偽りの傍観者である共犯者はかく語る。


※「君欠乏症につき」の続編です。単品でもお読みいただけますが、そちらを事前に読んでいただいた方が内容を理解出来るかと思います。





とても幼いのに、誰よりも大人だった子供。
写真等の記録として残っているのは、綱吉の5歳の誕生日からなのだから、その頃には一緒だったのは間違いないだろう。
確実に物心つく頃には一緒だったし、それは綱吉の母である奈々さんや自身の母も僕らの成長を見てきたのだ。
まぁはっきりと僕ら2人はいつから一緒だったのかなんて覚えていないのだが。


「あ」


バサリと書類が風に舞った。
ペーパーウエートでも置いておけばよかった。
後悔したところで、時が戻るわけでもない。
ふぅと息を吐いて、立ち上がった。
床に落ちた書類を机に戻して、今度は飛ばないように何年か前の綱吉からのプレゼントだったそれを置いた。
小学生だった僕へのプレゼントがペーパーウエートだったのには些か疑問を感じないでもないけど、当時から僕の周りには本や書類のような大事としなければならない紙が溢れかえっていたことが原因だろう。


「そういえば、雲雀さんって呼ぶようになったのは小学校を卒業した頃だっけ」


ぽつりと呟いたのは、あの子のこと。
長年一緒だった僕への呼び名を変えたのは、何故だったか。
その時にはわからなかったが、今ならなんとなくわからないでもない。
綱吉は巻き込みたくなかったんだろう、ボンゴレとかいうマフィアの跡目争いに。


「馬鹿だからかな」


そう呟いて、ソファに寝転ぶ。
大人3人掛け用として用意されたソファはそれなりに大きいがゆったり座ろうとすると2人が限界なのではと思わせる大きさだ。
肘掛けに頭を預け、逆の肘掛けに足を組んでかけて、寝転ぶ。
結局のところ、優し過ぎるのだ、彼は。
甘いと表現することも、間違いではない。
不本意ながらに関わることになった野球馬鹿や爆弾魔に対しても、既に綱吉は切り捨てるこてなんて出来やしないだろう。


『恭ちゃん━━━』


そうだ、綱吉はそう呼んでた。
奈々さんでさえ、僕を恭弥くんと呼んでいたのに、綱吉は僕に恐れることもなく、そう呼び続けた。
呼ばれる度にこの子だけは絶対に守ろうと誓ったのを思い出す。


「雲雀さーん?」


疑問系に語尾の上がった声は、唯一この応接室へと無断で入ることを許された人物のものだった。
あえて、反応を示すわけでもなく、近寄ってくる綱吉の気配にどこか安堵にも似た感情が生まれる。


「寝てるんですか?」


僕の顔を覗き込むようにソファの脇に立った綱吉の腕を取って、軽く引いた。


「わぁっ」


案の定バランスを崩した綱吉は、寝転がった僕の上に倒れ込んだ。


「起きてるよ」

「でしょうね」


倒れ込んだ綱吉を抱き締めて笑うと、綱吉は呆れたように呟いて僕の胸元に顔を埋める。
それに応えるように、綱吉を抱き締める腕の力を少しだけ強めた。


「で、今日はどうしたの?」


ふわふわとした髪を撫でて、子供に問い掛けるように声を和らげて訊く。
綱吉がガバリと顔を上げた。


「雲雀さんが言ったんですよ!充電切れる前に来いって」


ギュウギュウと僕に抱き付いて、拗ねたような口調で話す綱吉に苦笑を浮かべる。
そのまま、少しだけ上体を起こして、綱吉の頬に口付けた。


「少し寝よう」

「うん…」


久しぶりの体温に安心してくれてるのか、綱吉はすぐに寝息を立て始めた。
僕のシャツは綱吉の手にキュッと握られている。
張り詰めていたものが切れたかのように眠る綱吉は幼い顔つきをしていた。
髪を梳くように触れてやれば、綱吉は擦り寄るようにすりすりと身動いだ。


「………恭ちゃ、ん」


ぽつり呟かれた寝言に笑みが零れた。
草壁が報告に来る時間まではまだ幾分かある。
僕は頭の片隅でそう思うと、綱吉を抱き締めて目を閉じた。





半身といってもいいほどに

一緒に居過ぎた子供を

もう手放せそうにはない



偽りの傍観者である共犯者はかく語る。
written by SHIKI,2007/10/16




闘いもせず、ただダラダラとしてる18スレ27って…。
だって、このシリーズの18様が綱吉を大好き過ぎるんだもの。
恭ちゃんか恭兄ちゃんか悩んだ。
雲雀母と奈々さんが親友だと楽しい。
書く度に設定追加してるからまだどうなるかわかりませんがね(苦笑)




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