが、それが余計に艶やかだった。
IVは凌牙の尻に指先を滑り込ませる。

「IV、、ぁっあ、」
「ここに欲しいんでしょう」
「っ……だ、だめだ、そこ……」
「でも筋肉の動きで分かるんです、凌牙、ここが弱いんだって」
「うっあ、ぁ、」

筒抜けの体温、心拍数、瞳孔の広がり。
IVは何もかもお見通し。

「凌牙からも、言ってください」
「……」
「僕が欲しいって、ちゃんと口で言ってください。
どうしてほしいのか、教えてほしい」

顔を背けようとする凌牙の顎をすくって、IVは囁く。
甘える子供のようだった。憎めないいたずらっ子が、凌牙の耳に息を吹きかける。

「ティーチングをお願いしますよ、博士」

シミュレーションだけで値を決定するのでは、アドニスは実際の動きを再現しきれない。プログラムの入力だけではスムーズに動けないのだ。
アドニスの可動部には重力によってたわみも出るし、動けば慣性もはたらく。
そこで人間の手でアドニスを動かし、その値を覚えさせる作業がある。
全てを考慮しながら円滑な動きができるよう、人間が手取り足取り教えてやるのだ。
これがいわゆる「ダイレクトティーチング」だが、もちろん凌牙もIVに対して行っている。
起動した当初から予め常識的な記憶を全てインプットされていたIVでも、実際に稼働すると当たり前の動作がうまくいかずに戸惑った。
例えば、箸の持ち方を記憶していても、実際にそのように体を動かす事が初めてだったIVには、その作業が苦難の連続だったのである。
それを辛抱強くティーチングしたのが神代凌牙だ。
ペンの持ち方、コップの洗い方、優しい握手の仕方。
それが次第にこんな関係になったのは、IVが嘘をつけないせいもあるのかもしれない。
アドニスであるIVはプログラム上、人間に対して偽証することが出来ないため、ティーチングの過程から既に凌牙へのアプローチが始まった。

『好きです』

そう言った時、凌牙は最初驚いて固まっていた。
手を繋ぎたい、キスがしたい、セックスがしたい、IVはいつも真っ直ぐに伝えることしか出来ず、凌牙をその度に戸惑わせた。
初めてキスを許してもらえた日には、IVが先走って食らいつくようなキスをしたために、凌牙が怯んで取り乱してしまったことさえある。
ぎこちなく繰り返された凌牙のティーチング。
初めてのセックスの時、表情には出さなかった凌牙の心拍数はいつもより跳ね上がり、若干の恐怖すら感じていたらしい。
IVは彼を抱き締め、しばらくそうしていた。緊張を和らげるために。
凌牙は一つ一つを丁寧に説明してくれた。恥じらいながらIVの手を導いて、生身の体を隅々まで見せてくれたのだ。
IVはその全てにキスをした。

「凌牙……、教えてください」

今でもベッドの上で、IVは凌牙にねだる事がある。
凌牙は頬を染めながらそれを指導しなければならない。この時の浮かされた声が、IVを興奮させる。

「……IVのが欲しい……!」
「どこに」
「……、」

凌牙の唇に耳を寄せ、抱き締める。
シーツの真ん中で囁かれる凌牙の気持ちを、IVは聞き漏らさない。
いやらしく、熱く、いじらしいその言葉を聞き届けて、IVは慣れ親しんだ体を割り開く。
暴いて奪うのだ。凌牙の心ごと。

「ぁっぁ、はっ……はぁ……っ」
「……ふっ、っ……りょうが」
「んくっ……くっう!!んっ」

昼間と違って仔犬のようになってしまった凌牙を、IVは抱くのだった。
鼻から抜けるような甘い声を出す仔犬は賢くて、毛艶もいい、だが本当は寂しがりやだ。
彼の母犬になりたい。甲斐甲斐しく愛を囁いていたい。

「っふう!っう、……ふ……は……」
「凌牙っ……すきだ」

凌牙の足の間で、IVが腰を揺らめかしている。凌牙は身を捩って枕に口元を埋めていた。
半分だけ覗く潤んだ目が、こちらを見上げている。IVがその目を見つめると、またすぐ逸れてしまった。
IVは凌牙の両手首を掴んで、顔の横に縫いとめる。仰向けにされた凌牙の瞳が露になって、IVの下で慌ててまぶたを閉じた。

