>42
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



※自慰行為あり





今日は久々に仕事がオフだった。それでも相変わらずみさきは何処かへ出掛けるようでつまりは1人でお留守番って訳か。みさきのいない部屋の中をぐるりと見渡す。

だけど、今日はそれでもいいと思った。いや、個人的な欲を言えばみさきとずっと一緒にいたいのだけど、今はまともに顔が見れない気がしたからだ。手に残る微かな感覚が、やけに……あまりにも鮮明過ぎて。みさきの胸のやわらかさとか、熱とか、感触とか、感覚とか、



「(ヤバい)」



物凄く、興奮した。俺だって男だ。アダルトな雑誌やDVD――所謂エロ本やAVだって見た事もあるし、そういった類に興味がないと言ったら嘘になる。だから当然欲情だってするし、オナニーだってするし、気持ちよくもなりたい。

――…が、



「……はぁ」



まじかよ。ズボン下の違和感に思わず溜め息。無意識に頭を抱え込む。健康な男子ならば誰もが起こる、ごく自然的な現象だ。俺もまだまだ若いって事か。しかも最近ヌいてねぇせいか、相当ヤバい。今までも同じ事が言えるが、みさきがいる傍で自慰行為なんて、とてもじゃないが出来ないし、独り暮らししていた時とは訳が違う。

みさき自身、そういった事に関しては俺以上に疎そうだからな……この前の会話から思うに。



「(……今なら、いいよな)」



みさきも、いないし。ズボンのチャックを全開まで下げて、たどたどしく膨脹した自身を取り出した。

最悪だな、俺。好きな人をオカズにしようとしている訳だ。しかも御天道様がさんさんと真上に位置している、この真っ昼間にさ。まるで警察の目の前で犯罪を犯そうとしている気分だ。



「……ッ」



先走りで濡れたソレに指先だけでそっと触れる。ピクリと小さく揺れる両肩。「あの後もしも最後まで続けていたら」と、ありもしない妄想を頭の中で創り上げる。虚しい行為だとは、自分でも十分理解しているつもりだ。

勝手に創って勝手に欲情して――ああ、身体が堪らなく熱い。こういうのをムッツリって言うのかな、なんて。今はどうでもいい。



「……は……ッ、」



火照った身体が疼く。凄ぇ熱い。同時に息遣いも荒くなる。素直に敏感に反応してしまう身体が憎たらしくて罪悪感を感じる反面既に諦めている部分もあった。

そうだ。俺の身体が言うことを聞いてくれた事なんて今まで1度だって無かったじゃないか。何を、今更。



「……あ、ハァ」



あのやわらかさを、熱を、感触を、感覚を、手に残った余韻から思い浮かべる。みさきの可愛らしい声だとか、真っ赤に染めた頬だとか、それだけでイってしまいそうだ。

堪らなくなって、俺は自身を両手で包み込むようにして一心不乱に扱いた。急激な快感に思わず身体が後ろのソファへと倒れ込む。ソファのクッションにみさきのにおいが染み付いているような気がした。



「ッ! ぅ、あ……ッ」



こんなに人を愛しいと感じたのは初めてだから、だからこそ「好き」という感情が1度爆発して暴走し始めてしまうと、自分でも歯止めが効かなくなる。

想像の中でみさきを犯す。こうすればみさきはどうやって乱れてくれるのか、だとか。例えそれが妄想だろうと夢だろうと、そんな事はどうだって良いんだ。



「……みさき……」



ポツリと口から漏れた声は、俺以外誰もいない個室にやけに大きく響き渡った。

みさきのにおいを鼻いっぱいに吸い込んで、瞳を閉じれば脳裏に浮かぶのは可愛くて愛しいみさきの姿。



「みさき…ッ、……はぁ……みさき……!」



何度も何度も夢想した。

俺以外の誰の目にも触れさせたくない、誰のものでもない、俺だけの、みさき。



「……く……ッ!」



――ごめん、みさき。

――でも、俺の身体が言う事を聞いてくれねぇんだ。



吐き出された熱を両手いっぱいに感じながら、乱れた呼吸を整えると俺は静かに天井を仰いだ。

疲労感と罪悪感。後悔。欲望。たくさんの感情が入り交じったぐちゃぐちゃの頭が何だかやけに重たい。



――…情けねぇな、俺。



声には出さずに呟いた。何だか泣きたくなってきた。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -