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※裏
観覧要注意
「ン、……ふゥ」
耳を塞ぎたいくらいに恥ずかしくて、まるで自分のものではないような甘ったるい喘ぎ声が部屋中に響き渡った。先程絶頂を迎えたばかりだというにも関わらず、容赦ない指使いが私の火照った身体を攻め続ける。必要以上に愛撫されたアソコは、見なくてもグショグショに濡れているのが分かる。それを見られているのが何だか物凄く恥ずかしくて、尚も両足を閉じようと試みるがシズちゃんがそれを許さない。私の両足の間に割り込むようにして、自らの身体を使って妨げる。
結果、どう足掻こうと、私はシズちゃんの身体が邪魔で両足を閉じる事が出来ないのだ。せめてもの反抗で、シズちゃんの身体を両足で思い切り挟んでやるが、全くの効果ナシ。挙句の果てに、片足をシズちゃんに持ち上げられてしまった。
「ひゃ……ッ!」
「まったく、なにしてんだか」
「は……反抗」
「ばぁか、効かねーよ」
シズちゃんは面白くて堪らないといった様子で、私の片足をブラブラと揺らす。その度に足の付け根からは溢れ出る愛液がクチャクチャと擦れる音が響き、私の抵抗は更に自らの羞恥心を煽る結果に終わった。
「やッ、やだって!」
「みさきが変な事してるからだろ」
「別に変な事じゃ……!」
羞恥で涙が出そうになる反面、どこか身体が何かを欲しいと疼いているのを感じる。感じた事のない疼きに戸惑いつつも、更に敏感になった身体へと立て続けに与えられる快感に耐えた。
スルリとシズちゃんの右手が太股を滑り、秘部全体を確かめるように触れる。ツプリと指先が中へと侵入し、久々に感じる感触に思わず抑えていた声が洩れる。
「ひぁ……ッ」
「もう、大丈夫だよな」
アソコの穴を広げるように指で馴らした後、突然小さな袋を取り出すと私の口元へと持っていき、切り込み線の入った端の方をかじる様に促す。そのまま片手で破り、袋から何かを取り出すと何やらゴソゴソとし始めた。辺りが暗くて何をしているのかは見えない。
ゆっくりと中から指が抜かれ、一瞬だけ気が弛む。そんな私に追い討ちをかけるように、次の瞬間、指とは違う熱いモノが秘部へピタリと宛がわれた。思わず息を呑む。触れた部分がジンジンと熱い。そして気付く。先程開けた袋の中身を。
――どうしよう。このまま続けてもいいのだろうか。
――どうしようどうしよう怖い怖い恐い恐い……!
「……本当に嫌なら、いいんだぞ?」
私の感情を感じ取ったのだろうか。おもむろにシズちゃんが呟いた言葉は、意地悪なんかじゃなくて、ひどく静かで優しい声だった。
「……?」
「負担かかるのはみさきだし……無理はさせたくねぇし。俺が勝手に欲情しただけで、みさきが処理に付き合う義務はねぇもんな」
――……助かった?
