少年は月を見上げていた。
青白い光を放つそれが本当は自身の光ではなく、他者の光で輝いているのを少年は知っていた。
月は自分では光れない。
輝くことなど出来ない。
そう考えれば考えるほどに、少年は月がまるで自分のようだと感じていた。
月には太陽があるが、自分にはもう光を与えてくれる太陽はいない。
「正臣」
呟いたのは幼なじみの名前。
自分をこの街へと誘った彼の名前。
「寂しいよ、正臣」
溢れた涙など拭いもせずに、ただただ月を見上げる。
君には言えない寂しさを、月に教えてあげようか
(どうしてなんて言い飽きた)
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願いはただ一つ。
置いてなど行かないで、連れていって欲しかった。