じんぱちデレラ

語り手:さんがく
聞き手:みんな




じんぱちデレラァ…?またしょうもない話をォ……


むかしむかしあるところに、じんぱちデレラがいました。

じんぱちデレラは、ぼろいおようふくに、ぼろいくつに、ぼろいカチューシャをしています。
やさしいおかあさんがいなくなって、まいにちままははにいじめられて、そうじやせんたくをしているのです。



待て。オレはこのような装いはしていないぞ。断じて!
オレのような美形ねこが、いじめられてボロい格好をするなど、ありえんからな!ありえんからな!!
これはさんがくによるフィクションだからな皆!!



ままははのなまえは、ゆうすけといいました。

「ゆうすけ!そうじできたぞ!」
「つぎはメシっショ」
「できてるぞ!ゆうすけ!あそぼう!ゆうすけのいうことなら、なんでもきくぞ!!」
「それじゃイミないっショ…………」

こんなかんじで、じんぱちデレラはまいにちいじめられていました。

じんぱちデレラには、ぎりのきょうだいもいました。
えーっと、さかみち、しゅんすけ、しょうきちといいます。このぎりのきょうだいからも、じんぱちデレラはいじめられていました。

「ああああああのじんぱちさんんんん!い、いじめ…………これ、これからいじめますっ!!」
「いじめって、なにすればいいんだ?」
「あたらしい“かねもうけ”とちゃうん?」

と、こんなかんじでまいにちいじめられていました。



わざわざ宣言してしまうさかみちくんの素直さに免じて、よくわからないままいじめに加担するしゅんすけくんも、もはやオレに興味すらないしょうきちくんも、オレは笑顔で許そう。


そんな じんぱちデレラをなぐさめる、おともだちもいます。それは、やねうらにすんでいて、じんぱちデレラをたすけてくれる、あきらくんです。

「プククク。なんやそのカチューシャぼろいでぇ。ねぐせもついとるゥ…………」
「ねぐせじゃなーい!」

と、こんなかんじでなぐさめてくれます。



は、はじめてまともにいじめらしい言葉を受けたぞ…負けるなオレデレラ……
これがなぐさめだと…?いじめではないか…先ほどの3兄弟のほうが、よほど優しいではないか…



あるひ、おしろで“ぶとうかい”があるときいて、ゆうすけはさかみち・しゅんすけ・しょうきちに、おうじさまとけっこんできるように、おしゃれをさせました。

「ゆうすけ!!おうじより!このオレのほうがまちがいなく、びけいだぞ!ゆうすけェェーー!」
「うるさいっショ…はなしすすまないっショ!」
「あの…ゆうすけさん、じんぱちさんは…」
「おいていかねェと、はなしがすすまねーっショ…」
「せやで、さかみちくん!ここは、おにになるんや!」
「おに…う、うん!ボクがんばるよ…」
「おうじって…オレたちオス…」
「しゅんすけ、しーっショ」

そんなかんじで、じんぱちデレラをおいていきました。


おしろのぶとうかいにいきたいじんぱちデレラは、なきだしてしまいました。

「ゆうすけーー!オレもつれてってくれーー!ゆうすけーー!ゆうすけのライバルはオレだーー!」
「プククク。カチューシャぼろいからや」
「わらうなー!わらうなあきら!」

あきらがひっしに、なぐさめています。



出演シーンのボクめちゃめちゃかっこええな。ボクの役は意地悪な兄弟の役…ってところやろか?

これはどう考えてもいじめであると、オレは思うのだ…
だがこれはフィクション…そう、どんなにあきらが意地悪をしてきてもこれはフィクションなのだ…がんばれオレデレラ…


う、うそやろ…じんぱちクンを助ける役やと…どうみてもボクこれ…いや…もう…ええわ……


そのときです!
じんぱちデレラの目のまえに、なにかをたべながらやってくる、かげがあらわれます。

「ム、はやと。なにしてるんだ?」
「おめさんに、まほうをかけにきたぜ!(ばきゅん)」

まほーつかいの、はやとさんです。はやとさんは、ないているじんぱちデレラに、まほーをかけてあげる!といいました。



ようやくオレが登場したな。


「じゃ、じんぱちデレラ。まほうかけるぞ!おやつもりもりおなかいっぱい、じんぱちデレラがぶとうかいにいけるふくに、なーれ!」

そういってはやとが、ねこようチーズをふりまわすと、なんということでしょう!
じんぱちデレラは、ひかりかがやくうつくしいねこになったのです!

きらきらひかるおようふくに、ガラスのカチューシャ。じんぱちデレラは、とってもきれいになりました!

「じゃ、あきらくん。じんぱちデレラをぶとうかいへつれていくんだ」
「ハァ!?ボクがすることちゃうやろ!?うまにでもするきなん?」
「おんぶ」
「ハァ!?」
「だからおんぶ」
「キモ!」



はやとの素晴らしい働きにより、オレデレラは無事に本来あるべき美しい姿に戻ることができたわけだが……
ここは、かぼちゃの馬車ではないのか…?
オレは…オレは、あきらの背に乗らねばならんのか……



あきらくんが、ぶとうかいへおんぶでつれていくことを、ぜんりょくできょひしたので、はやとはじんぱちデレラに“じてんしゃ”をあたえました。

ものすごいスピードで、じんぱちデレラはペダルをこぎました。



自転車になったらなったで、ちょっとさみしいものだな…おぶってくれてもいいだろう……ぐすっ…

ぜったいにイヤや

架空の物語のオレデレラが、そこまで拒絶されるとは思わなかった……


おしろにつくと、ぶとうかいがはじまっています。
じんぱちデレラがなかへはいると、みんながじんぱちデレラをみます。

「フフン!びけいねこだからな!しかたあるまい!」

ドヤがおのじんぱちデレラのまえに、すっとだれかがたちました。

「なんでオレェ!?さんがくにやらせろよォ!!」

おうじさまです。



ムッ…このオレを差し置いて王子様役をやっているのは誰だ!(ご立腹)


