過去というには最近で、現在というには曖昧な時





「久しぶりだな」


俺はツナを前にして、そうとしか言えなかった。
一方、ツナはというと、なんだか曖昧で気まずそうな苦笑を浮かべている。
俺とツナは付き合っていた。
でも、それはもう3年も前の話だ。
俺が高2で、ツナが大学4年の教育実習の時だった。
ツナが教育実習を終えて暫くは付き合ってた。
だが、俺たちは俺の卒業を機に別れた。
もともと俺には彼女がいたから、俺は彼女だけを愛する事にしたんだ、無理やり。
ツナとの事はなかった事にして。


「髪、伸びたね」


そう訊いて来たのは目の前のツナ。
俺は軽く頷く。
それだけで充分だったから。
でも、ツナは浮かない顔をしたまま。
やっぱり、俺との事など汚点でしかないのだろうか?


「元気か?」

「うん、まぁ」


折角ふったセリフも省エネされたようなセリフで返された。
あんまり元気じゃないみたいだ。
そういや、風邪をひきやすい身体だったと思い出す。


「……………きだった?」


小さな声は聞き取れない。
でも、何かを質問されたのだとは思った。
だから、聞き返そうとツナの顔を真正面から見た。
すると、ツナは真っ赤になって俺を見上げていた。
あの頃から少し広がったこの身長差が妙に懐かしくて、嬉しくて、愛しかった。


「もう一回言え」

「…………………」


二度目はないのかと諦めかける。


「あの頃、本気でオレを好きだった?」


はっきりと向けられた視線と質問。
そんな事を訊くなんてツナらしくない。
俺がツナの何を知っているんだと言われればそれまでだが。
でも、こんな事を訊くって事はツナは少しでも俺を愛してくれていたんだろうか…?


「少なくとも俺は本気だったぞ」


真剣なツナに茶化して返すのは失礼だ。
だから、俺も真剣に答えた。
すると、ツナは酷く驚いた顔をして、ふっと穏やかに笑んだ。
後ろから自分の連れが俺を呼ぶ声がする。


「オレたちさ……もう少し早くお互いの気持ち知ってたら何か変わってたのかな」


ツナはそう言って、くるりと俺に背を向けた。


「彼女サンだろ?早く行ってあげなよ」


無関心。
あの時も……別れた時もそうだった。
別れを切り出した俺に背を向けて、ただ肯定して、俺が彼女のもとに行く背を押してくれた。
あの時とは違うのは、俺がツナの気持ちを確信してるってこと。
震える肩にそっと触れる。


「っ!!」


あの時も俺が去ったあと、涙を流していたのだろうか。
でも、俺はもう後悔したくなんてないから、ツナを抱き締めた。


「こっち向けよ。まだ好きなんだ……俺はツナが」


その言葉をきっかけに箍を切った様に俺にしがみついて、泣き出した。




それは

今から

少しだけ前の話



過去というには最近で、現在というには曖昧な時
written by SHIKI,2007/10/06




昔オリジナルで書いてたやつのパロです(ぇ)
まぁパロディなオリジナル(わけわかんねー)
現在にすると、大学生リボ様×高校教師27って感じ。
リボ様の彼女は誰にしようか悩んだ末、まだ決まってないっていう見切り発車。




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