いっすんはやと

語り手:さんがく
聞き手:みんな




ワイ、おらんやんか

しかたねぇだろ

…………せやな


むかーしむかしあるところに、やすともおじいさんと、じんぱちおばあさんがいました。
ふたりにはこどもができなかったので、かみさまにおねがいすることにしました。

「でこぱちババアと、りこんできますよーにィ」
「やすとも!むかしばなしだぞ!そういうのはやめろー!」



百歩ゆずっておばあさん役はよしとしよう。しょっぱなからオレの扱いがひどいとは思わんかね?


かみさまはねがいをききとどけ、このふうふにこどもをさずけました。
ところが、そのこどもは、ちっともおおきくなりません。そのかわり、ごはんをやたらたべます。

そこで、こどものなまえを“いっすんはやと”と、なづけました。



! 一寸はやと!
今日はオレが主役なのか。



ちいさないっすんはやとでしたが、やすともおじいさんとじんぱちおばあさんは、いっすんはやとをいっぱいかわいがりました。

「オレいっすんのほうがよかったヨォ………なんででこぱちとふうふなわけェ…」
「げんきだせよ、やすとも!」
「なんだ!ふまんか!オレはせいべつまでかえられてるんだぞ!」

めちゃくちゃよくたべて、ちいさいけどちからもちになったいっすんはやとは、みやこにいきたいと いいました。
やすともおじいさんと、じんぱちおばあさんは、さいしょはとめましたが、いっすんはやとのつよいおもいをきいて、みやこへおくりだすことにしました。



はやとに任せて大丈夫かなァ……

何はともあれ、一寸はやとは無事に旅立ったのだな。
これでまた、やすともおじいさんと2人とり残されてしまうおばあさんのオレ、がんばれ…。



「みやこは、おいしいものがいっぱいあるっていうからな!」
「そのためかよォ…………」
「もとのおはなしでは、“ぶし”になりたいんだろう!ごはんじゃないぞ、いっすんはやと!」
「えっ…………そうなのか…………」



……言わんこっちゃねーよォ!!
何しに都に行くんだオメー!!



じんぱちおばあさんは、いっすんはやとのためにふくをしたてて、はりのけんと、おわんのふねと、おはしを1ぽん、おわんのふねをこぐためにわたしました。

「ふく…………ハデだなぁ」
「なにをかくそう!まきちゃんが、わざわざいろをきめてくれたんだぞ!まきちゃんが!あの!まきちゃんが!」



一寸はやと「……なんということでしょう…匠の技です………(仕上がった服に袖を通しながら)」

一寸はやとがそんなに服の色気に入ってくれるとは思わなかったっショ。

一寸はやと「色がとても…派手です…(きびだんごを完食しながら)」


みやこで、おいしいものをもりもりたべてくらすよていだった、いっすんはやとは、すこし、いくきをなくしました。
ふくがハデすぎて、“これでいいのかなぁ”と、おもいつつ、おわんのふねにのりこんで、たびだちました。

やすともおじいさんと、じんぱちおばあさんは、“これでしょくひがうくなぁ”と、おもいました。


いっすんはやとは、ふねにのって、みやこへやってきました。とてもおなかがすいています。

“おなかすいたなぁ…”といいながらあるいていると、目のまえに、とってもきれいなきものをきたひとがあらわれました。

「わわわわわ、だいじょうぶですか!?」
「ご、ごはんを…」
「ご、ごごごはんですねっ!」

きれいなきものをきた、おひめさまのなまえは、さかみちといいました。
さかみちは、いっすんはやとを手にのせて、おやしきへつれかえって、ごはんをいっぱいたべさせてあげました。



ぼ、ぼぼ、ボクが、おひめさま!?ひぇえ…!そんな、そんな………いっすんはやとさん、大丈夫かなぁ…


おやしきでのさかみちは、とってもやさしく、ちいさないっすんはやとに、“すむところがないなら、ここにすみましょう!”と、いってくれました。

「みやこのおいしいものをたべるってゆめ、かなっちゃった。へへっ」

いっすんはやとは、さかみちといっしょにすごし、ほんをよんだり、ヒメヒメをうたったりしました。

でも、いっすんはやとのゆめは、りっぱな“ぶし”になることです。そのためには、やっぱりおおきなからだになりたいなぁと、おもいました。

「えっ。オレこのままでいいんだけどなぁ…」



一寸はやと「オレごはんもいっぱいで幸せだから、お話ここまでにしないか?(もりもり)」


あるひさかみちは、じんじゃにおまいりをするため、たびにでることになりました。いっすんはやとも、いっしょです。

しかし、どうちゅう、おににおそわれてしまいました。

「サカミチィよこしやァ…………」
「あ、あきらくん」
「おにのあきらくんやでぇ」



ボク今日は鬼の役なん……?鬼のあきらくんって響き、ちょっとかっこええなァ…


ここで、やすともおじいさんと、じんぱちおばあさんをみてみましょう。

「もういいだろう!でばんはおわっただろう!おばあさんはもういいだろう!?」
「こっちのせりふだヨ!ぼけなす!!」

なかよしですね!



