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※微裏

(!)露骨描写注意





3日目の夜――だけど今宵はいつもと状況が違った。



「……我慢、してたの?」



真っ暗な部屋。眠るみさきを背に1人自慰に耽っていた俺の姿はひどく滑稽に映ったであろう。今夜も自分で自身を慰め、何とかやり過ごそうと思っていた。まさかみさきが途中で起きてしまうなんて、想定外の事態にうまく頭が回らない。

胡座を組んで座り込み、扱いていた手を止める。声は確かにすぐ背後から聞こえてきた、振り向くべきか未だに戸惑う。こんな情けない姿、みさきに見られたくなかった。しかし見られてしまった以上今更どんな顔をすればいいというのだ。



「違う。……これ、は」



何が違うと言うのか。言い訳なんて見苦しいだけ、出来るはずがない。毎晩夜を迎える度にみさきをズリネタに抜いていたなんて――そんな卑劣で最低なことを俺はしてきたのだ、まともにみさきの顔が見れない。



「苦しい?」

「!」



いつの間に正面へと回ってきたみさきと目が合う、暗闇の中でもそれがはっきりと分かった。しかし罪悪感からかすぐに目を逸らしてしまう。みさきはこんな俺を見て何を感じているのだろう。驚愕?失望?それとも呆れている?気持ち悪いとでも思われただろうか。

とにかく今のだらしない格好をいつまでもさらけ出しておく訳にもいかず、慌ててズボンに手を掛けるものの、それよりも先にみさきの手が俺の行動を遮った。



「みさき?」

「……」



返事はない、ただ俺の腕を掴んだまま黙り込む。本当はみさきの手を引き離すことなどとても簡単なことなのに、何故か今の俺にはそれが出来ない。声が心なしか上擦る、きっと無意識のうちに緊張しているのだ。

ついさっきまで自慰に溺れていた身体の火照りは未だ冷めることなく、息遣いも荒い。今の状況はかなりマズイ。こんなに盛っている時にみさきに見つめられているなんて、羞恥を感じるよりも強く興奮した。まるで発情期の獣のような身体はみさきの更なる温もりを求め、鼓動は次第に速まるばかり。僅かな理性がかろうじて俺の身体を制する。



「みさき、……頼むから」

「シズちゃん」



身体の震えを抑え込み、絞り出した言葉はあっという間に遮られた。そして次の瞬間、自分よりも遥かに小さなみさきの身体が俺を正面から抱き締める。密着したやんわりと柔らかい感触を直に肌で感じ、思わず心臓がどくんと跳ねる。ヤバい、これはまじでヤバい。

これ以上は――駄目だ、自分でも自分を抑えきれる自信がない。無理矢理引き離してしまおうかとみさきの肩に手を置くが、その拍子に身体がほんの僅かに震えていることに気が付く。心配に思いみさきの顔を覗き込んで見るが、その表情は暗くてよく見えなかった。



「……なんだよ」

「シズちゃん、ここ最近ずっと寝不足だったよね?」

「……」



否定など出来ない、だってそれは紛れもなく事実なのだから。自分の限られた睡眠時間を削ってでも俺はこの行為を夜な夜な繰り返してきた。だけどただの身体目当ての男だなんて思われたくなかったから、本気でみさきが好きだから、少しくらい我慢してみようと本気で思えたのだ。なのに、



「我慢、出来なかった」

「……」

「情けねぇ……」



居心地が悪くなって、それきり顔を背けた。とうとう見られてしまったのだ、自分の情けない姿を。こんな時俺は何をしたらいい?素直に謝るべきなのか、そもそも謝罪する理由は何なのか。様々な思いの中葛藤していると、次第にみさきの身体が俺から離れてゆく。

みさきのぬくもりが名残惜しくもあったが、とりあえずそのことに安堵の溜め息を吐いたのも束の間。だらしなくも先走りで濡れた半勃ちの自身にみさきのか細い指が絡み付き――



「!!?」



とんでもなく大胆なみさきの行動に動揺を隠しきれない俺は思わず身体を引いてしまった。そんな俺もお構い無しにみさきは更なる行動へと移る。なんとそのままゆっくりとそれを扱き始めるではないか。その動きは慣れていないのか若干覚束無くもあるが、みさきに触られているという事実が俺の脳を甘く麻痺させる。

絡ませた指が動く度にネチネチとした粘着音が鼓膜を震わし、微弱な快感と心地よさから身体がゾワゾワと鳥肌を立てる。半勃ちだった自身はすっかり勃起してしまい、みさきはその場で身を屈めると、小さくて可愛らしい舌をチロリと出した。途端に焦燥感と次への期待に胸が自然と高鳴る。



「ッ、おい」

「……」

「まじでそれはヤバいって……」


今の状況に動揺し、柄にもなく本気で焦ってしまう。

これが、本当に本当の最後の理性。みさきの顔をぐいと此方へ向けさせると、そろそろ暗闇に慣れてきたであろう視界には恍惚としたみさきの表情が映った。思わずゴクリと喉が鳴る、たまに見せるみさきのこういった表情が堪らなく色っぽい。俺は1つ深呼吸をして何とか気持ちを落ち着かせると、出来るだけ感情を表に出さずに言葉を紡いだ。



「どうしたんだよ、お前」

「……」



相変わらずみさきは何も答えない。ただ黙って俺の目をじっと見つめる。それはまるで俺を誘っているかのようで、そんなことは絶対にあり得ないのに、俺の目にはそう映ってしまった。

思い違いだってことは分かってる、それなのに俺の身体は馬鹿正直に興奮を高める。不意にみさきの親指が亀頭を掠め、口からは言葉の代わりに熱い吐息が漏れた。好きな女に扱かれているというだけでこんなにも気持ちいいだなんて。両目を細め、身体の中の熱を少しでも吐き出そうと幾度も浅い呼吸を繰り返す。火照った身体が堪らなく熱い。