「凌牙……」

口をつぐんだままの凌牙へ、IVはゆっくり奥深く進入した。
一番深くまで入った地点でそのままぐいっと腰を押しつけ、それを維持する。強く強く、一番奥を押し上げ続けるのだ。
圧迫され続けると凌牙は感じてしまう。
律動する時の激しい感覚とは違い、深い快感になるらしい。

「ぁ……あ……!」

ぎちぎちと押され続けて、凌牙の背はみるみるうちに反りあがってしまう。
IVは腹に力を入れて、中の分身を上げ下げしてみる。尻の奥で男性器が蠢くと、凌牙は閉じていた目をようやく開いた。

「ンっ、……!んーっ……!!!!!」

切ない悲鳴。芯が疼いた白い体は、肋骨の形をうっすらと浮かび上がらせながらびくびくと跳ねる。
IVは腰を押し続ける。凌牙はまぶたを閉じる事もできずに朦朧としていた。
半分開かれた目は恍惚としながらも物欲しそうで、昼間に見せる色よりも濃いように見える。

「動かなくても凌牙はイっちゃいそうですね」
「……っう、」
「でも動くともっと可愛くなる」
「ッひ……ぁあんッ!!!」

IVがペニスの根元から腰を回した。
凌牙の声が突然大きくなり、弾ける。

「…めっ……、やめ、……」

震える声が嘘をついている。
いや、嘘ではないのかもしれない。凌牙は自分が淫らそのものになってしまうのを食い止めたいのだ。
IVは凌牙の耳元へ鼻先を寄せた。

―――やめたい?

吐息だけで聞いてみる。
凌牙は黙りこんでしまった。その間にもIVの腰がかなりの強さで凌牙を押し続けている。
臍の下あたりからじわじわ広がる快感に正常な思考は蕩けきり、凌牙はもうどうすればいいか分からないでいた。
どうしましょうか、IVが意地悪く囁きかける。
IVはアドニスだ。例えどんな状態でも、凌牙が嫌だといえばやめられる。
しかしそれがすべて正しい事ではない事を、IVは既に知っていた。
以前のティーチングの段階では、凌牙が嫌と言った通り素直に止めてしまった事がある。拗ねたような顔して再び誘ってくる凌牙が可愛かった。ねだらざるをえない彼は、欲しいものをなかなか言葉に出来ず、かといってアドニスであるIVには一度「嫌」と言われた事を再び迫る事はできなかった。
口で言って、態度で示してもらうまで。(結局一時間近くかかったのである)
それはそれでいいのだが。

「……こんなじっくりするな、ぁ……!」
「今夜は激しいのがいいんですか?」
「……あっ、ぁっっっ、あ!」

IVが二回三回と腰を回す。凌牙が大きく悶えながら何度も頷いた。
凌牙の体力が心配な時にはじっくりじっくり時間をかけて長い快感を追うが、今夜の気分はそうではないらしい。
明日の仕事が休みの日などには、凌牙も激しくされたがる。
まだ若い博士の体は、いくら冷静を装っていても熱を持て余しているのだろう。

「じゃあ、僕も遊びたいです。凌牙と一晩中」

IVが場違いに微笑むと、凌牙がかっと頬を赤くした。
言葉の意味が分かったのだろう。おずおずと目を伏せている。





「どれがいいですか?」

IVが持ち出してきたのはさまざまな形のユニットだった。
どれも使用用途は同じで、いわゆるラブグッズだ。
アドニス開発時、性技をテストするためにIVに与えられたものである。
初心者向けであろう白やピンクのものは小さめだが、黒などはマニアックなものらしく、大きさもそれなりだった。

「これは前に凌牙が痛がっていたものですから、止めておきますね」
「……」
「……僕はこっちがいいな。凌牙が好きそうだし、新しいから試してみたい。
それともこっちか、そっち?」

何度も繰り返すが、IVは正直である。
凌牙の目の前に次から次へとひょいひょい玩具を差し出して、それぞれ反応をうかがってくる。
凌牙がほんの一瞬視線を迷わせたり、小さく唾を飲んだりする動きで、どれに興味を持ったかが分かるらしい。
それである程度 種類を絞ってから、最後は凌牙の口で言わせようとする。とんでもない紳士である。
その代わり、彼の行動動機は凌牙に対する恋が全てであり、卑しさがない。憎めないのだ。凌牙のペースは完全に乱されてしまう。

