その代償


※性描写アリ!!


 腹の中に黒いものがある。そいつが言うのだ。

――忘れるな。



「んん……!」
 細くも太くもない、だが確かに男のものである指が凌牙の体を這っていく。溢れかけた喘ぎを噛み殺して、彼は感じる快楽に耐えた。
 だが快感をやり過ごし、切れた息を整えようとして新たにやって来た身を裂くような痛みに、殺せない矯声を部屋に響かせる。

 Wが凌牙に対して自分から行為を誘ってくるのは非常に珍しいことだ。出会った当初から『セックスなんて穴使うオナニーだろ?お前とそんなことしたくねぇし、性欲処理なんざそこら辺の女で十分だ』と言い続けてきたWになんの心境の変化があったのかは、凌牙にも分からない。
 だが全て終わり、元通り穏やかな生活を取り戻すと、あの頃のWとは少しだけ何かが変わったようだった。

 揺さぶられる凌牙の喘ぎが、暫くすると切羽詰まったようになる。Wは凌牙の限界が近いのを悟ると、今より更に深い部分を突いて凌牙を攻め立てた。断続的な喘ぎが上がる。
「――あああっ!」
「っ……」
 一際高い声を上げた凌牙は白濁で腹を汚した。Wも凌牙の中から抜き去った自身の欲をコンドームの中に吐き出す。
 肩で息をしながら余韻に浸る凌牙に、Wはコンドームの口を縛るとゴミ箱に投げ捨てると、まだ腹を汚した白濁の処理も終えない凌牙にすがり付くよう、彼を抱きしめた。
「おい……汚れる」
「良い」
 行為の最中、一度も言葉を発しなかったWが凌牙にすがり付き、肩口に顔を埋める。小さく震えていることに気がついた凌牙は、何も言えなくなってしまう。
「……好きだ」
 絞り出すように紡がれたWの言葉に、凌牙が彼の背に手を回して抱き締めかえした。
「好きだ……凌牙、お前が好きだ」
「――ああ」
「好きだ……愛している」
 とうとう泣き出したらしいWの背を、凌牙が撫でる。「俺もだ」と紡がれかけた凌牙の言葉をWがキスをすることで奪う。





 腹の中に黒いものがある。そいつが言うのだ。――愛されてはいけない。


忘れるな。


お前は凌牙を傷付けたのだ。




20120604

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昴様から頂きました。リクエスト「W凌ほんのりエロ」……ほんのりではなくがっつりになってしまった気がしますが。
弱ったWを目指して書かせていただきました。暗くなってしまって申し訳ありません(汗)

昴様、リクエストありがとうございました!





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