安堵の溜め息を吐く一方で――心のどこかで、それを残念に思っている自分がいる。この先をシてみたいと期待している自分がいる。
自分からそれ以上を求める事なんて1度もなかったのに、まるで自分が自分じゃないような気がした。火照った身体が更なる快感を求めて疼く。もしかして、これが所謂『欲情』とかいうやつなのだろうか。
「やっぱり、俺……」
私から離れようとしたシズちゃんの服の袖を、私はほんの少しだけ引っ張った。恥ずかしいという気持ちは薄れていった。シズちゃんの目をじっと見つめる。ああ、やっぱり私は欲情しているのだ。欲しくて欲しくて、堪らなく苦しい。今自分が味わって、初めて実感した。今までシズちゃんは私の知らない所で、いかに我慢していた事を。
男の人が感じる性欲はとても汚らわしいものだと思っていた。……そうじゃなかった。人間が美味しそうな食べ物に食欲を向けるように、人間が性欲を抱く事もごく当たり前の事なのだ。
「……別に、いい……よ」
「! ……まじか」
「うん。……や、優しめでよろしくお願いします」
それからプイ、と顔を背けて、いつか漫画で読んだような照れ臭い台詞を口にしてみる。普段の私なら絶対に言わないような台詞を。
しばらくポカンとしていたシズちゃんは、すぐに我に帰ると「出来るだけ努力する」の一言。曖昧な返事に口を挟もうとした瞬間、何か質量のあるモノが自分の中へと入って来るのが分かった。同時に鋭い鈍痛が電流のように下半身に走る。
「痛……ッ!?」
「ばか、力抜け」
感覚からして指ではない事は確かだ。その証拠にシズちゃんの両手は、私の両腕を強くベッドに押さえ付けている。辺りはすっかり暗くなっていた。怪我をして、ここに連れて来られてどれだけの時間が経ったのか。時計なんてものは見えない。視界に映るのは、見た事もないくらいに余裕のないシズちゃんの表情だけ。
秘部に宛がわれた熱いソレは、しばらく入口付近をクチャクチャと水音をたてながら往復した後、更に奥深くへと無理矢理侵入してくる。ギシギシと軋むベッド。体験した事のない圧迫感と痛みに、生理的な涙が頬を伝った。それをシズちゃんがペロリと舐め取る。
「痛かったら言えよ。すぐにやめっから」
「……ふ、」
「……挿れるぞ」
痛い。痛い。本当は物凄く痛い。だけど止めて欲しくなかったから、必死に口を閉じて声を圧し殺した。そうしている間にもシズちゃんがどんどん入って来る。それは指なんかよりも、ずっと太くて大きくて、とてつもなく熱い。今の時点で「やっと半分入った」とシズちゃんから聞いた時には全部挿れるのは無理なんじゃないかと本気で思った。
「きっつ……」
「あッ……、ま、待って。今まだ動かさな……で」
「悪ぃ。無理だ」
「や……ッ、ちょ……!無理!全部入らないって!」
痛かったら言えと言ったのはそっちじゃないか、と反論する余裕は皆無。シズちゃんが腰を押し進めるに連れ鈍痛が更に痛みを増し、思わず両目をぎゅっと瞑る。シズちゃんのモノが強く脈打っているのが、私の身体を通して伝わってくる。
するとシズちゃんは私の上半身を突然抱き上げると、お互いが向かい合う形へと姿勢を変えた。重力に逆らえない私の身体は、どんどんとシズちゃんのモノをくわえ込んだまま、重力に従い深々と沈み込んでいく。
「! ……は、ぁ……ッ」
「ほら、全部入っただろ」
ニヤリと悪戯っぽく笑いながらシズちゃんが私の顔を覗き込む。一方私は全身へと駆け巡る快感に、身体の震えが止まらなかった。自然と肩が小刻みに震え、正面から必死にシズちゃんの身体へとしがみつく。
「て、余裕ねーよな」
「ぁ…、ふ……」
「ふは、小動物みてぇ」
シズちゃんが腰をほんの少し動かしただけで、結合部分からやらしい水音が響く。「……動くぞ」その言葉を機に、シズちゃんは私の腰を両手で掴むと、勢いよく下から突き上げてきた。
ズン、と大きな衝動で呼吸がうまく出来なくなる。シズちゃんは私を抱き締めなかった。それは自分の理不尽な力で、私を傷付けないため故の行動なのだと知っていた。しかし逆にその優しさが私を不安にさせる。
