今はこれが精一杯な小話2つ

◆誠凛の昼休みの話。



 昼休み、チームの絆をより強固なものにしたいという理由から昼食を一緒に食べようと屋上に集まった誠凛バスケ部の面々。ただ単にチームメイトとお喋りしながら楽しく昼食を食べたいだけなのだが、年頃の純情ボーイはそう簡単に素直な気持ちを口には出来ないのである。朗らかな笑顔で可愛い後輩や頼りになる同輩達を眺めつつ、幸せを噛みしめる木吉鉄平は別として。
 そんな木吉、みんなが昼食を食べ終わった頃からそわそわと落ち着きがない。なぜなら、昼休みの残りの時間を使って彼の有名な『だるまさんがころんだ』を一緒にやりたいからだ。しかし「だるまさんがころんだやろうぜ」なんてバカ正直に言ってしまえば、日向順平辺りから「誰がやるかダアホ」とツッコまれ、そのままうやむやにされかねない。
 どうすれば……、木吉は考えた。そして一分を待たずに閃いた。
 唐突に始めたらいいんじゃないか、と。
 木吉はおもむろに立ち上がり、出入り口のある壁とお見合いをするかのように向き合う。すっと大きく息を吸い込むと青空に向かって、力の限り言葉を紡いだ。

「だるまさんがころんだっ!!!!!」

 ばっと後ろを振り向くとみんなはそれぞれ自分が一番かっこいいと思うポーズを取り、ぴたりと静止している。しかも後輩である一年生五人組はギニュー特戦隊のスペシャルファイティングポーズなのだ。
 よく見るしかあるまい。
 木吉はみんなの方を向くと腰を下ろし、しげしげと後輩達のポーズを観察し始めた。どうやら配役はグルトを黒子テツヤが。ジースを降旗光樹、リクームを河原浩一が。バータを福田寛がやり、ギニューを火神大我がやっているようである。なかなかの配役だ。それに指の一本一本まできちんと伸ばされており、ポーズに切れがあった。
 きっとバスケの傍ら、今日この日の為にとポーズ練習をして来たに違いない。後輩達の並々ならぬ努力を感じ取った木吉はとりあえず、集合と個人の写真を気の済むまで撮り、そして再びじっと、それはもう穴が開くほどじっと後輩達を見つめた。
 決してこの後どうすればいいか分からないからとかではない。ほんとだから。だって次はまた後ろを向いて「だるまさんがころんだ」って言うんでしょ。ほら、知ってるじゃん。でもそれだと面白くないじゃん。だから考えてるんじゃん。

「でもそうすると昼休み終わっちまうな」
「んなことたどうでもいいから早よ続きやれやダアホ…!」

 真剣な表情で悩む木吉の頭を日向が軽く叩いた。

「日向アウトだぞー」

 その様子を見ていた伊月俊が声を掛ければ、日向はまた木吉の頭を軽く叩く。すると耐えきれなくなったらしい他のチームメイトが笑い出す。

 真っ青な空の下、仲間と共に過ごす最高の昼休みの話。






◆学園/ハン/サムのパロ的な夢を見た伊月が日向に話を聞いて貰ってるってよ。



 今日、夢を見たんだ。
 朝起きて、支度して、学校に行くだろ。
 そしたらさ会う人みんな、顔がハンサムだったんだよ…。

「は、ハンサム…?」

 ハンサム。

「ハンサムって、え、黄瀬みたいな?」

 と思うだろ。いや確かに黄瀬みたいなっていうかもうあれは本人だし、ハンサムなんだけど、どうもオレの知ってるハンサムとは何かが違うというか。逸脱してるというか、斬新というか、納得したというか。
 いや夢の中では全然気にしてなかったんだけど、こう、違和感があるんだよ。ずっと何かな何かなって思っててさ。
 んで日向の顔見てようやく分かった。ハンサムが寒そうに判押した。判、さむっ!

「お前のダジャレのが寒いわ」

 しょぼん…。

「………で、なんだったんだ?」

 …顎だ。

「ん?」

 ものすごく顎が、鋭利だった。

「んん??? なんだって…?顎?」

 そう、顎。普通は日向みたいな丸みを帯びてる感じの顎だろ。夢の中の顎はさ、すごく長くて、スタイリッシュだった。
 でもさ、みんなハンサムだったよ。
 たぶんみんな元がいいからだと思う。赤司とか黄瀬とか青峰とか紫原とか緑間とか、高尾とか。氷室とか…。

「止めろ想像する止めろ」

 黄瀬はさ、「黒子っちに触るなっス」って言って顎で攻撃してた。
 武器にもなるんだな、顎って。

「だから止めろって言ってんだろ!本人の前で意味もなく噴いたらオレただの不審者じゃねーか!!!!」

 いいじゃん一緒に不審者しようよ!やだよオレ一人で笑いを堪えるなんて!
 だから日向、オレと、噴き出そう。思い出し笑いしよう。

「やだよ!!!!!!!」

 な ん で だ よ !
 もう日向なんて知らないから!
 「真ちゃん迎えに来たぜ」って言いながらハンサム顔で決めてる高尾を思い出して本人の目の前で噴き出しても絶対助けてやらないからな!「やれやれなのだよ」って言いながら眼鏡くいってしてるハンサム顔の緑間を思い出して本人の目の前で噴き出しても知らないから!

「妙に具体的なのが腹立つ!!」

「あれ、誠凛の日向サンと伊月サンじゃないっすかー!」
「どうも」


―――真ちゃん迎えに来たぜ。
―――やれやれなのだよ。


「「ぶふぉっ!!!!!!!!!!」」
「「?!?!!」」






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