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ギシギシ。ギシギシ。

俺の上に跨がり、余裕のない表情を浮かべては遠慮がちに腰を揺らすみさきの姿はかなり色っぽい。動く度にぐちゅぐちゅと泡立つような水音が響く。彼女の頬を伝って落ちる雫は果たして汗なのか涙なのか――光るそれを指先で軽く拭ってやった。下方から覗き込むようにして目を合わせれば恥ずかしげに顔を背けるみさき。そんな1つ1つの仕草が愛しくて、つい意地悪をしてしまいたくなる。



「はは、すげーうまそうに咥え込んでるなココ」



フリルのついたスカートをペロリと捲ってやれば何の隔たりなく繋がったお互いの性器がいやらしい液で濡れているのが窺える。これだけ濡れていたせいか挿入もすんなりいったし、騎乗位であるにも関わらず痛みも一切伴わなかった。見ないで下さいと言って懇願するみさきの口元へとスカートの裾を持って行き、口で咥えるよう促す。おずおずと俺の顔色を伺っていたみさきはやがて要求を聞き入れた。従順な彼女のその様は酷く興奮を駆り立てる。



「は……ッ、もっと、動けんだろ?」



思いきり突き上げてやりたい衝動を抑え、彼女の腰を掴んだまま挑発的に言う。

所謂騎乗位と呼ばれるこの体位。初めは恥ずかしがって躊躇していたみさきも今となっては快感を求めいやらしく腰を振っている。それでも羞恥心を完全には捨てきれずにいるようで、特に下から見上げて見つめられると恥ずかしそうに顔を背けた。身長差故にいつだってみさきは俺を見上げる側だったから、逆に俺から見上げられるのはみさきにとって新鮮なのだろう。



「私だって、シズちゃんの身体に私以外の痕が残っちゃ嫌だよ」

「(みさきが嫉妬、とか)」



純粋に、嬉しかった。俺がみさきの事を想っているようにみさきも俺の事を想っているのだと実感する事が出来た。照れ屋なみさきはありのままを口にする事が少ないし、いつも俺ばかりがみさきの事を大好きなのだと思っていたから尚更。

彼女の言葉にこうも単純に気を良くしてしまう俺も俺だけど、それほど俺はみさきに深く惚れ込んでしまっているのだろう。上唇と下唇の間にスカート裾を巻き込んで、声を必死に堪えているみさきの頬を優しく撫でてやる。普段体温の低いみさきの肌が今は別物のように高い熱を持っている。



――……なんつーか、えろい、よなぁ。



動く度にチラチラと服の裾から覗く乳房に自然と目線が行ってしまう。ぷっくりと膨らんだそれに舌を絡め本能的に吸い付くと、みさきはやや後ろへと背中を仰け反らせるも何とか体制を立て直した。俺の両肩それぞれに片手ずつ置き、首元へと顔を埋めてくる。頭を撫でて名前を呼んでやると返事の代わりに根元をきゅうと締め付けてきた。その締め付けがあまりにも心地よいもので、口からは思わず熱い吐息が漏れ出る。



「ッ、すげー締め付け」

「む……らって(だって)」

「耳元で名前呼ばれるの、弱いよな?みさきは」

「……ッ!」



何も言えず口をパクパクとさせるみさきの口からポロリと服の裾が落ちる。何度身体を交えようと純粋で可愛らしいみさき。そんな彼女の純白を守り続けたいとも思うし、ドロドロに汚してしまいたいとも思う。まっさらなキャンパスノートをクレヨンで一面塗り潰すように、みさきも俺一色に染まってしまえばいい。そうして2人一緒に混ざり合って、これから一生離れる事などないように――
先程みさきが俺にしたように、俺もみさきの首筋に強く吸い付く。己の首筋を鏡無しで確認する事は出来ないが、みさきに口づけられたそこは確かに熱を帯びていた。こんな時に痕1つ残せぬ頑丈な身体を内心恨めしくも思う。俺はみさきを自分の色で染めてしまいたいと思うと同時に、自分もみさき一色に染まってしまいたいと思っていた。引っ掻き痕だろうと何だっていい。少しでも多くのみさきをこの身に刻み付けたい。



――何が何だか分からないくらい、みさきをぐちゃぐちゃにしてしまいたい。

――思う存分突きまくって犯しまくって、

――切り裂き魔だろうとなんだろうと、第三者の入る余地など何処にもないように。



「ひあッ!?」



衝動を抑えきれず、逃げられぬよう両手でがっちりと腰を掴んだ後思いきり腰を打ち付けると温かいみさきのナカがずくんと震え、幾度かの痙攣を始める。肩に置いていた両腕を俺の首に回し必死にしがみつくその様はとても愛らしかった。

こうも密着していると、衝動に対するみさきの反応が自身を通じてダイレクトに伝わってくる。この一体感が堪らなく嬉しくて、みさきと1つになっているのだと改めて実感する事が出来た。これだけではまだまだ足りない。もっともっと混ざり合いたい。俺はみさきにちゃんと掴まっているよう促すと上半身を完全に起こし、向かい合って座るような体位に落ち着いた。これは所謂『前座位』と呼ばれる体位だ。どうやら俺は例の雑誌を何度も読んでいるうちにセックスに関する数多の知識を無意識のうちに習得していたらしい。



