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※裏





ネブラ薬品効能
報告レポートno.1045
【サンプルJ10-k 】
・人獣化?
頭から耳のようなものや、尻尾、犬歯が生えたのを確認。人語の使用は未確認。
獣並みの力を発揮できるが、その反動は大きい。意思疎通は可能なのだろうか?





※追記
〇月×日
サンプルの投薬継続不可
被験者の身体に多大な負荷あり。
これ以上の継続は命に関わる危険性大。

→実験中断
→使用厳重注意



「失礼します。例の薬のサンプルがなくなっていたのですが……"また"貴方ですか」

「またとは何かね?確かに!犯人はこの私だ!!」

「そうやって開き直らないでください。ただ、あの薬はまだ未完成で、その上とても危険です。もし外部に情報が……それどころか薬そのものが誰かに使われてしまったら……どう責任を取るんです?」

「はっはっは、その心配はない!彼は口の硬さだけは信用できる!……まぁ、それ以外はともかくとして」

「外部の人間に薬を託したのですか!?……本当に大丈夫なのでしょうか」

「きっと、いや、恐らく。正直なところ、お前だってあの薬の効果を知りたいというのが本音だろう……?研究者の探究心とは底を尽きぬな」

「はぁ……ですが、しかし……」

「安心したまえ。依頼主にはそのあたりを重々キツく言ってある。もし、あの情報屋が被験体を選ぶとすれば……九分方あの男だろうな」

「あの男、とは?」

「池袋最強の男といえば……君も知っているだろう?彼ほどの強靭な身体の持ち主なら……まぁ、最悪死にはせんだろう」

「(なんて適当な……)」



♂♀



べろりと首筋を舐められ、あまりに突然だったものだから、思わずひゃあと悲鳴をあげた。相変わらず両腕の手首はどちらもシズちゃんに拘束されており、簡単には振り解けそうにない。くすぐったさに首をすぼめるが、それでも彼は離れなかった。執拗に舌で首筋から鎖骨へ、その動きは更に下へ下へと移動してゆく。



「へっ……?し、シズちゃ……!?何して……」

「……」

「ひぅっ!や、ぁ……ま、ちょっと待っ……あぁっ!!?」



鎖骨から更に移動した舌も、このままでは服が邪魔でより下方へと進めない。そこでシズちゃんは私の服の首裾に爪を引っ掛けると、そのまま真下へと引っ張ってビリビリと真っ二つにしてしまった。綺麗にぱっくりと裂けた服を取り除き、露わになった胸の谷間へとそのまま顔を埋める。一度離れ再び肌へと触れた彼の舌はいつもよりザラついていて、とても熱い。この感覚はーー昔、友人の飼っていた犬に手のひらをペロリと舐められた時によく似ていた。

いつの間にかブラを押し上げられ、膨らみの先へと直にその舌が押し付けられた瞬間、異なる刺激に下半身が熱くなる。無意識のうちに締まりの良くなった秘部はより強くバイヴを咥え込み、相変わらず継続されているピストン運動は更に奥にまで至る羽目となった。気の狂いそうになる刺激に耐え切れず、生理的な涙がボロボロと瞳から零れ落ちる。もはや気持ちイイという感覚すら通り過ぎているようで、頭の中が真っ白になるとはまさにこのことだと悟った。



「はぁ……ん……!あっそ、んなに……舐めないで……ぇ!!」



じゅるじゅると卑猥な音を響かせながら乳首を吸い上げ、時折歯を使って甘噛みする。すっかり火照ってしまった身体は今与えられている刺激に順応してゆき、次第にそれだけでは物足りないと思うようになってしまったらしい。もっと強く、速く、奥まで突いて欲しいーーなんて、そんな台詞口にできるはずもないが、心よりも正直な身体はそれを代弁するかのように腰をくねらせるのだった。



ーー刺激が足りない。

ーー彼の声が聞きたい。



たった一言でもいい、私の名前だけでも構わない。例え他の誰かの介入があったとしても、相手はシズちゃんなのだという実感が欲しかった。だってこの行為にただ1人喘いでいるだけなんて、そんなものただの自慰に等しいではないか。



「(それじゃあただただ虚しいだけだよ)」



心の叫びは彼には届かず、ただ愛撫されるだけの時間が過ぎていった。時間と共に彼らの息遣いの荒さや、背中に押し付けられたものの熱さが増してゆき、とうとう今の体制を保てなくなった私たちはそのままベッドへと倒れ込んだ。そこまで上質ではない保健室のベッドはふんわりと身体を受け入れてくれはせず、ギシリとより一層鈍い音を立てる。壊れないだけまだマシだ。なんせ、大人3人の体重分負担が掛かっているのだ。それでも胸元に顔を埋めるシズちゃんがまるで甘えてくる子どものようで、それがなんだか愛しくて。そっと頭を撫でてやると、またしてもやけにふんわりとした感触がーー

