レイニーローズ


※微エロ/漂白剤ぶっかけたW兄様とのピロートーク的な何か


 しとしとと降る雨の音が耳に届き、凌牙は目を覚ました。といっても先ほどまで見ていた夢との区別があまり付かない状況で、目を覚ますのも眠っているのも然して変わらない。
「…………」
 ちらりと隣で眠るWの顔を盗み見る。行儀良く仰向けのまま胸を規則正しく上下させる彼の表情は、情事の最中に見せるものとは違って穏やかだ。
 Wと凌牙は先ほどまで体を繋げていた。凌牙が見ていたのは、その夢だった。先ほどまでの情事の夢に、現実との分別が出来ない。自分が疲れ果てて後処理も御座なりに眠りに落ちた現実は夢で、本当は未だにWと体を弄りあっている気がする。
「…………」
 Wに抱き付くようにして凌牙が腕を回し、身を寄せて浅黒い肌に唇で触れる。回した手がWの頬の溝――十字の傷を掠めた。途端、妹の姿を思い出し、背徳感に襲われてきつく目を瞑る。
「……怖い夢でも見たか?」
 ふわり、と石鹸の香り――自分が眠りについた後、後処理ついでに彼もシャワーを浴びたのだろう――が鼻孔を掠めたのに気がつくと、眠っているはずのWの穏やかな声と手がいつの間にか凌牙の耳と髪を撫でていた。
 漸く夢との決定的な違いを見つけ、凌牙はこれが現実であると認識する。夢の中のWからは、いつもの香水の匂いがしていた。シャワーを浴びたのであればするはずのない、深紅を思わせる薔薇の香りが。
「……起きてたのか」
「寝たり起きたりしてたんだけど、お前が可愛いことしてくるから目ぇ覚めた」
「っ……そう、かよ」
 凌牙は羞恥にカァッと頬を赤く染め、それを隠すためWに背を向けた。そうして何故あんなことをしたのかとぐるぐる考える。体を繋げ合ったばかりだというのにあの肌に触れたいと思ったのは、きっと夢の中でまで彼に抱かれていたからだ。
「雨か……暫くは止みそうにないな」
 そう呟いたWは背を向けた凌牙を抱き締めて鼻先で髪を掻き分けると、普段は隠れている凌牙の耳の裏に強くキスをして跡を残す。
「っ……」
 滅多なことがない限りは絶対に見つけることが出来ないが、確かに残る所有印は、普段プラトニックを貫くWが隠し持っている独占欲の証だ。
「凌牙」
 名前を呼ばれてそちらに向くよう体を捩ると、唇を重ねられる。浅いものから深くなっていく口付けに段々と息が上がり、凌牙は再びWへ抱き付くよう腕を回した。甘い心地よさに目を閉じる。
 ふわり、と深紅を思わせる薔薇の香りが凌牙を掠めていった。




「なんだ……まだ寝てんのか」
 しとしとと降る雨の音は、夜明け頃から続いている。寝汗を流そうとシャワーを浴びて戻ってきたWは、未だベッドの中で丸くなる菖蒲色の髪を撫でると、小さく微笑みを浮かべる穏やかな彼の寝顔に「まあ良いか」と色白の肌をした頬にキスを贈った。
「雨だしな」


20120621



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