あの日の続きからはじめよう

大学生設定で木吉誕
木吉×黒子(+黄瀬)



携帯に表示された日付を見て、思わず声を上げた。
その声に何人かが振り返ったけれど、気にしなかった。
こんな事はよくある事だから、向こうだって、気にしていない。
それよりも、僕にとっては今日という日の方が大事だった。
あの人の誕生日。
バスケと読書で繰り返す日々に彩りを加えたあの人の、誕生日。


「あれ?黒子っちー?」

「黄瀬くん、来てたんですか?」

「仕事の方が落ち着いたんでちょっと単位稼ぎッス。黒子っちは?」

「先々週に休講になった講義の補講です」

「日曜にわざわざお疲れ様ッス」


隣に並んで歩き出せば、黄瀬くんに気付いた女の子達の視線が刺さる。
少し恨みがましくなって、黄瀬くんを見上げる。
その首の角度があの頃の僕があの人を見上げる角度に思えて、すぐに視線を戻す。


「黒子っち?」

「いえ…」


怪訝そうな黄瀬くんの顔がこちらを見ていた。
本当に、未練がましい。
別れたのはあの人が高校を卒業する少し前だった。
丸三年。
僕はもう大学2年だ。
それなのに、結局僕の心は進まないままだ。


「あ…」


黄瀬くんが何かに気付いたように声を上げた。
それにつられて黄瀬くんを再び見上げれば、気持ちが悪い程の笑顔がそこにあった。
いや、これは僕の主観であって、黄瀬くんのファンや女の子には黄色い悲鳴を上げたくなる笑顔なんだろう。
現に、女の子達の悲鳴が聞こえた。


「ねぇ黒子っち」

「何ですか?」

「今度こそ、幸せになってね」

「はい?」


黄瀬くんの手によって僕はくるりと方向転換させられて、そして、そのまま結構な強さで背を押された。
そのまま僕はバランスを崩して、誰かにぶつかる。


「っすみません」


黄瀬くんの所為だ。
そう思いながら、ぶつかってしまった上に、支えてくれた人に謝った。
けれど、支えてくれた手は離れない。


「あの、離してもらえませんか…?」


離してもらわないと僕は顔を上げられないし、相手を確認することさえ出来ない。
そう思って、そう伝えた。


「嫌だ」

「……え?」


僕の頭上から降ってきた声に耳を疑った。
とうとう幻聴が聞こえたのかとさえ思う。


「黒子、今更だけどさ」


幻聴だ。
そう言い聞かせる。
僕の脳が都合がいいように聞かせているだけ。
支えてくれていた大きな手が移動して、肩に触れた。


「やっぱりお前じゃなきゃダメだわ」


顔を上げれば、苦笑に似た笑顔で笑う木吉先輩がそこにいた。


「木、吉先輩?」

「おう」

「本当に?」

「あぁ。なあ、黒子」

「はい」

「好きだ。もう一回、俺にチャンスをくれないか?」


あぁもう、今更だと言えれば良かった。
でも、僕は、今もまだ、


「僕も、木吉先輩が好きです」





あの日の続きからはじめようか
「あの、お誕生日おめでとうございます」「ありがとな」「プレゼントないんで後日用意しますね」「プレゼントならもう貰ったよ、黒子を」
write by 99/2012/06/10




ギリギリ滑り込みでセーフですよね?
忙しくて書けなかったから何とか間に合って良かったです、はい。
木吉お誕生日おめでとー!
黄瀬と黒子は同じ大学。
黄瀬はきっと黒子のことが好きだったと思います。
ちなみにバスケはもうやってないという設定だったり、あれ?これバスケ漫画の二次…。





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