パソコンの画面に視線を走らせていた帝人は、それから目を離し、大きく伸びをする。
画面を覗き込むにつれ、猫背気味な姿勢をとっていた所為か、背骨がボキボキと音を立てる幻聴を耳にした気がしながらも、再びディスプレイへと視線を滑らせた。
「早かったですね」
目線は固定したまま、帝人は静かに声を落とした。
「まぁね」
ギィと帝人の座った椅子が軋む。
「パソコン借りてます」
「事後報告?何か面白いことでもあった?」
「そんなには。ただ」
「ただ?」
「随分と情報が回るのが早いなぁと」
帝人の目線の先にあるディスプレイを覗き込み、この部屋の主であり帝人が座る椅子の所有者である臨也はあぁと納得したように呟く。
青白い光を放つディスプレイはダラーズの掲示板を映し出していた。
「帝人くんが居なくなったってダラーズを抜けた筈のシズちゃんまでもが探してる」
「そうみたいですね」
「他人事〜」
クスクスと笑う臨也に対し、当人である帝人でさえも、その口元には笑みが浮かんでいる。
例えるならば、嘲笑。
その言葉が当て嵌まる、そんな笑みだ。
「誰よりも必死で探してるのは黒沼青葉みたいだけどね」
「みたいですね」
「ホントに興味ないの?」
「知ってて言いますか」
くすりと笑ったのはどっちだっただろうか。
椅子に座ったままの帝人を、椅子の肘置きに座った臨也が抱きしめる。
それはまるで子供が玩具を取られまいとしているかのように。
「もう俺の、だもんね?」
「勿論ですよ」
「ねぇ帝人くん」
「はい」
「大好きだよ」
そう言った臨也に、帝人は口角を上げて笑った。
たったひとりの人を愛した
(全てがイコールの世界からの脱却)
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軟禁?監禁?
いいえ、自ら立て篭もってます。