いつもの様に帝人はチャットに参加していた。
そこが正臣の家であろうが、関係はなく、帝人は画面に集中する。
今は帝人を含め、三人がチャットに参加していた。
管理人であり自分を誘ってくれた甘楽さんと、そこそこノリのいいセットンさん。
その二人を相手に帝人は話をしていた。


━━エンさんが入室しました━━


画面に表示された文字に帝人も文字を打つ。


【エンさん、こんばんはー】

[ばんはー]

〔皆さん、一昨日ぶりッスーこんばんは!〕

〔ロム見たッス。太郎さん、池袋にようこそ〜。オフ会するなら俺も呼んでくださいね〕

【ありがとうございます。絶対呼びますよ】

【エンさんは黒バイク見たことありますか?】

〔都市伝説の!今日、見てきたとこだよ〕

【じゃあエンさんもすれ違ってたかもしれないですね】

[そういえば、エンさんも池袋の住人でしたっけ?]

〔池袋人っすよ〜。といっても、3、4年ほど前からだけどね〕

《エンさんて最初から都会慣れしてましたよねー》

〔あぁ甘楽さん居たんすか?って、そんな擦れてたみたいなこと言うのやめてくださいよ〕

【甘楽さんとエンさんって会ったことあるんですか?】

《仕事の都合でよくお会いしてますよね?》

〔こっちは会いたくないんすけどねぇ〕

[甘楽さん、嫌われてるじゃないですかww]

〔あ。来客なんで落ちます!お疲れっした〕

【おやすみなさい】

《おやすみなさーい☆》


━━エンさんが退室しました━━


[おやすー]

[ありゃ出遅れた]


皇人はセットンのその挨拶を見てから、モバイルパソコンの電源を切り、目の前の部屋のインターフォンを押す。
すぐに訪問者を問う声が聞こえ、

「俺です」

と短く返答する。
中からチェーンを外す音が聞こえた。
玄関が開き、皇人と種類の似た笑顔を浮かべた男が皇人を出迎えた。


「いらっしゃい、皇人くん」

「こんばんは」


会釈する皇人の手にあるモバイルパソコンを一瞥すると、男は笑みを深くする。


「それから、アクセスしてたんだ」

「えぇまぁ。入れてもらえますか?」

「どうぞ。仕事の話でしょ?」


そう言って男は皇人を残し部屋へと入っていく。
肯定を返し、鍵を閉めチェーンをかけると、男の背中を追い、部屋へと入る。


「さてと、で?」

「この間の件ですが、なかなか尻尾を掴めなかったんで、ちょっと強引に引きずり出してみました。あぁ勿論、アンタの名前は出してないです。これが資料になります。あと、あの矢霧の話、確定っぽいですよ。ネブラの狙いは間違いなく『首』でしょうね。あそこには新羅先生のお父様もいらっしゃるみたいですし」

「そう。相変わらず、仕事が早くて助かるよ。で?ダラーズの方の報告はしてくれないのかな?」


ギィと男の座るオフィスチェアが軋んだ。


「臨也さん、それについてはノーコメントにさせていただきますと言ったのを忘れたんですか?あと、俺は言ったはずです」

「弟の帝人くんには関わるな、だっけ?」

「えぇ」


男、臨也はクツクツと喉で笑う。
皇人はそれに目を細めた。


「ハズレか当たりか。楽しみだよ、ホントに」

「アンタが弟に危害を加えたなら、俺は刺し違えようがアンタを殺しますよ」

「怖いなぁ。俺は皇人くんのことも好きなのに」


冗談とも取れる軽い口調で紡がれた好意に、皇人は明からさまな嫌悪を表情に表した。


「臨也さんは人間という種を愛しているんでしょ。俺には最高のナルシシズムにしか思えませんがね」


クツリと笑った皇人に、若干ながら臨也の表情は固まっていた。



皇帝、黒に接触する。
(それはまるで狐と狸の化かし合い)




(自分と同じ種を愛してるだなんて、結局自分を愛してるんだ。十分、ナルシストじゃないか。アンタだって『人間』だろう?神様気取りの情報屋さん)









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