おじいさんはもういいんじゃナァイ!?

お、おばあさんはもういいだろう!

まねすんな!

まねするんじゃない!

オメーだろ!

おまえがな!


さかみちをきにいっている、おにのあきらは、さかみちを、なんとさらおうとしたのです。

「きにいってへんわ。はなしのながれや」

そこにわってはいったのが、いっすんはやとです。

「まて!さかみちくんをかんたんにはわたさないぞ!」
「ヘェ。ちっぽけないっすんはやとに、なにができるんかなァ…?プクク」

おにのあきらは、いっすんはやとをひょいっとつかんで、ぱくん!とたべてしまいました。

「い、いっすんはやとさん!」
「サカミチィ、もうたすけもあらへんでぇ」
「わーっわーっ!!」

さかみちの、だいピンチです!



鬼のあきらクンめちゃくちゃ強いで……いっすんはやとクン食べてもた…


そのときです!
おにのあきらくんのおなかから、なにか、こえがきこえてきます。

「あるるるるるるるるる!!」
「な、なんや!?」
「こ、このこえは、いっすんはやとさん!?」
「あるるるるるるるるる!!」
「いたっ!いたいでぇ!」
「あ、あきらくん!?だ、だいじょうぶ!?」



あるるるる!!


「あるるるるるるるるる!!」
「いたいでぇ!!」
「あ、あきらくーん!しっかりして!」
「…サカミチィ、ここはおはなしやから、ボクゥのしんぱいしたらあかんやろ…」
「えっ!あっ!そ、そっか!!」

おにのあきらは、あまりのいたさに、いっすんはやとをはきだしました!



……さかみちは、あいかわらず甘いなァ。いちいち鬼の心配してたらあかんで…

そ、そうだよね…!ごめん……

お姫さまの役やったらお姫さまらしく、いっすんはやとクンを応援せなあかんで

う、うん…!いっすんはやとさん…!!


「あるるるるるるるるる!!」

はきだされたいっすんはやとは、目がカッとひらかれて、したもべろーんとでて、“あるるる!”といいながら、まちばりのけんをかまえています。
そのただならぬようすのいっすんはやとをみて、おにのあきらは、

「まいったわぁー、いたいわァ〜」

そういって、にげていきました。



勝ったぞ!一寸はやとが、鬼のあきらくんを倒したぞ。
……鬼くらい大きいと、針でさされても痛くないのかなぁ…


痛い言うとるやろ

!? せ、せりふじゃなくて…!?ほんとに痛いの!?

…キミは鬼役のボクを何やと思ぅとるんや。痛いわ

そうなのか…ご、ごめん…てっきり蚊に刺された程度かと…


「さかみち、おめさんだいじょうぶか?」
「あっ、はい!だいじょうぶです!」

もとにもどったいっすんはやとが、さかみちをしんぱいしてかけよると、おにのあきらがにげていったところに、なにかがおちていました。

「あっ!これは!うちでのこづち ですね!」
「?たべられる?」
「むりだとおもいます」



打ち出の小槌は食べられないのか……


「これをつかえば、いっすんはやとさんも、おおきくなれますよ!おおきくなーれ!おおきくなーれ!」

さかみちは、いっすんはやとにむかって、うちでのこづちをふりました。
すると、なんということでしょう!いっすんはやとは、りっぱなおとなのおおきさになったのです!



うちでのこづち、すごい!


「いっすんはやとさん!かっこよくなりましたよ!」
「ほんとか?やった!これで、みやこのおいしいもの、いっぱいたべられる!」
「そうですね!」

それから、いっすんはやととさかみちはなかよくくらし、うちでのこづちからでたおかねを、やすともおじいさんとじんぱちおばあさんに、おくりました!



やすともおじいさんや、息子のいっすんはやとから仕送りが

へえ

もっと何か!!!ないのか!!!あと役に入れ!!!!

え、えぇえ……あ、アイツモリッパニ、ミヤコデクラシテルンダナァー…

へ、へたくそか…オレのおばあさんぶりを見習え…


そのご、いっすんはやとは、おにみたいにつよいりっぱな“ぶし”、そして、“おおぐいせんしゅ”になりました。
たくさんおいしいものをたべて、いっすんはやとは、とってもしあわせになりました!



武士兼大食い選手という職業についたんだな。一寸のオレ…


めでたし、めでたし!

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