はぐきをだして、おおごえをだしているやすともおうじは、おうじにみえませんが、おうじです。


オレはこの衝撃の展開により、人生とはこんなに厳しいものなのかと涙さえ滲んでくる。

なんでオレ、王子なのォ…

お前はまだいいっショ、なんでオレが意地悪な継母やらなきゃならないんショ…。
じんぱち全然いじめられてる感ねぇし…これじゃ意地悪な継母にならないっショ!


アッ…ほんとだァ…オメー継母なんだァ…


「どうするんだ、やすとも!おどらんと、はなしがすすまんぞ!」
「おどりィ!?おどったことネェヨ!!」
「“ぼんおどり”ぐらいできるだろう!」
「そ、それならァ…………」

やすともおうじと、じんぱちデレラは、たのしそうにダンスしています。

「あっ」
「ッテェ!!あしふんでんじゃネェヨ!ぼけなす!」



♪相手がダンスもまともに踊れんやすともじゃ〜〜ぽいずん〜

は?

ぽ、ぽいずん…


やすともおうじと、じんぱちデレラは、とてもたのしそうです。

「さんがくゥ!!こうたい!!こうたいしろォ!!!」

やすともおうじは、たのしそうです!

「ムシしてんじゃねーぞォ!!!」



オレ さんがく ゆるさない


「オレだってさんがくのほうが、まだ!こうはいとしても、かわいげがあって、まだマシだ!」
「オレだってオメーはねがいさげだヨ!!」

やすともおうじと、じんぱちデレラは、とてもたのしいじかんをすごしていました。

が、そのときです。
0じをつげる、かねのおとがきこえてきました。
じんぱちデレラは、おもいだしました。

『おめさんのまほうは、0じのかねのおとがなりおわると、きえてしまうからきをつけるんだぞ(ばきゅん)』

たいへんです。じんぱちデレラは、かえらなくてはなりません。

「ヤッターーー!かえれるぞ!」
「オー、かえれかえれでこぱち」
「でこではないな!」

かえろうとするじんぱちデレラを、やすともおうじがおいかけます。

「だりィ〜」
「まじめにやれ!」

じんぱちデレラは、いそいでかいだんをおりますが、そこでガラスのカチューシャをおとしてしまいます。
それをひろうまもなく、じんぱちデレラはペダルをこいで、おうちにもどりました。

おうちについたとたん、じんぱちデレラのまほうはとけてしまい、もとのぼろいふくになってしまいました。
じんぱちデレラは、このたのしいおもいでをむねに、あしたからもがんばろうとおもいました。

「カチューシャなくしたん?プククク。さらにねぐせひどくなっとる…プククク」
「やめろー!」



盆踊りしかしてないぞ…大丈夫かオレデレラ…
大変だ!カチューシャがないじゃないか、死活問題だぞオレデレラ…!



つぎのひ。
やすともおうじは、くにじゅうに、“このカチューシャがにあうひとをおよめさんにする”と、おふれをだしました。

じんぱちデレラのおうちにも、カチューシャをもって、やってきました。
さっそく、さかみち・しゅんすけ・しょうきちが、カチューシャをつけることになりました。



さかみちくんは、オレほどではないがカチューシャが似合っていると思うぞ。オレほどではないが!

ひゃい!?そそそそそんな!カチューシャはボクには似合いませんよ!髪もみじかいし!

そうか?似合うと思うんだが…この黄色はどうかね?

うちのさかみちに変なモン広めんなっショ!

へ、へんなもん…


しかし、さかみち・しゅんすけ・しょうきちには、カチューシャがぴったりあいません。

「じゃー、かえるネェ」
「おー。おつかれっショ」
「あ、あの…ゆうすけさん、ここでじんぱちさんが…」
「……でてこないっショ…………」
「ど、どうしましょうか…………」
「…………しかたねーなァ…」



一国の王子の嫁を決めるためなのに、この流れ作業感はいかがなものかとオレは思うぞ。
もっとこう、“他にこの家に娘は?”とか、絵本では言ってたはずなのに…探してすらくれん…だと…



「あー!オレがカチューシャつけちゃうっショ〜!オレがおしろでくらすから、ここにはもどってこないっショ〜!!」
「ゆ、ゆうすけさん!?」
「まぁ、みてるっショ」
「ならーーん!ならんぞゆうすけー!ならんならん!だんじてならーーーん!」

もうダッシュで、じんぱちデレラがとびだしてきました。



ほら見ろ、つられてるっショ。ちょろいっショ。

ほ、ほんとだつられてる…オレデレラ…


やすともおうじは、じんぱちデレラにカチューシャをつけました。

「ほらよ」
「やめろー!やすとも!カチューシャにはな!!つけかたがあるんだ!」
「あっそォ」

こうしてじんぱちデレラは、やすともおうじとともに、おおきなおしろにくらし、そうじやせんたくもしなくてよくなり、しあわせに くらしました!

めでたしめでたし!

「これだと、ゆうすけとくらせなくなってしまったではないか!!ならん!!ならんぞ!!!さんがく!!ならんぞ!!!」



オレデレラは怒っているようだが…これはハッピーエンドなのだろうか…


おわり!おはなし担当はオレ、さんがくでした!

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