>24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



※裏

(!)露骨描写注意





みさきが考えているよりも俺は優しくなんかない。

みさきの身体を愛してやりたいとも思う。だけど今はそんなんじゃなくて、結局は自分の為なのだ。本当はすぐにでも突っ込んでしまいたいのを必死に堪え、今我慢した分は勿論後々楽しませてもらうつもりだ。ただ1度でも挿れてしまったら最後、俺は本能のままにみさきを犯してしまうだろう。多分、こんなに優しくなんかしてやれない。だから、せめて理性の残る今のうちはたくさんたくさん愛して。事実、よがっているみさきを見ているというのも気分が良いものだ。その反面、快楽と痛みに顔を歪ませたみさきの顔もまたそそるものがある。長いこと焦らしに焦らされた己の欲望の塊――これをぶち込めば、みさきはどう乱れてくれるのだろう。どんな声で鳴いてくれる?今だってそればかりを考えている。



「……ごめんな」



結局俺はそういう奴なんだ。でも大事に思っているのは本当だから。そうしたら自然と言葉が溢れた。俺は多分、許されたいのだ。今自分がしている事を、少しでも正当化される理由を探しているのだと思う。

「んッ! ……ふあ」



本能のままに自身を突き刺し、あまりの心地よさに加減を忘れてしまう。何度もこの感触を恋い焦がれた。

そこは嬉しいくらいに締め付けが良くて、男性経験が少ない事を言わずとも物語っている。この1年間、みさき程の容姿となれば他の男など容易に作れただろうに。もしかしたらみさきも俺の事を考えていてくれたのかもしれない。例えそれがただの都合の良い思い込みだとしても、今はそれでもよかった。なんせ散々抱きたかったみさきと、今こうしていられるのだから。



――何なんだよ、これ……

――気持ち良すぎだろ……



瞳を潤ませ、必死に俺を受け入れるみさきを誰よりも愛しいと思った。誰にも渡したくない、自分だけのものにしてしまいたい。何度願った事か。この気持ちは昔から決して朽ちる事なく今も胸に秘め続けている。

もしこの想いを包み隠さず全て打ち明けたとしたら、みさきは俺をどう思うだろう。重い、と思われてしまうかもしれない。俺だってそう思う。ただ、それだけみさきを好きなのだという気持ちを理解して欲しい。



「は……ッ、大丈夫か?」

「……ん。大丈、夫……」



みさきの身体も長い時間焦らした甲斐あって、挿入まではすんなりといった。しかし俺はこれからというこの絶妙のタイミングで、重要なものをうっかり忘れていた事に気付いてしまう。



「……あ」

「? シズちゃ……」

「ゴム、着けてねぇ」

「……」



だって、俺だって数時間前まではこんな事するつもりなんてなかった訳で。勿論ヤりたくて堪らなかったのは事実だが、みさきの意思は尊重しようと1週間は我慢する"予定"だった。今日アイツと顔を合わせるような事がなければ、俺はこうも乱暴に抱こうとはしなかった……はずだ。正直どうなっていたかは自分にも分からない。とにかくあまりにも考えて無しに行為へと至ってしまったので、帰りに薬局へ寄ろうだとか、そこまで頭が回らなかった。

男ならゴムの1つや2つ常に財布にでも入れとけ、などと今更言われても仕方がない。持っていないものは持っていない。ダメ元で持っているかと聞いてみたところ、みさきは顔を更に真っ赤にさせて首を横に振った。もしここで持っていると答えられても、他に男がいるのではないかと勘繰っていたかもしれないが。


「(……さすがに、中出しはやべぇよなあ……)」



こんな事でみさきに嫌われたくないし。かなり名残惜しくはあるものの、一旦自身を引き抜こうと腰をほんの少し浮かせるが――離れようとした瞬間、みさきのか細い腕が俺の身体を引き止める。思いがけない行動にぎょっとしてみさきを見る。まるで必死に懇願するかのように、瞳に涙を浮かべたみさきが俺の顔をじっと見る。やばい、すげー可愛い。思わず自身が反応してしまう、今から引かなくてはならないって時に。



