零れ落ちたるは想いか意地か

陽泉戦終了後捏造
紫原×黒子



頭からタオルを被り大きな身体を最低限まで小さくするように膝を抱えた姿は、まるで小さな子供のようだった。
その肩が、背中が、震えている。


「紫原くん」


声をかけても、いつもの様に声が返ってくることはなかった。
それどころか、視線が黒子に向くことさえない。
少しだけ苦笑を零し、黒子は紫原の隣に同じように膝を抱えて座る。


「少し…、少しだけ聞いてください」


やはり答えは返ってこない。


「淋しかった。苦しかった。君達が勝つ度に、そう思うようになりました。でも、それ以上に、怖かったんです」


少しだけ、隣合わせの肩がピクリと跳ねた。


「パスを必要としなくなって、僕自身さえ必要なくなっていくような気がして、ただでさえ僕は影が薄いから、君達は忘れてしまうんじゃないだろうかって、怖かった」


黒子がキセキにその想いを吐き出したのは、初めてだった。


「本当は、離れたくなんかなかった」


涙声の告白に、紫原は思わず顔を上げた。
隠したかった自身の涙も忘れ、視線を向けた先、相も変わらず無機質な水色は薄い水膜に覆われながらも、自分を映していて、息を飲む。


「黒ちん」

「はい」

「俺もヤだったし」

「はい」


黒子が自分達キセキから離れていった事なんて認めたくなかった。
推薦で高校に入って、好きでもないバスケを続けたのは、黒子がバスケを好きだったから。
もしかしたら、続けてさえ居れば、いつか黒子に再会出来ると思いたかったから。


「俺、負けちった」

「はい」

「ちょっとだけ、ホントにちょっとだけ」


黒子の方を向いていた顔はまた膝に埋められ、長い紫の髪と真っ白なタオルが紫原の顔を隠した。


「ほんのちょっと、楽しかったよ…」


小さな、本当に小さな声は確かに黒子の耳に届いていた。
黒子は破顔し、中学の頃から自分の体重をものともしない紫原に凭れかかった。


「そうですか、良かったです」

「うん。ねー、黒ちん」

「何ですか?」

「大好きだよ」

「知ってます。それに、僕も好きですよ」

「俺だって知ってるし」



零れ落ちたるは想いか意地か
(まだもう少し傍に居たいから携帯の着信は見て見ぬフリ)
write by 99/2012/06/27




本誌でむっくん号泣と聞いて書きたくなったので書きました。
だいぶ書きたかったのとズレがあったりしないでもないですが、まぁいっか。
自然消滅してるってお互い認めたくないから、結局元サヤ的な紫黒でした←そんな話だったか?





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