池袋で待ち合わせ場所といえば、いけふくろうを指定するとわかりやすいだろう。
待ち合わせをするには些か不便でもある。
同じように待ち合わせをする人が多いことが一番の難点だ。
勿論、人混みと東京に慣れていない弟との待ち合わせにそんなところを使うわけがなく、皇人は池袋ではなく、大都会への玄関口である東京駅に居た。
ジーンズに、ジャケット、Vネックのシャツを合わせた装いは似合っている。
少し感じた視線に、オフのホストみたいだと、三日程前に会った人間に言われたことを思い出す。


「みか!」


新幹線から降りてきた帝人の姿を見つけると、ざわつくプラットホームでもよく通る声で、その愛称を呼んだ。
呼ばれたことに気付き、キョロキョロと周りを見渡した帝人に、笑顔で手を振る。
一瞬、きょとんとした後、帝人が駆け寄ってくる様に、皇人は思わず、頬を緩めた。


「皇ちゃん、だよね?」

「俺以外に見えるなら、誰に見えるのか教えて欲しいな」

「その声、間違いなく皇ちゃんだ」


嬉しそうに笑う帝人に、皇人は笑みを絶やさない。


「明日、正臣くんと観光だっけ?今日も軽く案内するよ?」

「ホントに!?ありがと、皇ちゃん」

「どういたしまして。一応、生活拠点を案内予定だけど、行きたいとことかあった?」


そうだな〜と考える自分より低い頭を少し見下ろして、微笑む。
皇人をよく知る人物からすれば、この微笑みは有り得ないと言われるだろう。
どこか演技しているような仮面めいた笑みで笑うのが皇人の常であるからだ。


「皇ちゃん?」


どうやら、意識を他に飛ばしていたことに、微妙に聡い弟は気付いたらしく、皇人を不思議そうに見上げていた。
それに苦笑いを返し、帝人の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「わっちょっ皇ちゃん!?」

「まずは昼飯食いに行こうか、みか」


そう言って帝人の持つ荷物を奪い、もう片方の手で帝人の手を引き歩きはじめる。
次に到着する新幹線の案内放送が響くプラットホームを後にした。



皇帝、愛弟を迎える。
(非日常の扉は君が為に開かれた)




「みかー…って、あ〜ぁ、無防備に寝ちゃって、まぁ。初日なのに色々行ったし、疲れたんだろうな」


ヨッと掛け声をかけて、帝人の身体を抱え上げる。
帝人の為に用意した部屋に運び、ベッドにその身体を沈めた。


「おやすみ、みか」









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