これが髪の毛ではないと確信したのはこの瞬間。そして暗闇の中でパタパタと揺れる謎の物体の存在に気が付いたのもほぼ同時。



「!!?」

「どうしたの。急に身体強ばらせちゃって」

「い、臨也……その、シズちゃんの様子が変……で……」

「?」

「し……尻尾らしきものと、このふわふわとしたものって、もしかして……!?」

「……ごめん。一旦電気つけてもいい?」

「いっ嫌だよ!だって、今私の格好乱れてるし!それに……ッ、シズちゃん……
離れないし……!!」



ひとまずシズちゃんの身体を引き剥がそうと試みるも、彼はそう簡単に許してはくれなかった。無論、力で敵う訳がない。



「ねぇ、これってもしかして」



犬?狼?ーーいずれにせよ、耳と尻尾が生えたのであろう事実は揺るぎない。確かにシズちゃんが犬のようだと感じることは今までに多々あったが、それはあくまでものの喩え。まさか本物の犬だったなんて微塵も思いやしない。試しにそのモフモフとしたものを引っ張ってみると、突然のことに驚いたシズちゃんは全身を大きくビクつかせた。おかげで彼は舌の動きを止めたはものの、唸り声のようなものをあげながら恨めしそうな目でじっとこちらを睨むのだった。



「……」

「……」

「ちょっと臨也、私の知らないところでシズちゃんに何したの」

「まぁ、ちょっとね」

「どこが"ちょっと"!?」

「いいじゃん、別に死ぬ訳じゃないし。だってあのシズちゃんだよ?」



しっかし、緩和剤も同時に打ったはずなんだけどなぁ。そう言って頬をポリポリと掻く臨也であったが、きっと内心どうでもいいと思っているのだろう。彼には「シズちゃんなら何をしても大丈夫」という根拠の無い絶対的自信がある。ここまでの一連の台詞をシズちゃんは黙って聞いていたが、表情は何か言いたげに歪んでいた。反論しない、というよりは出来ないという方が正しいようだ。



「そんなことはさておき……みさきさ、状況を今1度確認した方がいいと思うよ。自分以外の心配していられる余裕なんてないでしょ」

「!? ち、ちょっと……やだっ、これ、振動強くなってない……、ッ!?」



気が付くと、臨也の手には小さなリモコンが握られていた。それを奪おうと手を伸ばすもぎりぎりのところで届かない。あまりにも意地が悪いものだから、思いきり後ろに向かって肘鉄してやった。それが見事にみぞおちに入ったようで、ウッと苦しげな声が漏れる。ざまあみろ、なんて内心思ったのはここだけの話。



「……ッ、シズちゃん!」

「!」

「これ……、抜いて………!!」



期待などしていなかった。こんなことになってしまったのもシズちゃん同意でのことだったし、限りなくゼロに近い可能性に賭けてみたのだがーー絞り出した精一杯の声に彼はぴくりと反応し、それに従ったのだ。何の遠慮も前触れもなしにずるりと引き抜かれたため、驚きよりも喪失感が勝ってしまったことに堪らず赤面するも、ひとまず難は逃れる。姿だけでなく中身までも犬のように従順になってしまったのだろうか。

抜けても尚ブルブルと振動を続けるそれはやはり卑猥以外の何物でもなく、直視出来ず視線を逸らす。何処か物足りないと感じてしまう身体を諌めるように、込み上げてくる熱を抑え込むように、両腕で己を強く抱き締めると自分でも驚くほどに熱かった。自分の身体のはずなのに、意志とは全く連動しないそれはまるで別物であるかのようで。



ーー……怖い。



ふと恐怖を感じた途端、視界がぐにゃりと歪んだかと思いきや、言うことの聞かない私の身体は突然涙を流し始めた。誰も「泣け」などと命令していないのに、勝手に。



「あーあ、泣いちゃった」

「な…っ、泣いてないし……」

「よしよし、強がらなくてもいいよ」

「……誰の……せいだと……」

「うん、俺だね。君を泣かせているのが自分なんだって思うと、それだけで……」



至福の表情を浮かべながら、それ以上は言わなかった。どうせロクでもないことだ。頭をぽんぽんと撫でる彼の手を内心払い除けたいとも思ったが、決して不快なものではなかったし、そんな力はこの身体に残されていなかったので、私はただただ身を縮こませて子犬のように震えた。

子"犬"といえば、言葉のまま犬になってしまった者が目の前に1人いるのだがーーやはり見間違いではなかった。すっかり暗闇に慣れてしまった私の目には、はっきりと人にはあるはずもないものが映っている。そして、視界の端にはぱたぱたと動く尻尾のようなものも。



