伊月俊クイズ

※伊月クイズで全問正解するのは誰?アンケートの結果に基づいた赤月、日月、黛月、高月、黒月中心伊月総受けなお話です。
※キャラ崩壊と伊月愛で出来た、特に盛り上がるところのない尻すぼみな落ちすらない残念なお話です。









「「好きなら知っていて当然!! 全問正解当たり前伊月俊クイズっーー!!」」

 どこからともなく拍手と歓声が聞こえ、軽快な音楽が流れ出す。パッと明かり灯れば、部屋の全体像が浮かび上がる。
 攻撃トゥエンティファイブとかなんとかいう某クイズ番組のような装飾が施された部屋。その部屋の中央には黒、黄、赤、白、緑と色分けされた席に解答者らしき五人の青少年達が自信満々の様子で並ぶ。
 一人、緑の解答者席に座る真ん中分けの青少年だけは笑いを堪えるかのように頬を膨らませ、小刻みに震えている。そんな彼を心配している者は一人もいないので大丈夫なのだろうと思う。
 ちなみに先程聞こえた拍手や歓声はただの効果音で観客は一人もいない。
 部屋の向かって左側には司会者用であろう席が用意してあり、既にそこには怪しさが滲む男二人組が佇んでいた。
 一人はワイシャツの上からピンク色の法被を着て、額には鉢巻きを巻き、昔の腕利きスナイパーや刑事が掛けていたようなサングラスを身に着けた蜂蜜色の髪の長身の男。手には大きめのピコピコハンマーが握られている。もう一人は髪にお花のヘアピンを付けた灰色のブレザーを身に纏ったサングラスを掛けた墨色の髪のこれまた長身の男。なぜかスラックスの上にスカートを履いていて、変態さを匂わせていた。
 法被男は舌打ちを一つして、嫌そうにしながら口を開く。

「さあ、始まりました。全問正解当たり前伊月俊クイズ。司会はオレ、宮地兄弟のお兄ちゃんの方、清い志と書いて清志と読む方の宮地清志と」
「アシスタントの森山由孝(子)でお送り致しますっ」

 法被男こと宮地清志は棒読みで、ヘアピン男こと森山由孝(子)は裏声で紹介を済ませる。と、どこからともなく「ぶふぉっ!」と噴き出すような声が聞こえてきた。

「うるせーぞ高尾!!」
「ぶふっ……すいまひょぇっいって!!」

 宮地は青筋を浮かべ、緑の解答者席に座る笑い袋こと高尾和成に注意する。直後、高尾の頭に金タライが落ちてきたのだ。これには他の解答者達も驚き、司会者とアシスタントへ視線を向ける。
 その視線を気にすることなく女子アナばりの笑顔を浮かべた森山は言った。

「宮地の機嫌を損ねても金タライが落ちてくるから気を付けろよー」

 すると白の解答者席に座る死んだ魚の目をした男が赤の解答者席に座る赤髪の男に嫌そうな目を向ける。

「おい赤司、お前なんてもんを設置してんだ」
「さあ、何のことかな?」

 赤司と呼ばれた青少年は赤と橙のヘテロクロミアを眇め、意味深げに口角を上げた。それを見た他の解答者達は「赤司だもんなー」と遠い目をしてしまう。

「このままじゃ埒があかねーからさっさと解答者の紹介と説明済ませるぞ」

 ピコピコハンマーを一鳴らしした宮地は面倒臭げに解答者の紹介を始める。
 黒の解答者席に座るのは影の薄さに定評のある黒子テツヤ、黄の解答者席に座るのは眼鏡に何らかの機能が付いている疑惑がある日向順平。黒子と日向は共に伊月と同じ学校、部活であり、その強みは大きい。楽に全問正解してしまいそうだ。
 赤の解答者席に座るのは赤司征十郎、赤と橙のヘテロクロミアを持つ赤髪の男。白の解答者席に座るのは死んだ魚の目の男、黛千尋。赤司と黛の伊月との接点といえば、一度対戦経験があることだろうか。黛はともかく、赤司は赤司だからという理由だけで全問正解しそうで怖い。
 緑の解答者席に座るのは伊月と同じ鳥の目持ちの高尾。ハイスペックと名高い彼は一体どこまで正解数を伸ばすことが出来るだろか。見物である。
 次に森山がクイズの説明を始めた。クイズは全部で十問、伊月が好きなら全問正解して当たり前の簡単な問題ばかり。一問正解する毎にしゅんくん人形が渡され、不正解すれば金ダライが降ってくる。

