04

海常黒子



右手でボールを回し、左手で携帯を耳に当てる。
面倒な事は全て他人に押しやりたいが、今日ばかりはそうもいかない。
黄瀬くんの宣戦布告の所為で誠凜バスケ部はやる気だ。


「僕です」


電話口で今更詐欺は流行らないと言われたが、オールスルーする。


「黄瀬くんにバレました。多分、黄瀬くんの事ですから、他にも流してそうですね。黄瀬くんが桃井さんと組んでなければ重々ですが、あの様子だと組んでても可笑しくはない、といったところでしょうか」


そう電話口に告げれば、今後の身の振り方を問われる。
それについては、予測済みだ。
隠す事でもないので、素直にクスリと笑った。


「負けたら負けたで構いません。ただ、こちらが負けてしまえば黄瀬くんが諦めそうにないので、勝つ方がメリットはあります。え?木吉さんはまだ入院中ですよ。あぁそれについては解決済みってところでしょう。まだキセキには敵いませんが、キセキ候補が一人。いえ、単なる助力のみです。僕が光にする可能性ですか?正直ナイですね。あれは、青峰くんと同類です」


向こうが急に声を上げて笑い出した。
そんなに面白いか、畜生。


「えぇそうですよ、僕の大嫌いな、青峰くんです」


言い切っても尚、電話口では笑いを堪えているのがよく分かる。
そりゃあそうでしょうとも。
キセキ、いや、この場合、青峰くんが嫌でキセキとは別の学校を選んだにも関わらず、結局嫌なものが近くにいるのだから。
大誤算もいいところだ。
角を曲がれば、誠凜のメンバーが視界に入った。
ボールを手に持ち直す。


「これから試合なので、終わり次第、メールで勝敗をお知らせします。えぇはい、気を付けます。では、また、赤司くん」


電話を切り、携帯をエナメルバックの外ポケットに突っ込んだ。
黄瀬くんに迎えられ(出迎えの黄瀬くんがやたらとウザかったので、その辺りは割愛させていただいて)、入った体育館で目にしたのは、試合準備をしているハーフコートだった。
いくら強豪校といえ、これはない。
一度、練習試合を了承したのだから、相手がどんな弱小チームでもオールコートでするのが礼儀だろう。
メンバーに二軍を使うならまだしも、ハーフコートは失礼だ。
パスミスのフリをして力一杯海常の監督の顔面にボールを投げ付けてやりたい。
なんて、物騒な事を思いながら、告げられた試合開始直後、僕に気付いてないのだろう海常の4番のボールをスティールし、現時点で誠凜のエースである火神くんにパスした。
僕からのパスに驚いた様子を見せながらも、彼はしっかりとダンクを決めた。
手にゴールを持っていたのは僕の見間違いであろうか。
いや、海常の監督の顔が面白かったのでいい。


「これでオールコートですか」


試合自体は結局火神くんと黄瀬くんがゴールを入れては入れられの一騎打ち状態で、僕にしてみれば面白みも何もなかった。
気を抜けば、溜息が零れそうだ。


「提案なのですが」


火神くんに少し屈んでもらい耳打ちする。
面倒臭いがこれまでの均衡なら、僕が真面目にやればこれは崩れる。
狙うのは最後の数秒。
黄瀬くんを負かすのも悪くはない。


『テツヤの勝ち、かな』


電話を切る直前の赤司くんの言葉が甦る。
ここまで予測していたのだとしたら、本当に大した人だ。


「火神くんお願いします」


ロングシュートを狙う要領でゴールに向かってボールを投げた。
狙いは一つ、ブザービーター。
鳴り響いた試合終了の合図と同時、アリウープした火神くんのダンクが決まった。




試合中の傍観者
(やっぱり性に合わない)
write by 99/2012/05/14





黒子、ちゃんと試合に集中しようぜって書いてて思った。
とりあえず、怪我はなかった方向で話を進めてみました。
だって、鼠猫の黒子は火神の影じゃないので、怪我してまで試合には出ない。
それこそ寝たふりでベンチから試合を観察する←
次は…ステーキハウスの話ですが、鼠猫の黒子は社交性に欠けるのでどうなることやら。





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