「や、やだッ。抜かないで……」



俺だってそうしたい。しかし、みさきの事を思えばそうもいかない。



「や、つーか……中に出されんの、嫌だろ」

「え…… ひぁ!?」



ゆっくりと腰を引き、代わりに指で愛撫してやる。このままだとみさきが可哀想だし1度くらいはイかせてやらないと。正直俺は辛いけど、あの温かな感触を直に味わえただけでも……いや、やっぱり最後までヤりたかったけど。指1本じゃあ物足りないだろうと思ったから、2本に増やしてナカを掻き回す。物凄い熱くて、ヌルヌルしてる。みさきも興奮してくれているのだろうか。より激しく掻き回す度に、ぬちゃぬちゃと粘着質な水音が響き渡る。

とろとろとした愛液でたっぷりと潤ったそこは、より奥へ奥へと俺の指を迎え入れ、指の付け根までなんて容易に飲み込んでしまう。



「これ、もっと奥までいくよな?」

「……っゆ、指やぁ……も、止め……!」

「ははッ、確かに指なんかじゃあ物足りなそうだよなあ。この様子じゃあ」



そんな意地の悪い事を口にしたのが悪かったのか、みさきは瞳に溜めた涙をポロポロと溢し始めた。



「!! ちょッ、おま……まじかよ」

「だ、だってぇ……」

「……」



思わず溜め息を溢す。決して俺がみさきをいじめたい訳ではなくて、寧ろ泣きたいのは俺の方だ。焦らされ熱の隠ったこの身体を一体どうしてくれよう。わしゃわしゃと頭を掻く。



「し、シズちゃんが……いい……」

「お前なあ、こんな時にそういう事言うな。まじで止まらなくなる」

「……シズちゃんは、もし子供が出来ちゃったら……私を嫌いになる?」

「!」



子供って……俺の?考えた事もなかった。いくら普通ではないとは言えど、きっとつくろうと思えばみさきとの間に子供をつくる事も可能だろう。しかし世の中にはそういった面倒事を全て女に押し付けて逃げてしまうような最低な野郎もいる。もしかするとみさきはそれを心配しているのかもしれない。内心俺の事をそんな男だと疑っていたのかと思うとショックもでかいが。俺はこんなにも惚れ込んでいるというのに、自ら進んでみさきを捨てたりなんかするもんか。絶対に。

しかしいざ子供の事を考えてみると1つの不安が頭を過った。仮に――もしみさきとの間に子ができたとして、その子供は果たして幸せなのだろうか。みさきに似た子供なら、きっと愛らしい子に育つだろう。しかし俺に似て化け物のような力を授かってしまったら、きっと将来辛い思いをする。この苦しみを味わう人間は俺だけでいい。この痛みを背負う人間は、俺以外にいてはいけないのだ。そう思うと怖くて怖くて――それ以上に怖いのは、俺がみさきの2番目になってしまう事。自分の子に嫉妬するなんて、情けない話だが。



「……嫌いになんて、なれる訳ねーだろ」

「! あッああ……!」



あまりにも可愛らしい事を言うもんだから、もうどうでもよくなってしまった。



「ふぁ…、いきなり……」

「駄目だ、我慢の限界」



何度か確かめるように自身の抜き挿しを繰り返し、更に奥へと沈み込ませる。柔らかくて熱くて、溶けてしまいそうで、挿れただけで達してしまいそうになる。



「俺がそんな奴だって思ってたのかよ?みさきは」

「違ッ……!け、ど……」



必死に言葉を紡ごうとするが、ガクガクと身体を揺さぶられ、思うように声が出せていない。何度夢想した事か、ようやくみさきと1つになれた。それに今は1年前と決定的に違う何かがある。それはきっと相手に対する意識の違いだ。相手に自身の想いを伝え、お互いに相手を想い合い――そんなごく当たり前のような段階(ステップ)を、俺達は傷付く事を恐れたあまりに避け続けてきた。覚束無かった足場が少しずつ埋まってゆくような……こうして長い月日を経た今、俺はようやく固められた地に両足を付ける事が出来たのだ。