「僕、凌牙が欲しいものを欲しいって言えずにいる時の顔、好きですよ。たまらない」
「や、やめろ、もう言うな……!」
「どれがいいですか?
一番長く見ていたのはこれだけど」

ほとんど無意識に近いレベルで気に留めていた固体を当てられて、凌牙はますますどうしていいか分からなくなる。

「ど、どうしてこうも増えてるんだよ……?!」
「アドニス開発の女性スタッフさんが発売前のものをよくくれるんです。ちゃんとお礼は言いました、安心してください」
「……」

その顔で実にさわやかに質問したりねだったりするんだろう。
体が大人でも好奇心が子供のIVだ、みんなして甘やかさないでほしい。

「これ、使っちゃいけないんですか」
「あ……いや……、」

凌牙の顔先にかざされた、二つの白いユニット。
一つは楕円形をしていた。大きさは掌ほどだ。しかしIVが先端を押すと小さな丸い突起がいくつも現れる。凌牙の背中がぞくりとした。
同じくセットになっているもう一つの方は、形が微妙に違う。突起は大きめのが一つしかないようだ。どう使うのだろう。

「……っ、つ……」
「……」
「……使ってほしい、」

凌牙がようやくつぶやくと、IVはまず突起が一つしかないすべすべしたユニットを凌牙の股へ当てた。

「!!!!そ、そこは……!」

凌牙が慌てて隠す。
後ろはまだいいが、前は凌牙のコンプレックスなのだ。
IVに抱かれる時、凌牙は後ろを使って欲しいとねだる。IVもそれは重々承知していた。

「大丈夫、触らない」

IVはそう言って、凌牙の足を開かせる。
未だに毛の生えていない幼いそこには、凌牙のコンプレックスである性器があった。
IVはユニットの突起をそこに当てて、テープで固定し始める。

「やっ……?!?これは、」

凌牙の一番敏感な部分に、突起が当たっている状態だった。
毛のないそこは固定しやすく、しかもその状況がよく見える。

「IV……!」

不安げに名前を呼んだ。
IVはその瞳をじっと見つめている。止めるか続けるべきか、瞳孔で判断しているようだ。
IVは、続ける事を選択した。突起だらけのユニットを凌牙の尻穴に半分まで押し込む。

「ひっぁぁあ゛!!」

その瞬間、前と後ろのユニットは同時に震えだす。
どの突起も凌牙の弱い部分を的確に刺激するのだ。
震え方はランダムで、止まったり震えだしたり、強弱がついたりを、個々で繰り返している。

「ふっ、、ぅううあっ!!!?ぁっ゛!あん!」

思わず足を閉じて、凌牙は必死で股間を押さえていた。
しかしテープをとろうにも、振動があまりに絶妙で指が絡まってしまう。
前と後ろが別々に蠢くその動きは、まるで複数の相手から愛撫を受けているようだ。いっぺんに与えられる強烈な刺激が、凌牙を何度も喘がせる。

「とって、……は、はずして、はずしてくれ、ああっ、IV!!
……ひっぁああああああ」

何度もシーツの上で跳ねる体を、IVは押さえつけた。
筋肉が収縮し、快感の兆候を示している。IVはまだ尻穴から半分顔を出しているユニットを、人差し指で押し込んだ。

「ッッ!!!!!」

声にならない悲鳴を上げながら、凌牙は首を何度も振る。
まさにごくりと嚥下するような動きで、凌牙の尻穴はユニットを飲み込んだ。狭い壁を突起がごりごりと擦っていくのを感じ、凌牙は高い声をずっと上げっぱなしだ。
彼の体がどれほど悦んでいるかが分かる。
奥へ到達したユニットは、その本体から大量のローションをびゅるびゅると迸らせ、また震えだす。

「んぐぅっふ!!ふぁ、っ、あ、っ、ア、っ」

思いがけず玩具からローションを中出しされ、凌牙はいよいよ股間を押さえながら号泣していた。
尻穴に放たれたローションが、入り口まで溢れかえっている。凌牙はもう、ぶちゅぶちゅと洪水のように漏らすしかなかった。
その洪水の波と共に再び押し出されたユニットを、IVが指で押しとどめる。
半分飛び出たユニットが立てる振動音と、凌牙の喘ぎ。
ベッドに出来た水溜りに、IVは舌なめずりしてしまう。