「みさき」
「あ……ふぁ、あッ」
「みさき、……みさきッ」
私の名前を連呼しては、両手を後ろについたまま腰だけを機械的にひたすら動かす。時折舌を使ってはブラウスの隙間から溢れる胸の突起を舐め上げたり、私の身体の至る所にできた傷口を消毒する様に舐め続ける。服を全て脱がされなくて良かった。昔の傷跡を見られなくて済みそうだから。
ざらついた舌が傷口に触れる度に、その部分が火傷みたいに熱くて痛くて。傷口に直接舌で触れられるのは正直痛いけれど、その刺すような痛みさえも快感に変換されてゆく。いつの間にか血は止まっていた。
「ぁン、……シ、ズちゃ」
彼の名前を呼ぶ。ピクリと反応するシズちゃん。本当の名前はもう既に知っていた。だからこそ、敢えてこう呼んだ。今はこの名で。
「シズ、ちゃ……シズちゃん……ッ」
「……」
「ひぁッ!ン…シズ……、ッ!?」
……ガリ、と、肉を引きちぎる音がした。
少し遅れて痛みが伴う。鼻をつく鉄の臭い。血の感触が肌の上を伝ってゆく。首元に噛みつかれたのだと分かっても尚、それでも私は彼の名前を呼ぶ事を止めない。止められない。
「煽んな……ばか」
「んンッ……シ、ズ……」
「……」
「……ふぁッ…、あ」
「……もーどうなっても知らねぇからな」
シズちゃんは両腕を私の背中へと回すと、力強くきつくきつく抱き締めた。肌には爪を立てられて、新たな紅くて綺麗な傷跡が白い肌に浮かび上がる。それはまるでキスマーク。当分消える事のない所有の印。いずれかの指の爪が傷口を更に深く抉り、抱き締める腕の力が私の身体を痛いくらいに締め付ける。それでも腰の動きが止まる事はなく、水音が絶える事もない。不思議と痛くはなかった。むしろ痛みを塗り替えられる程に、与えられる快感が遥かに勝っていたのだ。
何度も意識がとびそうになった。その度に痛みで意識を取り戻す。その繰り返し。卑劣な水音と荒い息遣いが頭の中でごちゃ混ぜになって、今まで自分の中で溜まり続けて来た悩みだとか疑問だとか、もう何もかもがどうでもよくなってくる――…そんな時だった。
「気持ちいい?」
「(……え?)」
すぐ近くで声が聞こえたような気がして、シズちゃんの方をチラリと見る。シズちゃんは行為に夢中のようで、全く気付いていないようだ。声の主は続ける。
「貴女の身体は痛みすらも快感に変わるの。だから例えどんなに歪んだ愛情でも、貴女になら受け止められるわ」
――どういう意味?
問い返そうと口を開いた。しかしそれも虚しく、口を開いた途端に出てくるものは甘い声と吐息だけ。ここには私とシズちゃんしかいないはずなのに、その声は確かに存在した。快楽に溺れそうになりながらも必死にその声へと耳を傾ける。
「どうしてか、分かる?それは貴女が彼を深く愛しているからよ。愛してるんでしょ?そうなんでしょ?それ以外考えられないわ!」
「貴女は何を学んだの?人の愛し方を、その目でちゃんと見ていたでしょう?節穴だなんて言わせないで!何をすべきかは言わずとも分かっているはずよ」
「だったら彼を――」
「――みさき?」
名前を呼ばれてハッとした。気付いたら声は聞こえなくなっていた。シズちゃんが動きを止めて心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「ど、どうしたの?」
「それはこっちの台詞だっての。途中から全然反応してくれねーし」
「……ちょっと、考え事してて」
「ふーん」
特に問い詰める事はなくても、これは明らかに不機嫌な時の態度だと私の経験がそう告げる。咄嗟に謝ろうと口を開くよりも先に、熱っぽい舌の感触を感じる。
「だったら……他の事考える余裕がなくなるくらいに激しくシてやるよ」
シズちゃんが私の腰を掴む。「次、余所見したら許さねぇ」それからは声の主を考える余裕なんて与えてもらえる訳もなく、私は再び快感の渦へと身を委ねる。
「私の事、忘れないでね」
最後に、そう聞こえたような気がした。頭の中に直接話し掛けるような、頭痛を伴う不思議な感覚だった。