月光のスポットライト





「あー」


低くなく、尚且つ一歩間違えれば少女のような声。
もう30になろうというのに、ツナの声は少年のそれを保っていた。
ただたんに、ツナに変声期があっても、それほど変わることがなかっただけなのだが。
低い声を出そうとすると出るらしいから、いざという時に困ることはない。
叫ぶわけでもなく、ただ意味もなく発されたその声に、俺は目を細めて、ツナを見た。
10月13日。
ツナの誕生日の一日前。
そして、俺の誕生日。
とはいえ、明日は会談と銘打ったディーノ主催のツナの誕生日パーティーがある。
一緒に、2人きりで居れるのは、今だけだった。
休みになると、なんとはなしに俺を探し、傍にあろうとするツナは、いい生徒と言っていいんだろうか。
慕っているのはわかるが、未だに部下の前でしか役に立たないディーノなんか目じゃないくらいに、成長した。


『ちゃんと寝てる?』

『休憩くらいしなきゃ』


いつもはボスらしくない言い方をして、ココに来ては俺に構う。
迷惑しかかけなかったツナは、いつの間にか、そんなところも成長していた。
考えを巡らせる間に、背中に何か温かいモノが触れた。
こんな温度のあるものは、この部屋には限られていて、俺は迷わずにその名を呼ぶ。


「ツナ…」

「ん〜…」


返ってきた返事ともとれない返事。
背中越しに伝わる体温と振動。


「あったかいなぁ、お前」

「子供体温って言いてーのか」

「そういうわけじゃないって」


区切られる言葉。
止まる振動。
伝わる鼓動。
早まるドキドキ。


「一回りくらいおっきくなったよな、背中」


しみじみと、感慨深く言われた台詞は、温かかった。

ピピッピピピッピ…

突然鳴りだした携帯のアラームに、ディスプレイを見やる。
ディスプレイには10/14の文字。


「ツナ」


背中合わせのまま、投げ出されたツナの手を握る。


「Buon compleanno」




君と僕

手を繋いで

背中合わせで

過ぎた日

向かえた日

照らしていたのは



月光のスポットライト
written by SHIKI,2007/10/13
お題⇒アコオール≫オーエス




背中合わせで手繋ぎが好きです(笑)
何はともあれ、リボ様&ツナ誕生日おめでとー!
Buon compleanno(ブオン コンプレアンノ)で誕生日おめでとうらしいです。




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