近未来的研究所パロ
世話役研究者×研究対象



人工物でありながらも、清々しい爽やかな風と柔らかな太陽の光に包まれて一人の人間が身じろいだ。
どうやら寝ているらしい人間は、瞼に覆われた瞳こそ見えはしないが、幼いと形容できる容姿をしている。
短く切られた髪は綺麗なまでの漆黒で、太陽の光に晒され、輝きを放っている。
その様を見ているのは、寝ている少年より少し長めにのばされた漆黒の色の髪の男だ。
腕を組み、小さな溜息を吐く。
彼は瞳とは異なった紅玉を嵌め込んだような瞳を持っていた。
その顔は女性であれば一度付き合ってほしいと願い出たくなるだろう整った顔立ちをしている。


「まだ、寝てるの?」


青年が独り言のように呟いた。
独特の機械音を立てて、青年の頭上を鳥たちが羽ばたいていく。


「起きてますよ」


溜息と共に聞こえた声は、女性にしては低く、青年にしては少しばかり高い、そんな声だ。
薄いグレーがかったような瞳と目が合うと、青年はニコリと人の良い笑みを浮かべ、胸元に手を当てて、礼をした。


「おはよう、帝人くん」

「おはようございます…臨也さん」


その人物―帝人は眉間に皺を寄せる。
青年―臨也はそんなことは気にも留めずに、ポケットからデジタルボードを取り出した。
ウィンッと、電子音を立て、デジタルボードに無数の文字が映し出される。
その様子を帝人は自分の寝ていたベッドに胡坐をかいて、無感動に見つめていた。


「臨也さん、外に出たいです」


デジタルボードを見ていた臨也は帝人の言葉に行動を止めた。
視線をデジタルボードから帝人へと移す。


「帝人く「ダメ。……なんですよね?」


続けようとした臨也の声を遮り、泣きそうな笑みを浮かべる。
その視線に、臨也は苦笑をその顔に浮かべた。


「帝人くん」


名を呼ばれ、帝人はふいっと外方を向く。
その様子に臨也はまたもや苦笑した。


「帝人くん」


もう一度、臨也が名を呼んだ。
帝人が臨也の方を向く気配はない。


「もう、仕方ないなぁ」


そう言って、臨也は帝人の座っているベッドに片足を乗り上げる。
次の瞬間、帝人の体はグラリと後ろに倒れた。


「どいてください、臨也さん」


帝人は臨也に押し倒されていた。
しかし、この状況に帝人が動揺している様子はない。
ただ自分を押し倒し、自分の上に乗っている臨也を無表情に見上げている。


「帝人くん、よぉく聞いて」

「何を…」


帝人の首筋に顔を埋め、臨也は話を進める。
今までになかった反応に帝人は戸惑っていた。


「外は怖いところなんだよ。帝人くんは此処に居ることが一番なんだ。外にはね、君を傷付けようとするものが沢山あるし、居るからね。だから、ここに居てよ。俺の居るここにね。ここに居れば、帝人くん、君は一人にならない。俺が一人にはさせないよ」


それは外を知らない帝人への刷り込みであるのを理解しながらも、帝人は自分の首筋に顔を埋めたままの臨也に腕を回し、抱き着いた。


「一人は嫌です」


知らず知らずに帝人の目から涙が流れていた。
一人を帝人は知らないのに。
いつだってこの籠には臨也が居た。
なのに、まるで一人を知っているかのように、帝人は泣いていた。
心が悲鳴を上げていた。
一人は“もう”嫌なんだ、と。











しがりは嘘つき
(逃がさないよ。此処に居れば俺は君と一緒だから)
title by:[悲しい心](c)ひよこ屋




夢の中、黄色と赤が交錯し、金髪の男が僕に笑いかけてブラックアウト。
残ったのは緋色の瞳を持つ嘘つきな監禁者のみ。









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