「みさき。もうちょい仰け反れるか?」

「? ……ん」



一旦腰を引き、そう告げる俺の言葉に僅かに首を傾げるみさき。しかし言われた通りに動いたみさきの身体は次の瞬間より一層大きく痙攣した。反射的に逃げ腰になるも、それを俺が許す訳もなく。型崩れしそうになったみさきの身体を軽々と片手で支えると、挿入深度を増した結合部を自身でぐるんと掻き回した。同時にクリトリスをも刺激するようで、まるで電流が走っているかのようにみさきの身体がびくびくと脈打つ。



「! ……ッ!?」



自分の身に一体何が起きているのか把握しきれていないのだろう、反応を見ただけでそれだけは十分理解出来た。そしてこうする事でよりみさきを気持ち良くする事が出来るのだと、俺は習得した知識のうちの1つとして記憶していた。当然実演するのは初めてだが。

正直みさきのぎこちない動きだけでは少々刺激に欠ける。気持ちは良いが射精までには至らない。もどかしい気持ちをぐっと堪え、ここは敢えてみさきから求められる言葉を待った。



「そんじゃ、こっからそろそろ本気出すかなぁ。みさきもまだまだ気持ち良くなりたいだろ?」

「……」



俺の顔色を伺いつつも小さく頷くその様は、まるで小動物を連想させる。だけど俺の求めているものはこんな程度のものじゃあない。

自身の尖端をわざと内壁に擦り付けながら、ゆっくりとした動作で秘部から引き抜く。ぬっとりと愛液で濡れたお互いの性器は暫し銀色の糸で名残惜しげに繋がっていたが、やがて呆気なくもプツリと切れた。その過程を見ていたみさきは自分の中から俺がいなくなると同時にいかにも切なげな声を上げるが、やはり自分から求めようとはしない。



「触って」

「!」

「あと、口で。なんでもシてくれるんだろ?」

「それは、シズちゃんが私にメイドやれって言うから……じゃなくて、言うからじゃないですか……」



そう言っている間もみさきは身体をうずうずと疼かせて落ち着きがない。それもそうだ、せっかく気持ち良くなれそうだったところで突然お預けを食らったのだから。しかしそれは俺にも全く同じ事が言える訳で。



「まぁ、みさきがこのまま終わらせてもいいってんなら……」

「! わ、分かりました!分かりました……から」



みさきは言い掛けた俺の言葉を慌てて遮ると再び横になるよう促してきた。要求には素直に従いごろんと寝転がるも、ついさっきまで挿入していたそれは見事に血管が浮き出ており完全に勃起したその様は男の俺から見てもなかなかにグロテスク。女のみさきが戸惑うのも無理ないだろう。改めて俺のを目にした途端目を見張るみさきを見ていてそう思った。みさきは分かりやすい奴だから、表情を見れば何を考えているのかくらい想像するのは容易い。



「!!? (……大きい)」

「言っとくけど、ついさっきまでみさきん中に入ってたんだからなコレが」

「……どうすればいいんですか」

「あー……とりあえず1回抜きてぇ」

「で、でも」



消え入るような声。俺だって男だ、彼女の初な反応を見ているのはそれなりに気分が良い。そんな俺の気持ちを知ってか知らずかみさきは何か言わなければと口を開くが、とうとう言葉が発せられる事はなかった。

俺に股がったまま無言でいるみさき。色々と我慢の限界に達した俺はみさきの後頭部へと片手を伸ばすと、そのままぐいっと己の胸元へ強制的に引き寄せた。心なしか赤いみさきの耳元で甘く掠れた声で囁く。



「お前のせいでこうなってんだぞ。よく見とけ」

「……ッ」

「目ぇ閉じんな。……ちゃんと見ろ」



下方に目をやれば嫌でも視界に映るはずなのに、何を言ってもみさきは頑なに瞼を固く閉じたまま。躍起になった俺は密着したみさきの腹部へと勃起した自身をわざとらしく擦り付け始めた。ぐちぐちと、先走りやら愛液やらで濡れているが為に肌との摩擦音が何とも卑劣だ。触ってくれねぇんなら、みさき使って勝手にキモチよくなってやるからな――なんて、そんな脅迫めいた言葉をも口にした。

子どもを高い高いするようにみさきの身体を両手で持ち上げ、自身が内腿に当たる位置まで持っていく。目前に迫った白い首筋へと本能的に噛み付き跡を残さない程度に歯を立てた。手を離すと同時にぴったりと密着した内腿からは自身を通して柔らかく心地よい感触が伝わってくる。先程していたように同じ動きを再開させると、秘部に近い際どい位置のせいかより一層敏感な反応が返ってきた。やり場のないみさきの手が俺の髪をくしゃりと掴む。



「ふあ、ぁ……やだっシズちゃん。それっ……」

「言う事聞かねぇメイドにはお仕置き、つったろ?」

「わ、かった。何でも、する……するから、ぁ……」

「……言ったな?何でもするって。女に二言はねぇよなぁ?」



正しくは『男に二言はない』だが今はそんな事どうだっていい。今の俺にとって大事なのは、みさきと共有するこの甘い一時だけ――

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