帝人の太股の上に頭を置く人物は、すぅすぅとその名に相応しい程静かな寝息を立てている。
普段、名前負けというか(ある意味『名前が負けている』のではあるが)、名は体を表すを見事なまでに裏切っているこの人物が、ここまで穏やかなのは珍しいと言ってもいい。
喧嘩人形という通り名の割に、キレさえしなければ、大人しい彼ではあるが、一度キレてしまえば、正しくその場は戦場と化す。
地獄絵図を生で見れるだなんて、実際に平和島静雄を知る人物にしか理解していただけないであろう。


「えーっと…」


とにかく、帝人は困っていた。
どれだけ現実逃避しようとも、太股に乗った重みが消えるわけもなく、ただただ困っていた。
これが臨也であったなら、ある種の救いだったと言えよう。
遠慮のえの字もなく、立ち上がって起こすに決まっいる。
だが、それは臨也相手であるから出来ることだった。
そんな乱暴なことを、静雄に出来る筈もない。
キレると暴れるからではなく、帝人が静雄に一種の憧憬を抱いているからに他ならない。


「ん〜?」


唸ったところで静雄が起きてくれるということもないのだが、帝人は困った顔をして、首を傾げる。
何故、このような状態になっているのか、帝人はてんで理解していない。
それもそのはず。
公園のベンチに座り、少し暖かい陽射しを浴びるうちに、うとうととしてしまった帝人が起きると、既に己の太股を枕に眠る静雄がいたのだ。
邪魔になってはいけないと、ベンチの端に座った所為か、帝人の膝枕で眠る静雄は、片足をベンチの上で立て、もう一方を座るように地に落としている。
なんというか、ベンチをしっかりベッドにして寝ている。
傍から見れば、絵になるんだろうなぁと、帝人はぼんやりと再び現実逃避を試みた。


「んっ」


穏やかに眠っていた静雄が少しばかり眉間に皺を寄せ、短い唸りをあげる。
それに驚きながらも、静雄を起こさないようにか、身体での反応を示さなかった自分を褒めてほしいと、帝人は内心溜息を零した。
一向に起きる気配のない静雄の金髪にそっと手を伸ばす。
想像していたよりも柔らかい髪は、するりと帝人の指から零れた。
幼い子供のように、掬っては零すの繰り返しを帝人は夢中で繰り返した。


「さらさらだ」


ふふっと笑みが漏れる。
どれだけ髪を触っても静雄は起きないのをいいことに、帝人はそれを繰り返した。








覚めるまでの戯れ
(心地好く穏やかな時間)




(もう少しだけ、もう少しだけ、って、いつまで寝たフリをするつもりだ、俺は)







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