>喧嘩休戦協定事項
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ねぇ、シズちゃん。ちょっとばかし俺の提案を聞いてくれるかい?おっと、とりあえずその手に持っているひしゃげた道路標識を降ろそうか。ほら、俺も今は見ての通り、ナイフなんて持っていないんだからさ。喧嘩はひとまず休戦って事にしておいて、今はお互いの利益になる話をしようよ。

ぶっちゃけた話、シズちゃんってなまえの事好きでしょ?なまえを夜のオカズに抜いちゃったりもするんだろう?実は俺もそうなんだよねぇ。……話は最後まで聞きなよ。俺は何も恋のライバル宣言をしに来た訳じゃあないんだよ?言っただろう、お互いの利益になる話だって。それはきっとシズちゃんにとっても悪い話ではないと思うんだ。ただし重要なのは、俺等が協力し合わなくては成功しえないという事、これだ。だけどシズちゃんと俺にしか出来ない事でもあるんだよ。



「どう?乗ってみない?」



♂♀



呼び出された先、私は目の前の信じられない光景に思わず絶句した。もしかしたら明日は雨――いや、槍が降るのではないか。だって目を合わせる度にナイフやその他もろもろが飛び交う程に互いを嫌い合っているあの2人が、何も手にしていない無防備の状態で並んで座っていたのだから。これはもう天と地がひっくり返るくらいでは済みそうにないような気がしてきた。

私が部屋に入ってくるなり臨也が片手でちょいちょいと手招きをする。顔に貼り付かせた笑みが何だか怪しい。しかし隣にシズちゃんがいるにも関わらずこうも純粋な笑みを浮かべる彼が珍しくもあり、どちらも私の良き友人である2人が仲良くしてくれることは私にとっても喜ばしいことだ。



「どうしたの変な顔して」

「ううん、別に。ただ、2人が並んで座っているのが珍しいかなぁって……」

「そ?俺達はとっても仲良しだよ。ね、シズちゃん」

「お、おぅ……」



何だか腑に落ちないような表情を浮かべつつも、シズちゃんが首を縦に振る。臨也曰く、ついこの間和解条約?を結んだばかりなのらしい。とりあえず今のところ、この場が戦場と化する心配はないだろう。2人と向き合うように反対側へ腰を下ろし、目の前のテーブルの上にお菓子や飲み物が置いてある事に気が付く。



「? 誰かの誕生日パーティでもやるの?」

「まさか。だって俺の誕生日はとっくに過ぎちゃったし、シズちゃんとなまえはまだ先の話だろう?2人は早生まれだからね。今日は3人で朝まで楽しもうよって話。たまにはこういうのもいいと思わないかい?」



確かに2人が仲直りした後だからこそ話せる内容もあるだろうし、こうして3人で集まる機会もなかなかない。友達と朝まで語り合うだなんて、高校時代の修学旅行以来だ。何より臨也がシズちゃんの誕生日を知っていたという事実に少しばかり驚いたが、私は特に気にすることなく目の前のジュースの蓋を開けた。飲んでいい?と聞くと、臨也が笑顔でどうぞ、と返す。私の大好きなミルクティー。

臨也に手渡されたガラス製のコップに注ぎ、一気に一杯を飲み干す。多分喉が渇いていたのだ。しかし口を手の甲で拭おうとしたその瞬間、身体がドクンと大きく脈打つ。次第に速まる心拍数、籠る熱、息苦しさに視界が涙でボヤけてゆく。



「ほら、シズちゃん」



臨也がシズちゃんに何やら合図を送る。するとシズちゃんは無言のまま私の背後へと回り、両腕を捕らえて羽交い締めにした。背中にぴったりと密着したシズちゃんの身体が熱い。ただでさえ女の力が男に勝る訳がないというのに、自販機でさえも軽々と持ち上げてしまうシズちゃんから逃れるなんて、尚更無理な話だ。



「よかったね、シズちゃんの理不尽な馬鹿力にも使いどころがあって」

「うっせぇな。なまえが関わってさえいなければ、手前なんかとは絶対に協力しねぇんだからな。分かったら早く……次、進めろよ」

「はいはい」



2人の会話の意味が理解出来ない。その間にも私の両足は大きくM字に開脚させられた。閉じようにも両足の間に割って入り込んできた臨也の身体がそれを邪魔する。ちょっと待って、と慌てて抗議の声を挙げるが、私の意見なんてお構い無しに2人は着々と準備を進めていった。懸命に身を捩らせるが、どう足掻こうと男女の力の差なんてものは歴然としている。