「……それ、本物?」



嗚咽を漏らしながら紡いだ言葉に、喋れない(?)シズちゃんの代わりに臨也が答える。



「多分。そもそも俺はどんな効果があるのか知らなかったし、だからこそネブラに依頼……おっと」

「ねぶら……?なに、それ」

「……聞かなかったことにして。それにしても、頭から生えたこの耳?は、耳としての機能を果たせるのだろうか。一応人間の耳も残っているし、今のシズちゃんに耳が4つあるということは……もしかしたら犬以上に聴覚に優れているのか……」



薬の効果を分析し出したかと思えば、意味の分からないことをぶつくさと呟き始める臨也。それはさておき、見たところ犬となってしまったシズちゃんの様子は相変わらず。未だに振動を続けている卑猥な玩具を片手に、ただただじっと私を見つめている。その熱い眼差しは性的なものというよりかは、純粋に興味を示したものだった。



「シズちゃん……?」



私の呼び掛けに暫しきょとんとしていたものの、ふと何かに気付いたかのようにハッと目を見開くと、彼は突然私の唇をぺろりと舐めた。あまりに唐突過ぎたので、痴態を晒してしまったことへの羞恥心や先程までの恐怖が一瞬にしてどこかへ吹き飛んでしまった。彼が言葉を話せないためまだ定かではないが、少なくとも記憶に障害が出ている訳ではないらしい。こんな時どうしたって思い出されるのは、彼に忘れ去られてしまった時のあの喪失感。冷たく突き放されることがないだけにまだマシだと思える。

だが、しかしーー



「(どうしたものか)」



この際誰だっていい。打開策を教えて欲しい。忘れてはならない、ここが母校の保健室だということを。



「(臨也もすっかりいつもの調子だし、このまま適当なこと言って逃げられるかも………)」

「みさき」

「!! はっ、はい!!?」

「とりあえず……俺も1回イキたいな」

「……」



はぁ、そうですかとは言えなかった。そんなもの自分でどうにかしてくれ、とも。



「ね?みさき」

「そっ、そんな甘えた声で言われても知らないですよ!そんなの!大体、私は貴方の彼女ではない!!」

「彼女じゃなくたって、身体だけの関係を良かれと思っている人間はたくさんいるよ?」

「みんなが良くても、私は嫌なの!ていうか、そういう考えの人たちがいることは否定しないけど……っ、」

「否定しないんだ?」

「わ、私は違うけどね!断じて!ただ、いくらなんでも、彼氏の目の前で他の男の人と……ひ、卑猥な行為を平気でできる図太い神経の持ち主はそうそういない!!……多分!!」



今の言葉のどこがツボに入ったのか、臨也はケラケラと笑い出した。私は至って真面目である。



「(調子狂うなぁ………)」

「あはは、ほんと、みさきって最高」

「そんな腹抱えながら言われても……って、ちょっと!どさくさに紛れてどこ触って……ひゃん!?」

「あぁ、確かに。みさきの言う通りだと思うよ。世の中には所謂セフレという関係性が確かに存在していて、それを恋人とは言わないのかもしれない。それは大抵、互いが身体だけの関係だと割り切っているからこそ成立するものであって……俺とみさきとは違うよね」

「……そりゃあ、私はそんなこと思ってないし……臨也とそうなりたいとも思ってない」

「はっきりと言うなぁ。もう少しオブラートに包んでよ」

「今まではそうやってきたじゃない」



相手を否定する訳じゃない。嫌いだと言って突き放す訳でもない。たったそれだけのことを口にするために、私はどんなに躊躇しただろう。もしかしたら「嫌い」などといった"どストレート"な言葉よりも、下手に相手を思って選んだ言葉の方が心に突き刺さる刺がある。それでも私ははっきりと告げなくてはならない。だって、こんなにも近くに彼(シズちゃん)がいる。……今のシズちゃんにそれが伝わっているかは定かでないが。



「ま、俺は何も相思相愛になりたい訳じゃあないから」



そんな屁理屈を言いながら臨也は私の手を掴むと、自分のモノを握るよう無言のまま促された。触れた途端、その硬さに、熱さに驚かされる。だって、今まで何も視界に映っていなかったから。それ自体はもちろん、表情さえも。目の前のシズちゃんの変化ばかりに気を取られ、背後にいる彼を振り返ってまで確認する余裕など私にはなかった故。少しでも後ろに目を向けようとすれば、何故かその度に与えられる刺激が増した訳でーー今思い返せば、それらは全て自身を悟られぬための臨也の意図的な行動だったのかもしれない。

飄々と、口では何でもないようなことを言って、身体はこんなにも正直に興奮を覚えているのだ。それを思い知らされたと同時に、どくんと心臓が大きく跳ね上がった。私だって同じ人間なので、身体はこんなにも単純で、そりゃあ男も女も関係なしに造りは似たようなものなのだからーー同じように興奮だってしてしまう。抗えず。

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