01 赤司と影 受験を間近に控えた図書室は普通ならば文字を書く音が参考書を捲る音が響いていてもおかしくない。 けれど、帝光中学の第三図書室だけは例外であった。 図書委員はおろか、司書さえも不在。 そんな図書室に人影は二つあった。 一人は赤い髪の青年で、彼は窓に向かって備え付けられたカウンター席の机の部分に座っていた。 もう一人は淡い水色の髪の青年というよりは少年で、座っている赤い青年の広げられた足の間に立ち、背を預ける様にしている。 「決まったのか?」 静か声音が図書室に響く。 声を出したのは赤い青年だ。 「えぇ。誠凜を受けようと思います」 「そうか」 水色の少年の幾分か高い声音が答える。 赤い青年は自分の足の間にいる少年の腹に腕を回し抱きしめ、そのまま少年の肩に自身の額を押し当てるように頭を埋めた。 「皆バラバラになりますね」 「あぁ。オレは洛山、紫原は陽泉、黄瀬は海常、緑間は秀徳、青峰と桃井は桐皇」 「赤司くんと僕が望んだ展開です。僕が誠凜を選んだ事、皆には内緒にしておいてくださいね」 「分かってるさ」 ギュッと赤司と呼ばれた赤い青年の腕に力が入る。 少年は嫌がるでもなく、ただそれを受け入れた。 「誠凜には…鉄心が居たな」 「えぇ。悪童に壊されかけましたけど、まだ彼はコートに戻ってくるでしょう」 「奴が新しい光候補か?」 「いえ、わかりません」 少年のその答えに赤司は顔を上げる。 「鉄心・木吉さんが居るとはいえ、新設で決勝リーグまで歩を進めたチームに興味が出ました。それに」 クスリと笑う声に赤司もまた口端が上がる。 「退屈凌ぎには調度いいでしょう?」 「そうだな。だが、あいつらは諦めが悪い。すぐに居場所はバレる」 「その時はその時です。僕が完全なる影に戻るならば、それは青峰くんの元でない事は確かですけど」 「影に徹するか、光になるか」 回された赤司の腕を少年が解き、少年と赤司が対面する。 少年の無機質な水色の瞳が赤司を真っ直ぐに見つめていた。 「仮面を取るかは追い追い。そろそろ時間ですよ、赤司くん」 「あぁ」 にこりとも笑わず少年は無表情で、赤司に時間を告げる。 赤司は座っていたカウンターから飛び降り、図書室を後にする。 「少しだけ…楽しみですね」 赤司が去った図書室で、少年の呟きが落ちた。 ここから運命の輪が廻り始めたのだと、少年と赤司以外、誰も知らない。 光陰の選択(始まりの鐘は壊された後だ)write by 99/2012/05/03 連載開始です。 スレ黒子と分類すべきか。 とりあえず、最強設定に分類で。 赤司と木吉と紫原が好き過ぎた結果です。 詰め込み過ぎたかなぁと思いますが、いきあたりばったりで頑張ります。 ← → |