「凌牙、かわいい」
「ぅあっ、ぁっ、ふ、IV、っ!IV……!!!」

IVが凌牙の目の前に差し出したのは、細長いリモコンだった。
ほとんど善がり狂っている凌牙の瞳に映ったリモコンが何を暗示しているのか、必死に考えるのだがもう思考が追いつかない。ただIVの名前を叫び続けながら、凌牙は身悶える。
次はどうなってしまうのか、もう怖くて気持ちよくて何も考えられない。
やめて、やめないで、そのどちらの気持ちも真実だった。

「ぁ――――……っ!!!」

凌牙のすぐ目の前で、IVの長い指がリモコンの振動レベルが引き上げた。
凌牙の体がユニット本体ではなくIVの指に委ねられているようで、両者はお互いに興奮している。
IVはリモコンを横にして口でくわえ、凌牙の手をとった。
必死に前を隠そうとしている凌牙の指一本一本をやさしく剥がしていって、頭上で押さえつける。
二箇所も玩具で攻め立てられながら、何度も腰を波打たせる凌牙を見下ろして、IVはいよいよ愛おしそうに頬を緩ませるのだ。

「IV……っ、ぁあああああ……っ」

膝を擦り合わせるかと思えば、勝手に揺れてしまう腰。凌牙は息を弾ませながら身を捩っている。たいせつなところを手で隠したいのに隠せない。たくさん声が漏れ出てしまっているのに、そのほとんどが言葉にもならず、意味を成しているのは「IV」という名前だけだった。
顔を紅潮させながら、IVは微笑みかけた。その瞬間、再び凌牙が大きく跳ねる。

「ッッ〜〜〜〜〜〜!!!!!」

IVが口にくわえてあるリモコンを、舌で触っているのだ。
振動レベル最大、震幅の種類も変えてやる。凌牙の反応を探りながら、一番良い設定を探っているのだ。
凌牙が正気すら手放しそうなところへ、IVはさらに攻め立てる。口移しでリモコンを凌牙へ渡すと、その両端をテープで固定した。

「んぐっっ……」

すっかり潤んだ目で凌牙はIVを睨みつける。猿轡のようにされたリモコンは、操作ボタンを表にしてある。
剥がそうとやっきになる凌牙の手を、IVは再び押さえつけた。

「リモコン、持っていてくださいね」

足の間に腰を割りこませ、既にユニットをくわえている凌牙の尻穴を暴くと、IVはいよいよ腰を進める。

「!!!!!」

凌牙は猿轡のせいでくぐもった声しか出せない。
それが抗議の言葉を封じている。

「ン!!んんぐっ……!!!」

ただでさえユニットをくわえている凌牙の尻に、IVが割り込もうというのだ。
ひぐひぐとしゃくりあげて泣く凌牙の腰を、IVは慎重に引き寄せた。

(無理だ、そんな入れられたらッッ)

凌牙の瞳が訴えている。
IVはその凌牙の瞳を数センチほどの近さでよくよく覗き込んだ。
期待と恐れ。どちらが大きいのかよくよく確かめる。
焦らすように凌牙の尻穴を分身でつつき回せば、凌牙の瞳はぶわりと期待の色に染まった。その隙を逃さず、ずんと前へ押し込む。

「んん―――っ!!!……!!」

同時に凌牙のくわえたリモコンを、IVの舌がいじくりまわす。
振動のバリエーションをさまざまに変えてやると、凌牙はつま先まで震えていた。

「ふっ、うぅふ!んん……!!」

キスできそうでできないもどかしさに、凌牙は夢中だった。
こんなすぐ近くにIVの舌が伸びてきている。リモコンを触って凌牙の体を好き放題にしているかと思うと、凌牙はそれだけで感じてしまった。

「っふっ、ぁ、ふ、くぅ、うううっ!!」

ぎちぎちとIVの下半身が迫ってきている。
それは奥で震えている玩具まで到達した。

「い゛っ……は……ぁ!」

凌牙の最奥で震える玩具。IVは先端でそこへ触れた。
突起がIVの亀頭を震わせる。

「ぁっ……!!」

IVも思わず声を漏らした。肩がびくんと揺れてしまう。
ただでさえ狭い凌牙の尻穴はびりびりと震え、いつもより縮こまっている。
このままではこちらまで激しく喘いでしまいそうだった。
慌てて凌牙のくわえているリモコンに舌を伸ばす。
リモコンはすっかり二人分の唾液にまみれていた。

