歪んだ愛情を抱えた少年が守り続けたかったのは、たった一人の弟。
歪んだ恋の物語の裏側で起こった誰も知らない物語。



♂♀



日付が変わろうかという時間に、青年は大切な人へのメールを送信する。
送信完了を告げたディスプレイが表示される数秒前、青年が向き合っているデスクに置かれた電波時計が日付を変えた。
日課である行為ではあるが、今日のメールはいつものそれより、字数が多く、重要度も高い。
彼にとって、今日は特別な日だった。
己の誕生日であり、誰よりも大切な人の誕生日だからだ。
3月21日、それは竜ヶ峰皇人と双子の弟である帝人の誕生日である。



♂♀



21日に日付を変えて15分程が過ぎた頃、皇人の携帯が着信を知らせるように盛大に音を鳴らす。
皇人と同じ部屋にいた男が眉を寄せ、携帯を睨むように視線を向けた。
そんな男の視線などお構いなしに皇人は緩慢な動きで携帯のディスプレイを見る。
ディスプレイに表示された名前に頬を緩めると、あからさまに不機嫌そうな顔をした男を一瞥してから、部屋を出た。
すぐさま、通話を繋げる。


『皇ちゃん?』

「なぁに?みか」


他の誰にも聞かせないような甘ったるい声音で小さな頃から呼び慣れた愛称を呼んだ。
電話口では愛しい弟が拗ねているだろうと笑みを浮かべる。
電話をしてきた相手は正真正銘皇人の弟であり、最愛の片割れ、竜ヶ峰帝人である。


『メールありがとう。皇ちゃんも誕生日おめでとう』

「うん、ありがとう。今年も離れ離れで誕生日迎えるなんてね」

『そうだね。でも、すぐに会えるよ。僕、4月には来良に入学するんだし』


都会に出て来ることが余程嬉しいのか、帝人の声は少し高揚している。
帝人に感づかれない程度に皇人は溜息を零した。


「ねぇ、みか」

『どうしたの?皇ちゃん』


ずっと考えていたことを皇人は口にしようか躊躇いながら、携帯を握る手とは反対の手をギュッと握り締める。


「こっちで一緒に住まないか?」


その言葉が非日常への近道になる扉の鍵であったなどとは、帝人は知らない。
上京後、幼なじみに言われる関わってはいけない人間というものに、本当は皇人が含まれていることも。
そう、この時は何一つ知らなかったのだ。





皇帝、一つ歳をとる。
(帝人の傍に居たいだけ)




『えぇぇぇ!?いいの?』

「そんなに驚くことかな?まぁ、みかさえ良ければ、ね。」

『僕も皇ちゃんと一緒だと助かる』

「じゃあ決まりね。父さんと母さんには朝になったら俺から電話しとくよ」

『うん。ありがとう!』










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