愛、したい


頭の中を巡るのは、ただただなんでという疑問のみ。
理由など解りきっていた筈なのに、僕の頭はそれを理解してはくれなくて、振り払え、突き飛ばせという強い思いは行動にはならず、目の前に揺れる金髪が何故か霞んで見えた。
締め付けられるような抱擁は長く、その存在を確かめるようで、なんでか安心してしう。
だって、僕を抱き締めている彼はマフィアなのに。
僕の大嫌いで、憎くて仕方のない存在なのに。
空を切った腕が落ち着いたのは、彼の愛用するカジュアルなコートの背だった。



「骸」



なんですか。
不機嫌に言い放つつもりだった言葉が口から出ない。
あぁ今日はなんだか僕の身体が僕のものじゃないみたいだ。
やっと、あの冷たいところから出れたのに、何なんだ、本当に。



「泣くなよ、骸」



泣いてなんかない。
そう言いたかった。
でも、目の前の男は情けない顔をして、僕の目尻を指で触れる。
自分の頬が濡れていることを知った。



「やっと言える。なぁ骸、好きだ。だから、お前も俺を愛して?」



あぁなんて、傲慢。
狡い男だ。
もう、逃げるなんてできないとわかってしまった。
だって、僕は実体。
逃げ切れない。
大空属性なんて嫌いだ。
全てを包み込んで放さない。
大っ嫌いなマフィアで、しかもボス、オマケに憎きイタリアーノなのに。
愛したいだなんて思う僕が一番嫌いだ。








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