私が動けないことをいい事に、臨也は服を捲り上げると露になった両胸をやんわりと揉み始めた。ただ揉むだけの行為はやがてエスカレートし、先端を刺激するような性的なものへと変化してゆく。そして下着の隔たりさえ邪魔に思ったのか、それさえもあっという間に取り払われてしまった。



「ちょっと、臨也!」

「あは、先っぽこんなに固くしちゃって……感じてるの?かーわい」

「ち、違……!も、ほんとにやめ……ひゃあッ!?」



全神経を臨也の動きに集中させていた矢先、不意打ちのように予想だにしなかった刺激に思わず声が大きくなる。シズちゃんが背後から私の肩に顔を埋め、そこに舌を這わせ始めたのだ。

それだけではない。舌は滑らかに肌を滑り、首筋から耳元までを往復する。そして耳たぶを軽く甘噛みしたかと思うと、耳全体を生暖かい口内へと導いた。ちゅくちゅくと唾液の奏でる卑劣な音が鼓膜を震わせ、まるで別の生き物のように時折長い舌先が耳の中にまでにゅるりと侵入してくる。



「ッは、なまえは耳がすげー弱いみたいだな?」

「や、やだァ……み、耳元で、喋らないで……!」

「ちょっとシズちゃん、なに勝手に楽しんでる訳?今は黙ってなまえの身体動けないように拘束しててよ」

「いいだろこのくらい、順番とか面倒臭ぇし……つか、なんか布とかねーの?」

「布?タオルでもいいなら……て、何考えてんのさ」



シズちゃんは臨也から薄い地の高級そうなタオルを受け取ると、あろうことかそれで私の視界を塞いだ。目隠しをされ、何も見えない状況に不安だけが募ってゆく。そして怖かったらごめんな、なんて突然優しい声で囁かれるもんだから、反論するはずの口からは熱い吐息しか出てこなかった。



「こっちのが、興奮する」

「はッ、悪趣味」

「とか言って、そのいかにも怪しげなもん手に持っている手前にだけは言われたくねぇよなあ」

「シズちゃんだってなまえの反応が楽しみなクセに」



怪しげなもの――その正体が分からないまま、再び快感が私を襲う。臨也が突然胸の突起を強く摘まみ上げたのだ。痛いくらいの強過ぎる刺激は私の思考回路を狂わせ、正常な判断すらままならない。右手の親指で突起を何度も押し潰しながら、もう片方の突起はチロチロと舌先で突っつく。それに対抗するかのようにシズちゃんも首筋に舌を這わせ始め、前後から2人に攻められるという板挟みの状況下、逃げ道のない快感にただただ甘い声で鳴いた。

こんな体勢だから、当然逃げられない。しかも視界が妨げられている為、否応なしに私の身体は普段よりも敏感になっている。まるで暴力のような快楽を一方的に与えられ続け、嫌でも秘部が潤ってゆくのが自分でも分かった。下着は既にぐちゃぐちゃに濡れ、本来の下着の役割など果たせていない。その上濡れた布は肌に引っ付いて密着し、寧ろ履いていることが不快だ。



「あぁッ!やだ、シズちゃ……も、離して……お願い、だから……ぁ!」

「……〜〜ッ、臨也!」

「分かってるよ。……ていうかさ、なまえの可愛い姿見てたら、俺の方もそろそろ限界……」



急かすような余裕のないシズちゃんの言葉に臨也は一旦動きを止めると、私の下半身から下着以外全てを剥ぎ取ってしまった。耳元でゴクリと喉を鳴らす音が聞こえる。たくさん濡れているせいで、外の空気に晒されたそこはひやりとした。



