甘い琥珀は希望的観測でしかなく





「ひばりさん」


それが酷く甘い声音だと思うのは、本当に僕らしくない。
雲雀恭弥ともあろう僕は何を想い、目の前の草食動物を咬み殺そうとしないんだろう。


「ひばり、さん」


喉に当てられた僕のトンファーの冷たい感触に沢田の顔がほんの少し青ざめ、ビクリと肩が揺れた。
怖いなら怖いと言えばいいのに、沢田は何も言わずに、恐怖が過ぎ去るのを待っている。
これをずる賢いというのだろうか。
違う。
沢田はわかってない。
ただ、恐怖に目を瞑っているだけ。
あわよくば、痛い思いをしなくてすむかもしれない、くらいには思っているかもしれないけれど、沢田綱吉というこの草食動物はそこまでずる賢く頭の回転がいいとは御世辞には言い難い少年なんだから。


「ねぇ」


恐る恐る開かれて露わになった琥珀に、僕が映る。
琥珀は涙に濡れて、艶やかに光る。
衝動的に、僕は零れ落ちそうな琥珀を舐めあげた。
途端、瞳は見開かれ、沢田は驚きをその顔に表した。
同時に目尻に今にも流れそうな涙が溜まる。


「ひっひっひっ」


妙な笑い声にも聞こえるそれは、僕の名前だろうか。
トンファーから自分の手に、支えるモノを変える。
指で目尻に溜まった涙を掬い、口に含んだ。


「甘くない」


期待していた甘さなど皆無で、口の中にはしょっぱさが広がった。


「ひばりさん、」


目を潤ませて、そんな声で僕を呼ばないでよ。
僕は、沢田を傷つける方法は知っていても、愛し方なんて知らないんだから。


「名前、もっと呼んでよ」

「ひばりさん」

「もっと」

「ひばりさん」


好き、なんだろう。
僕は、君が。
僕の名前を呼ぶ声が酷く甘い声音に聞こえるのも、心地良く聞こえるのも、惚れた欲目。


「沢田、好きだよ」





傷つける術しかしらない肉食獣は

恐怖に震える草食動物に恋をした

願いは

ただ傷つけたくないから

近づかないで。



甘い琥珀は希望的観測でしかなく
written by SHIKI,2007/11/09




眼球は性感体だそうです。
普通は舐めないとこですよねー。
ゾワッてなるらしい。
27は18様の名前しか言ってない(笑)
結局、18様の自覚話なんです。
18様の努力次第で27は転がるよ、うん。



+++


これ、18様のキャラソン出る前に書いたんだけど、キャラソンの歌詞と最後がリンクして大爆笑した記憶がある。(2012某日)




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