「んんっ!!ふ、……うぅ、ん、んっ」

凌牙はもうほとんど気を失いかけているらしい、空を見つめながら痙攣している。
IVは舌先を使って最後のボタンを押してやった。

「っっはっ、あ、あふッ……ン゛っ…―――!!!!!」

凌牙を苛むユニットの突起が、うねうねと動き出す。
振動とあいまって、それはもう生き物のように凌牙の中で暴れだした。
特に凌牙の中のユニットはひねるような回転運動とランダム振動で、凶器のごとく凌牙を陵辱し始める。

「ンんッ!!んんんっ!!」

よだれを垂らしながら目を白黒させる凌牙の腰は、もうIVの腕に捕らえられていた。
激しい出し入れが始まる。

「!!!!!はっっっ……ぁっっ……ンんっ〜〜〜!!!!」
「はぁッ、はッ、……!!!」

もはや声らしい声も出せなかった。
凌牙が望んだとおり激しく、IVは細い体を貫く。
シーツに縫いつけた手首を離しても、もう凌牙は抵抗できなかった。
それほど激しく突き上げられ、揺さぶられ、脳まで振り回されていたのである。

「んぁ……!!!!!」

IVの亀頭が、尻の奥のユニットをさらに奥へ突き上げる。
その衝撃は熱く甘い。凌牙の内臓全てに振動が伝わって、意志とは無関係に体が服従してしまう。

「ぃ……はぁっ、、あ、ふ、!!!」

しきりに凌牙が何か伝えようとしていた。
IV、待ってくれ。しかしその合図は間に合わない。

「ひぅうう゛うッ!!」

凌牙の股間から、突然の潮吹きが始まってしまった。
IVの腰に浴びせかけられたシャワーは、なかなか止まらない。
それと同時に絶頂が訪れてしまったらしく、凌牙は一層高い声を上げながら尻を浮かしたのだった。
その間にも大量の潮がIVによって揺さぶられて飛び散る。
ベッドの上へぶちまけられた潮は床へも届いた。

「あはっ、ぁ、ふっ!!」

休む間もなくユニットの振動は続いている。
IVは凌牙の膝裏に腕を通し、ベッドへ掌をついた。
凌牙の足の間では、もう一つのユニットがじゅぶじゅぶと水音を立てながら彼のコンプレックスを刺激している。
ようやく潮吹きが終わり、凌牙はがくりと放心してしまった。しかし止まらない玩具のせいで追い討ちをかけられ、まだ体をびくびくと震わせている。
昼間の知的なまなざしは欠片も残っていなかった。
しかしあどけなさの残るその麗しい顔立ちがとろける様子は、良い眺めだった。

「気持ち良さそうですね凌牙……!この玩具、相性良いみたいで良かった」
「っぅ……ん……」
「僕も、すごく気持ち良いですよ」

IVが再び腰を打ち付ける。
はふはふと漏れる熱い息と、ベッドが軋む音が大きく響く。しかしそれを打ち消すほどの音で、腰と腰がぶつかっていた。

「んんっ、はっ、はっあ!!」
「……くっぅ〜……!凌牙っ、凌牙……!」
「はぁっあ……ふっ!!う!」

びしょぬれになった冷たいシーツの上で、凌牙はIVの男根とユニットの感覚を何度も何度も刻み付けられる。
涙で歪む視界には、IVしか映っていなかった。
切なく眉を寄せながら、凌牙を突き上げている。筋肉のしなりは、自分がどれほど激しく犯されているのかを物語っていた。
しかし金茶の前髪の向こう、真っ直ぐな瞳が優しい色で凌牙の目を見つめている。
凌牙の心拍数、呼吸、すべて読み取って、負担のないよう見守ってくれていた。

「ぁっぁ……―――!!!!!!」

何度目かの絶頂で、凌牙の中にようやくIVの精液が流れ込む。
狭い尻穴はユニットのおかげでさらに敏感になっていた。
IVの分身が、根元をぎゅっと緊張させて精子を放つ瞬間まで感じられ、ぴとりぴとりと濃い粘液が触れた箇所まで、体が拾い上げてしまう。
互いに腰がくだけ、強く抱き合う。
IV、と名前を呼びながら、凌牙は失神していた。



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