ぬくもりと喧騒に安堵を覚えたのはいつの頃か
いつも通りに綱吉は騒ぎに巻き込まれながらも、家に帰り着く。
武が部活に行くのを見送るのも、隼人が些細なことにキレてダイナマイトをぶっ放すのも、咬み殺した後だろう不良を引き摺る恭弥を見掛けたのも、京子の笑顔に癒されたのも、了平が極限と叫びながらボクシング部の勧誘をしてきたのも、綱吉にとっては全てがいつも通りだった。
「あれ?買い物かな…」
帰り着いた家には誰もいなかった。
いつもなら賑やかで、煩い家なのに、人がいないだけでこんなにも静かになるのかと、綱吉は二階の自室へと移動する。
「リボーンが来る前はこんなだったっけ」
楽しくもなんともない学校に行って、帰ってきても母と2人。
静かな家だった。
「なんか、寂しいな」
ランボがイーピンにちょっかいかけて、フゥ太がそれを宥めて、ビアンキによって火に油を注ぐように騒がしさが悪化して、その喧騒にリボーンがランボに向かって発砲して、10年バズーカで大人ランボが来て、また騒がしさが増す。
綱吉の視界に、毎日の喧騒を表した幻が浮かんで、消えた。
「ツナ」
「っ!!」
気配なく、背後から声をかけられ、綱吉の肩が大きく跳ねた。
自分以外の人の声に、安堵した。
「ディーノさん…」
「ちょっツナっ!?」
ポタリポタリと涙が綱吉の目から落ちた。
その涙にディーノがあたふたと慌て出す。
ギュッとディーノの服の裾を握り、綱吉は俯いて涙が床に落ちていく。
「ツナ…」
ふわりと綱吉は温かな体温に包まれる。
優しい声音で囁かれた名前は、自分の名前ではないようだと、綱吉はぼんやりと霞む視界の中で考えた。
「大丈夫か?」
「はい…」
どれだけの時間そうしていただろうか。
実際は何分という短い時間だっただろう。
落ち着いてくるにつれて、綱吉の脳は状況を正確に判断してくる。
今度は恥ずかしさに顔が上げられない。
「なぁ」
「はい」
俯いたまま、綱吉は応える。
「ギューッってしていいか?」
言うが早いか、抱き締めるのが早いか、綱吉は半回転させられ、ゆったりと包むような腕に力が込められ抱き締められた。
途端に、つむじ辺りに息を感じ、綱吉は頬を赤らめた。
「ツナ、寂しいとか思ったのか?」
ビクリと綱吉の身体が揺れる。
言葉で是も否も言う前に、綱吉は肯定してしまう。
「な、んで、わかったんですか?」
小さく呟くように綱吉が疑問を漏らす。
「静かだからな」
ギュッとディーノはまた強く抱き締めた。
いつも賑やかなのに、今日は静かな家。
そこに1人呆然と立ち竦むように立つ綱吉を見て、ディーノの思わず声をかけたのだった。
様子見がてら寄っただけだったが、来てよかったとディーノの胸の中で呟く。
もう少しで、この小さな恋人を1人で泣かしてしまうところだったのだ。
誰にも知られることなく、涙を流す綱吉を想像してディーノは思わず眉間に皺を寄せる。
「ディーノさん」
「なんだ?」
「ありがとうございます」
身長差と後ろから抱き締めた所為もあり、ディーノに綱吉の顔は見えない。
だが、髪から覗く耳は真っ赤に染まっていた。
「ツナ、大好きだぜ」
「あっ…はい」
甘えるようにディーノは肩口に顔を埋める。
この小さな恋人は、いつだってムリし過ぎると、ディーノは顔を埋めたまま思っていた。
ただいまという母の声と共に、騒がしくなっていく家の中。
イチャつくこともできない程に喧騒を纏っている家に、綱吉もディーノもどこか安堵を感じ、顔を見合わせて苦笑を浮かべた。
喧騒を鬱陶しく思う時もあるけれど、
静かなそこは寂しく寒い。
だから、
1人で泣かないで。
泣く時は一緒に居させて。
抱き締める事しかできないけれど。
ぬくもりと喧騒に安堵を覚えたのはいつの頃かwritten by SHIKI,2007/10/10
いつの間にかディノツナになってた。
当初リボツナにしようと思ってたんですが、あれ?
ディノさんはヘタレな位が丁度イイと思います。
ヘタレは愛しいよ、ホント。
ドジなディノさんに仕方ないなぁと母性を感じて、なんだかんだと格好イイディノさんに惚れ直せばいいよ、ツナは。
結論的にD27好きだよってことです。
いつか、D雲師弟の27サンドを書きたいなぁとは思う。