「ッ、……はぁ」

「気持ちいい?」

「……あぁ、」



恐る恐るといった感じで問い掛けてきたみさきの言葉に、俺は最も短い言葉で返した。事実、オナニーなんかよりも遥かに気持ちいいのだ。もう止めさせようという意思は既に消え失せていた、ただ本能のままに更なる快楽を求め、みさきの頭を撫でてやると同時に先を促す。もっと、もっと。

みさきは再び視線を勃起したものへと向けると、それを両手で掴み、まるで棒アイスを舐めるように舌先で先端をペロリと舐めた。やはり覚束無いみさきの舌使いでは達するのに少々物足りなさを感じたが、みさきが懸命に舌を使うその姿が何よりも射精意識を高める初めのきっかけとなった。



「……くッ!」



俺はみさきの髪をぎゅッと掴むと、射精意識に思わず両目を閉じた。次の瞬間びゅくり、と前触れ無しに吐き出された精液がみさきの顔にかかる。1度達したにも関わらず俺の自身は衰えを見せない、寧ろ頬を精液で汚したみさきの姿に堪らなく支配欲を感じた。ぞくぞくとした感覚に、口端からは自然と笑みが零れる。

ぞくぞく、ぞくぞく、あの狂気にも似た感覚が蘇る。



「はッ、……なぁ、みさき。俺、まだ全然足りてねーんだけど?」

「……ん」



意地の悪い言葉に反論することなくコクリと小さく頷くみさき。その従順な態度を褒めるように、俺は前髪を掻き上げるとみさきの額にそっと口づけてやった。

みさきの頬と同じく精液で濡れた俺の自身は先程の先走りも加え、暗闇の中でもテリテリと光っているのが分かる。みさきは初め精液特有の苦味にほんの少し顔をしかめるが、暫く舌で竿部分を往復した後、更に大きく膨張しきったそれをパクリと口に含んだ。しかしみさきの小さな口には入りきらず、せいぜい先端部分までが限界のようだ。



「(すげ、きもち……)」



口内はまるで膣内のように生温かくて、ねっとりとまとわりつく唾液の感触が心地よい。本当はもっと決定的な刺激が欲しかったのだけれど、今は普段見ることの出来ないみさきの姿をこの目に焼き付けておきたかった。何があったのか、今夜のみさきはいつになく積極的だ。フェラなんて、いつの間に知ったのだろう。

舌で先端をぐりぐりと刺激し、口に含めきれていない部分は強弱をつけて扱く。



「ッ、……つーか、どこで覚えてきたんだよ。こんなこと」

「考えたの、どうすればシズちゃんを気持ち良くしてあげられるのかって……」



もしかしたらみさきには全てお見通しだったのかもしれない、みさきなりに罪悪感を感じていたのかもしれない。しかし結果的に俺が純粋な彼女を汚しているのだという事実は確かなもので。それに対する反省なんてものはない、ただ淫らな悦びを感じていた。そして俺は思い出す、俺自身1年前から既に壊れていたのだということを。置き去りにしてきた感情は以前よりも増して膨れ上がる一方で。

ただ覚束無かったみさきの舌使いもやがて的確なものへと変わる。舌先がイイところに触れる度に俺は無意識のうちにみさきの頭を片手で固定し、口にはしないがそこをもっと刺激して欲しいと無言で訴える。そして口で奉仕しつつも顔色を伺うように上目遣いで俺をチラリと見るみさき。その姿があまりにも可愛くて可愛くて、下半身に熱が溜まってゆくのを感じていた。



「……ッみさき、まじでもう出そうだから……」

「ん、……いいよ」



出して。そんな可愛いことを言うもんだから、もう1度達してしまうまでにそう時間は掛からなかった。口の中に出してしまったことへの罪悪感や、今まで溜め続けてきた欲が吐き出された解放感やらがごちゃ混ぜになって、あまりの気持ち良さに頭の中がぼんやりする。みさきは大量に注ぎ込まれた精液に驚いてしまったのか、涙目になりながら口内に残った精液をコクリと飲み下した。お世辞にも美味しいとは言えないだろうに、そんな必死な姿が更に愛しいと思えてしまう。

俺はみさきの口端に付いた精液を手の甲で拭ってやると、そのまま衝動的に抱き締めた。



「今のみさき、すげーエロい」

「ッ、だ、だって……シズちゃんに何かしてあげたかったんだもん。いつも私ばかり色々なもの、貰ってばかりだったから……男の人ってこういうの、好きなんでしょ?」



そういうこと言うの反則だろ、しかも上目遣いで。そう思ったものの口にはしなかった。だってこれ以上興奮してしまったら、いくらみさきに口で奉仕してもらおうと物足りなくなってしまう。今だってまだまだ物足りないけれど、そう我儘ばかり言っていられない。

1度この快楽を知ってしまったらまた味わいたくなってしまう、病み付きになってしまう。そんな強欲な生き物が人間だ。まるで麻薬のようだと思った。自分は限りなく人間から遠ざかった存在だと思っていたけれど、嫌なところばかり人間らしい。だけど、本当は嬉しかったのだ。みさきがここまで俺に尽くしてくれるだなんて、俺のことを考えてくれていただなんて――



「……つか、本当にこれが初めて……だよな?」



まさか俺以外の男にも、なんて考えてしまうあたり俺はやっぱり独占欲が強い。しかしみさきは疲れてしまったのか、瞼を閉じてそれっきり目を覚ますことはなかった。この様子じゃあ当分は起きそうにない。ほんの少し気掛かりだったけれど、俺はみさきを抱き締めたまま静かに瞳を閉じた。

話の続きは、また明日。

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