雲をワシ掴み


不意に覚醒する意識。
嗅覚が嗅ぎとったのは、ツンッと鼻につく揮発性のアルコール臭。
暗い部屋。
電気が点いてないからか。


「〜〜〜〜っ」


身体中が痛いのは気のせいじゃない。
絶対に倒れるもんかって、意地は儚くも脆くも崩れ去ったみたいだ。
そういえば、倒れる前に見た影は…


「恭弥さん…」

「なに?」


幻聴…?
声がした方を見たら、不機嫌を如実に現したような顔をした恭弥さんが闇に紛れるように立ってた。


「怒ってますか……?」


コツコツを革靴を鳴らして、恭弥さんがオレのベッドの横に立った。
恭弥さんが足音を立てるのは珍しい。
それほど、怒っているということなのだろう。


「マファアのボスが出血多量なんて間抜けな死に方がしたいの?」

「滅相もございません!」


どうやら、オレはボンゴレ10代目守護者最強の男を怒らしてしまったようです。


「死にたいなら、殺してあげるから、そこに直ってよ」


思わず、痛む身体でベッドの上に正座。
力関係はオレがボスになった今も変わらない。
リボーンと恭弥さんには逆らえない。


「なに?やっぱり死にたいの?」


そんなことはない、絶対に。
そう訴えたくて、殺る気満々でトンファーを構える恭弥さんを見上げた。
そして、気付く。
暗闇で見えにくいけれど、恭弥さんの目が少し充血してることに。
というか…、


「なんて顔してるんですか」


恭弥さんにはあるまじき顔。
情けないと喩えられるだろう表情。


「君が、」


あぁオレは誰よりも孤独を好んでいた人を変えてしまったんだ。


「恭弥さん、オレ生きてます」


目の前の恭弥さんに両手を伸ばす。


「つなよし」

「はい」


手が恭弥さんの首に絡む。
オレの背に回った恭弥さんの両手がギュッとオレを抱き締めた。


「つなよし」

「なんですか、恭弥さん」

「つなよし」

「はい」

「つなよし」

「ここにいます」


存在を確かめるように紡がれるオレの名前。
呼ばれる度にキツくなる腕の力。


「つなよし」


自惚れてしまいますよ、恭弥さん。
あなたがオレなしでは生きていけないって。


「大好きです、恭弥さん」

「うん」




痛む身体は無視して

今は幸せを噛み締める

だって

自由を好む


雲をワシ掴み
written by SHIKI,2007/09/06
お題⇒アコオール≫オーエス




1827と言い張りたいんですが、2718だと言われそう(苦笑)
18様受が苦手なんですよね、読むの。
書くのは平気なんですが。





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