不可思議体験



突如として目の前の風景が過去のものに変わったなら、貴方は驚くだろうか。
驚くに決まってる。
今現在、その状況に陥っている僕が言うんだから、間違いないよ。
目の前には、学ランを着た……………どう見ても臨也さん。
というか、何、この状況。
ズキズキと後頭部が痛むのは気のせいなのか。


「ねぇ君」

「は、はい」

「それ、来神の制服でしょ?俺、新羅以外にきちんと着てる奴はじめて見たよ」

「は、はぁ…」


嬉々として話し掛けられた。
なんか、僕の知ってる臨也さんより胡散臭さがない。
さっき、チラッと学ランの下に隠しナイフが見えたのなんか気のせいにしたい。


「でもさー」


何やら、物凄い勢いで喋っていた臨也さんがチラリと僕に向けた視線は、まるで静雄さんに向けている視線のように、鋭かった。
口元には笑みを携えているのが、余計に恐怖心を駆り立てる。
ゾクリと、背筋を冷たい何かが這い上がった。


「君、うちの生徒じゃないよね」


疑問符など付けられていない、確信めいた声音に、肩が揺れる。
それを愉快そうに、笑ったのは臨也さんだ。


「なんで、なんて聞かないであげるよ。その代わり」


わざとらしく、言葉が切れる。
どこか芝居がかった紳士的な所作で、僕の顎に指輪のはまった人差し指が添えられる。


「君を頂戴」


ニタリと臨也さんの口角が上がって、三日月のように歪んだ。




つの君も君は君で
(目眩眩暈めまい。ぐるぐる回って暗転)




「あ、帝人くん起きた?臨也ーっ、帝人くん起きたよ」

(あれあれあれ?)

「帝人くん!大丈夫?何ともない?」

「あの、あれ?僕、何が?」

「俺の部屋で滑って転んで気を失っちゃったから、新羅を呼んだんだよ」

「凄かったよ。臨也の慌てよう」

「五月蝿いな。新羅、笑うな」

(あぁだから後頭部が痛むのか!)








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