「は?!え、不正解しても降ってくるんすか?!」
「説明はまだ終わってねーぞ日向」
「あ、すいません……」
「素直に謝った日向にはきよしくん人形やるよ」
「ありがとうござい……これ清志くんじゃなくて木吉くんじゃねーかよ!!!! 清志くんから木吉くん渡されたけどこれめちゃくちゃ反応に困るやつやん!!! どうすりゃいいんだちくしょう!!!!!」
「「ぶふぉ……!!!!」」

 一連のきよし違いに吹き出した高尾と黛には金ダライが落ちてきた。ゴンッと鈍い音を響き、二人は痛みで悶絶しているが森山は気にすることなく説明を続ける。
 しゅんくん人形を十体集めた全問正解者には伊月俊と一日過ごせる権利が貰えるらしい。きっと余裕で全問正解して、みんなで過ごすことになるだろう。

「ところで伊月先輩はどこですか?」

 ここにはいないみたいですが……と黒子が呟く。

「別室で犬と戯れてる」

 宮地はずれたサングラスを直しながら言った。その様子を思い浮かべた解答者達がほっこりしたのは言うまでもない。
 ぶっちゃけ犬に成り代わって伊月をペロペロしたり、ハスハスしたいとか思ったが言葉にしてしまうと躊躇なく金ダライが降ってくるので口は噤んでおいた。

 という訳でようやく伊月俊クイズが始まるのだが、大人の事情によりここから先はダイジェストでお送り致す。


「第一問、伊月家で飼っている犬の名前はなに?!」
「まるおです」
「まるおだな」
「まるおだ」
「まるお」
「まるおでしょ」
「正解はまるお、全員正解!」
「間違えてたら轢くつもりだったのに……チッ」
「宮地舌打ち自重しろ」
「森山の指図は受けねーよ」

「第二問、伊月の部での役職は?」
「副主将と会計です」
「副主将と会計。いつも助けられてる」
「貴重な主将のデレ、頂きました」
「黒子くんだまらっしゃい!!」
「副主将と会計だ」
「オレの嫁」
「副主将……うそ、会計もなの?!」
「正解は副主将と会計! という訳で高尾と黛は不正解!」
「お前ら何間違えてんだよ!!」
「あっいやちょっと待って宮地さんまだ心の準備がっ!!!」
「オレは金ダライを落とされキャラじゃなっ!!!!!」

「第三問! 伊月がミニバスを始めたのは小学何年生?」
「小学……三年、ですか?」
「小学二年」
「ファッ」
「小学二年。残念だったねテツヤ」
「越後製菓」
「小学二年! これ正解でしょ!」
「正解は小学二年生! ちなみに回想時に着ていたビブスの番号は7番だぞ」
「つう訳で黒子と黛は不正解だな」
「待って下さい待って下さい! こういうのに慣れていないのでまだ心の準備がっ!!!」
「おい二回連続とかふざけんっ!!!!」

「第四問、単行本二巻第8Qにて伊月俊とはっきりと名前が出たがその時に言ったダジャレはなに?」
「……パンダのエサはパンダ」
「サロンパスでナイスパス」
「サロンパスでナイスパス」
「サロンパスでナイスパス」
「……アマリリスが数えたあまりイス」
「正解はサロンパスでナイスパス! 黒子と高尾は不正解!」
「二回連続なんて嫌でっ!!!!」
「旧型ざまぁ」
「いやです宮地さん高尾ちゃんの頭っ!!!!!」
「あ? なんて?」
「……頭、われちゃう」


「ハッ……犬の可愛さに射抜かれた!キタコレ!」


「第五問! このステーキ、ステキ。このダジャレを言ったのは何巻何Q?」
「黄瀬君との試合の後だということぐらいしか分かりませんっ」
「2巻第10Qだな」
「2巻第10Q」
「2巻第10Q……が正解だと赤司が言ったから」
「2巻第10Q人事を尽くして天命を待つ!」
「正解は2巻第10Q、という訳でなんと黒子のみ不正解!」
「黛さんのは不正解じゃないんですか?」
「余計なことは言ってるが正解してるからセーフだな」
「理不尽な世界でっ!!!!!」
「躊躇いがないですね宮地さんは」
「赤司にだけは言われたくねーよ」