ぐちゅぐちゅと様々な汁が泡立ち、排水溝に向かって流れ落ちる。余裕のない表情、ほんの少し熱っぽい吐息。そんなみさきの全てに俺は自然と魅せられていた。この心臓の高鳴りを偽る事など出来やしないのだ。



「好きだって、言ってんだろ……?いい加減、信用しろっ」

「ひッぁ……んン!」



もはや言葉にはなっていないが、みさきは必死に首を縦に振った。こんなに愛しくて胸がはち切れそうだというのに嫌いになどなれはしない。自重など出来やしない。逆に教えて欲しいくらいだ、どうしたらこの気持ちを抑えられるのかを。

今の動きじゃあ物足りなくなって、少しずつ腰の速度を速めてゆく。同時に肌と肌のぶつかり合う音、液体同士が泡立ち混ざり合う音が激しくなる――



「もっと、動くな?」

「待ッ、て……変、なりそ……ッ」

「……あぁ、俺も。気持ち良すぎて、やばい」



――でも、みさきは確かに言ったもんな?

――乱暴にしていいって。



「し、ずちゃ……」

「ん?」



みさきが抱き締める腕の力を更に強め、何かを伝えようと懸命に口をパクパクさせる。初めは上手く聞き取れなかったが、次第に何を言っているのか分かった。

好き――『大好き』、と。



「……俺も、大好きだ」





こんな表現じゃあ笑われてしまうかもしれないが、それは身体と心が1つになれた瞬間で。限界を迎えた俺とみさきはほぼ同時に達した。お互いに身体を強く抱き締め合いながら、暫しその余韻に浸る。浴室の水蒸気と汗で濡れた前髪を掻き上げると、ぽたりと水滴がみさきの頬へと落ちた。気だるいはずの身体が何処か満たされた感じがする。

結局ナカで出してしまった訳で、その証拠に結合部から白濁色の液体が垂れている。しかし後悔はしていない。俺はこれからもみさきを愛してゆく自信がある。



「はぁ……はぁ……」



ぐったりとしたまま口元を手の甲で隠すみさきの手を退け、熱い吐息を漏らすその唇にキスを送る。より深く深く、貪るように。キスで感じてくれているのだろう、繋がったままのみさきのナカがヒクついているのが自身を通して伝わってくる。それがなんだか嬉しくて、呼吸をするのも忘れて夢中になってキスをした。

湯気の立ち昇っていたはずの浴槽の湯は既に生温くなってしまっている。浴室は暖かいというよりは寧ろ寒い。みさきの肌に触れている部分を除いて。ふいにみさきの身体が寒さに震えるのを見て、俺はお互いに繋がったまま小さな身体を抱き上げた。このままでは風邪を引いてしまうだろうから。しかし未だに疼くみさきの秘部は微弱な刺激にも反応してしまうようで。ベッドまで運ぶ際に身体が揺れ、性器同士が擦れる度に、みさきは肩を震わせては小さく声を上げて鳴いた。



「ひぅ……」

「みさきはまだ足りてねーようだな?」

「!! な……ッ!?」



顔を真っ赤にさせるみさきの額にもう1度軽いキスをして、俺は冗談だと言って笑いながら2人一緒に毛布にくるまった。突然煙草が吸いたくなって、ベッド脇の煙草に手を伸ばすが――過去にみさきに言われた事を思い出して止めた。もし肺がんになったらどうするんだ、て。そういえば将来子作りに支障が出るとも言っていたような気がする。

今の段階ではまだ早い気もするし、別に子供が欲しい訳ではないけど、みさきに迷惑は掛けたくないから。

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -