曖昧な関係の頃と、繋がった今


暗くなりはじめた空を見上げて、オレは溜息を吐いた。
溜息は白くなり空気に融ける。
人も疎らになった昇降口で、オレは一人立っていた。
実習期間もあとわずかとなったオレは、リボーンを待っている。
寒い。
ただただ寒い。
それは冬の所為だけじゃなくて、オレの心が冷えている所為もあるんだろう。


「まだかよ?」


オレが言っても、誰も答えず、ただ風がすでに冷えたオレの身体を更に冷やす。
リボーンは進路相談中だ。
オレは待っていてと頼まれたわけじゃない。
ただオレが自分の意思で待っているだけ。
どちらかと言えば、リボーンにとっては迷惑だろう。
オレは男で、リボーンには彼女がいて……先生で生徒で………はっきりと恋人ってわけじゃない。
それでもオレがリボーンを待つのは、オレが少しでもリボーンといたいと思ってしまうから。


「まだかなぁ…」


やっぱり僕の呟きは風にかき消された。

カタンッ

下駄箱を開けて、靴を出す音がオレの後ろから聞こえた。
胸にほんの少しだけの期待が生まれる。
さっきから、そうやって何度もその期待を裏切られてきたのに、オレの心は決して懲りない。


「何やってんだよ、ダメツナ」


溜息混じりの声を掛けられ振り向くと、呆れ顔のリボーンが立っていた。
その表情にやはり迷惑だったかと胸が痛んだ。


「………ぼーっとしてた」


待っていたとは素直に言えず、咄嗟に紡いだ我ながら馬鹿な返事にオレは内心苦笑した。
リボーンは少し空を見上げると、オレの手を掴む。


「冷てぇ手、何時間いたんだよ」


少し穏やかな笑顔で笑うリボーンに、オレは苦笑を表情に表した。
そんな表情はしないでほしい。
期待してしまうから。
この関係に感情を持ってくれているんじゃないかって、期待してしまうから。
リボーンが愛するのは今までもこれからも彼女だけなのに。
自分はリボーンが口先だけで囁いてくれる愛だけで充分なのだから。
感情なんてなくていい。
リボーンの心までは欲しない。
欲張ってはいけない。
少しの間だけ隣に立つことだけで充分だ。
自分でそう言い聞かせ、オレは哀しくなった。
いくら言い聞かせてもリボーンの心を欲してしまう自分がいるのだから。


「さぁてっと、帰るか」


リボーンが言う。
冷えたオレの手は、リボーンの温かな手の中。
冷えていた心が温まる気がした。
風は冷たくなる一方で、でも、その分空気が澄んで、見上げた空が綺麗だった。







「わりぃ」

「どんだけ待たせんの?」


曖昧な関係は一度終止符を打たれ、オレたちは別々の道を歩み始めた。
けれど、オレはまたリボーンの隣にいる。
あの頃の曖昧さはもうどこにもない。
今のオレたちは感情を伴っているから。


「ごめんって、な?」


両手を顔の前で合わせ、オレを見るリボーンに、そんなに怒ってないのに、と思いながらも、オレはリボーンをおいて、歩き出す。
それを見て、リボーンはバイクを押しながら、慌てて追いかけて来る。
それでも、オレは歩くのを止めない。
もともとオレとリボーンでは足の長さが違うから、歩幅も違って、リボーンはすぐに追いついた。
急に腕を掴まれ、オレは足を止める。


「冷てぇ手……寒かったろ?」


オレのことなのに、自分が寒かったみたいに、少しだけ辛そうにリボーンが言うから、オレは思わず素直に頷いた。


「早く帰って暖まるそ、ほら」


バイクのメットをオレに差し出しリボーンは言う。
オレはメットを受けとり、リボーンが乗ったバイクの後ろに跨がった。
オレがリボーンの背中にしっかりくっつくのを確認すると、バイクは走り出した。
バイクで走るには少し寒い季節。
でも、ひっついたトコロはじわじわと温かくて、オレは幸せです。





君が「いらない」と言うその時まで

温かな君のぬくもりを

オレのモノにしていても

いいですか?



曖昧な関係の頃と、繋がった今
written by SHIKI,2007/10/07




バカップルとか言わないで(笑)
リボ様がリボ様じゃない。
過去は身体の関係だけという話なんでちょっとシリアス気味。
現在はかなりのバカップルだよねー(笑)




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