夢と現実の狭間に生まれた願望





「ツナくん、寝てるね…」

「そっとしといてやろうぜ」


沈む意識の中、山本と京子ちゃんの声が聞こえたけど、今は起きる気にはなれなかった。
深く深く沈む意識。





「ーーーくん、ーー吉くん」


誰かに呼ばれて、意識が覚醒する。


「綱吉くん、いい加減に起きてください」


呆れ返った声がはっきりと聞こえた。
瞼を上げて、声のする方へと顔を上げる。


「帰りますよ」

「あ、うん」


見上げた先にいたのは骸さんだった。
一つ上の学年で、何かとオレに構ってくれる言わば幼馴染みのような人。


「綱吉くんにしては珍しいですね」

「え?」


2人で並んで帰る途中、骸さんが急に話し出した。
何が珍しいのかわからなくて、ただクエスチョンマークを頭に浮かべた。


「居眠りですよ」

「そうですか?」


自慢ではないが、授業中の居眠りなんてしょっちゅうだ。
骸さんもそれは知ってる筈のこと。


「授業中はよくありますけど、放課後ははじめてですから」

「そういえば、そうかもしれないです」


クフフと独特の笑い声で、骸さんは笑う。
骸さんは綺麗な人だ。と、改めて思った。


「最近ね、夢を見るんです」

「夢、ですか?」


いるのはここと同じ並盛で、オレは母さんと2人で暮らしてる。
現実とそう変わらない夢。
獄寺くんがいて、山本がいて、京子ちゃんがいて、学校の頂点に君臨する雲雀さんがいる。
ただ、マフィアなんてものの10代目だとかに抜擢されてしまう夢。


「夢は、夢ですよね?」


何かに縋りたかったのかもしれない。
オレはここにいると思いたかったのかもしれない。


「夢の中の僕はどうしてますか?」

「骸さんは………」


いなかった。
いたけど、敵で、今は暗い水の中…。


「綱吉くん、どちらが夢なんでしょうね」

「なに、言って……?」


喉が渇く。
カラカラだ。
骸さんはここにいるのに。


「綱吉くん、君の傍にあれなくとも、僕は君を守りますよ」

「むく、ろ…さん…………」


夕焼けでオレンジに染まっていたはずの周りが、黒く染まって、気付けば闇の中に立っていた。
一瞬にして、変わった視界。
一緒にいた骸さんはいなかった。


「骸さんっ骸さんっっ!」


ただ、骸さんを呼んだ。
闇に飲まれた恐怖から、ただただ骸さんの名前を紡いだ。
走っても走っても、どこまでも闇だった。


「骸さん…」


うっすらと、光が射した気がして、意識が沈んだ。





浮上する意識。
飛び込んできたのは、オレンジの教室。


「夢…見た気がする」


ポタリと、一滴涙が落ちた。





夢か

現実か

消えた夢は

ただただ空虚を生んだ



夢と現実の狭間に生まれた願望
written by SHIKI,2007/10/08




6927好きな友達に、下書き段階(あらすじ)を見せたら、泣くと言われました。
最高の褒め言葉だと思ってます。
前からシリアスとかばっか好きで書いてて、前にやってたサイトやマガでもそんなの書いてたんですが、一番嬉しかったのが泣きましたとかの感想。
あぁ私の書いたので泣いてくれる人がいるんだ…と嬉しくてね。
あ…あとがきなのに……。
灰色の部分が27の夢です。
27の願いは闘いとかない世界で骸と出会いたかったってことなんですが、婉曲すぎてわかんない(自分で言うな)
多分69は本物です。
だから、27の夢は夢発言にあんなことを言って現実を見せようとしたんですよ。
最初のもっさんと京子ちゃんの会話にはあんまり深い意味はありません。
ごっきゅんがいたら煩くて起きざるを得ないから、京子ちゃんにしてみただけです。
別に山京とか狙ったわけじゃないです。
むしろ、山→ツナ←京な感じだと思います、はい。
無駄に長いあとがきですみません。




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