「うッわ、なにこれ、すっごいびちゃびちゃじゃん」

「うぅ……やだっ、見ないで……」

「あーもう、本当に可愛いなあ」



臨也の顔がゆっくりと近付き、私の唇に己のそれを衝動的に重ね合わせようとする――が、あと数ミリといったところでシズちゃんの片手に遮られる。暫く無言のまま睨み合う2人。シズちゃんが私の腕を解放したこの隙に逃げられるかもしれないという甘い考えが頭を過るが、いずれにせよ2人にぴったりと挟まれたこの状況を脱さない限り、到底逃げ出せそうにはない。

それから口喧嘩を始める2人だが、愛撫の手だけは止まることを知らない。まるで競い合うように、次第に手つきが荒くなっていく。



「……ちょっとシズちゃん。手、邪魔なんだけど」

「ぁあ?手前、一体誰の許可得てなまえにキスしようとしてんだよ」

「なにそれ、どうして俺がシズちゃんの許しを貰わなくちゃならない訳?必要性を感じないなあ。いいから早く、手退けなよ」

「ふざけんな、手前が退きやがれノミ蟲野郎……!」

「ち、ちょっと!2人共落ち着い……ひぅッ!?」



もはや行為に夢中な2人の耳に私の声は届かない。不意に下半身に触れた冷たい感触に一瞬身体が強張るが、それを見えない視界内に映して確かめられるはずもなく、その得たいの知れない物体は下着を少しズラしたところからスムーズに私の中へと侵入してくる。入口付近で浅い出し入れを数回繰り返し、程よく慣らした後に一気に挿入された。



「ん、ぅ……〜ッ!?」

「うわ、こんなのも入っちゃうんだ?流石に無理かなって思ってたけど、案外やれば出来るもんだねえ」

「……おい、どさくさに紛れて手前なに勝手に物事進めてんだ?」

「だってシズちゃん、なかなか聞き分けてくれそうにないんだもん。とりあえず今のうちから慣らしておいた方がなまえへの負担も減るだろうし。まぁ、シズちゃんがなまえとヤらなくてもいいって言うなら、そこまでしなくてもいいと思うけど。どうせ力加減なんて出来っこないでしょ?」

「……」



ここまでくると、これから自分がどうなってしまうのかということくらいは容易く理解出来た。嫌々と首を振りながら抵抗するが、時既に遅し。空気が小刻みに揺れ動き、ヴヴヴ……と小さなバイブ音と共にそれは私の中を刺激し始めた。瞬間、急激に熱を帯びたそこを中心に疼きが身体中へと駆け巡る。自分で抜こうにもそれすら叶わず、せめて声だけは我慢しようと下唇をギュッと噛み締めるが、どう意識しようと全てを抑えきれる訳がないのだ。



「なまえ。声我慢すんなって」

「だ、って……変な声、出ちゃ……、んむ……!」



必然的に開いてしまう口の隙間から指を2本突っ込まれ、まるで口内を激しく犯すようにぐちゃぐちゃと水音を響かせる。口端からは飲み込めなかった唾液が垂れ、それを臨也がペロリと舐めた。私の両手は既に拘束されてはいなかったけれど、どちらにせよ完全に脱力しきった身体では何も出来やしない。シズちゃんの左手がバイブを掴み、わざと中の壁に擦り付けるようにゆっくりと動かす。そしてイイところを少しでも掠めた瞬間、電流のような強い快感に、身体がビクンと一際大きな反応を見せた。

それに気付いたのであろうシズちゃんがそこばかりを重点的に攻め続ける。自然と身体は快楽から逃げようとし、口からは拒絶の言葉しか出ない。相変わらず容赦ない2人の愛撫は私の身体を限界まで追い詰め、そして本当の本当にイきそうになった瞬間――まるで何事もなかったかのようにピタリと止まってしまった。



「ぁ……ッ」

「ねぇ、イきたいの?イきたいのなら、素直に言葉にしてごらん。可愛く言えたらイかせてあげる」



声音こそは優しいが、それはまるで悪魔の囁きのようだった。中途半端に火照った身体は正直辛い、だけど自分ではどうすることも出来ない。その時背中に何か熱くて固いものが当たったような気がして、その正体が分かるなりカァッと顔が熱くなるのを感じた。きっと彼はわざとなのだ。その先を急かすように、シズちゃんが耳元で名前を呼ぶ。

時刻は22時、夜が明けるにはまだまだ早い――

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テーマ「人外ファンタジー」
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