「第六問、ノーカンウトになった幻のシュートはどの試合の何Q目?」
「陽泉戦第3Q終了時です」
「陽泉戦第3Q終了時だ」
「18巻160Qやっててよかったよの陽泉戦第3Q終了時」
「……陽泉戦第3Q終了時」
「陽泉戦第3Q終了時っすね」
「正解は18巻160Qやっててよかったよの陽泉戦第3Q終了時。うわ、赤司の答え完璧じゃん」
「ドヤ顔うぜー」
「宮地さん赤司のドヤ顔によくいちゃもんつけれますね」
「オレだからな」


「この犬、ワンダフル!キタコレ!」


「第七問! 鷲の目が初登場したのは3巻23Q……ですが、鷲の鉤爪が初登場したのは何巻何Q?」
「21巻187Q……です」
「21巻187Qだな」
「21巻187Qの仲間がいるでしょーがだね」
「21巻187Q」
「21巻186……しんだ」
「正解は21巻187Q仲間がいるでしょーが、だ。高尾、生きろ」
「うわーん!! 宮地大明神様高尾ちゃんにご慈悲を……!!」
「高尾、お前……あ、手がすべった」
「ゲブシッ!!!!!!!」

「第八問、表紙登場回数は?」
「6回です、か?」
「特に目立ったところもなくここまできたぜ7回!」
「ファッ?!!」
「日向さんと同じく。7回」
「ボク、オワタ」
「旧型ざまぁ、7回」
「黒子生きろ。7回」
「正解は29巻の後ろ姿を伊月だと仮定して7回! ちなみに背表紙に登場したのは12巻になるぞ」
「可哀想だが、これもルールなんでな」
「っ……あれ? あ、もしかして、この感触はピコピコハンマーですか……?」
「慈悲だよ」
「宮地さん……トゥンク」

「第九問、洛山戦……30巻第272Qすべてを懸けろ!!にて伊月がスティールして「走れ!!」と叫んだのは試合終了間際、残り何秒?」
「10秒です」
「10秒」
「屈辱的な10秒」
「10秒とかマジか」
「10秒とかウソでしょ」
「正解は10秒! 全員正解!」
「とりあえず森山に落としとくか」
「なんっ!!!!!!」


「犬の居ぬ間に、キタコレ!」


「さあ、これが最後の問題だ! 第十問!…第一回〜三回の人気投票。三回分を足した総得票数は何票?」
「越後製菓!」
「越後製菓!!」
「2424票」
「越後製菓!!!」
「越後製菓!!!!」
「正解は、955+618+851で2424票! 赤司のみ正解!」
「赤司君空気読んで下さっ!!!」
「最後の最後でまちがっ!!!!!」
「らっ!!!……舌噛んだ」
「モゲラッ!!!!!」



 結局、全問正解したのは赤司ただ一人だけだった。当たり前過ぎる結果に他の解答者から反論の声が上がったが、それを華麗に黙らせるのが赤司であり。いい笑顔で金ダライを落とすのが宮地である。
 特に盛り上がるところもなく、未だに森山がスラックスの上からスカートを履くという謎が残っているが、その辺はあやふやなまま伊月クイズは幕を閉じた。

「クイズの意味とは」
「それを考えたら負けですよ高尾君」



+++



 ――こんなに犬と遊ぶのは久しぶりな気がする。
 伊月は手短な子犬を優しい手つきで撫でながら、満足げなため息を零す。子犬達に混じって遊び回るテツヤ2号の姿は可愛過ぎた。天使か! ……天使か。
 そんな天使達を前にした伊月は我を忘れて携帯のカメラで連写していた。こんな可愛い2号達を見たらきっと部のみんなは狂喜乱舞するに違いないと思って。その部のみんなは伊月が一緒に写っていないことに血涙を流す訳だが、本人は知る由もない。
 そういえば。
 伊月ははたと目を瞬かせる。なぜ、自分はこんな場所にいるのだろうか。2号や子犬達と遊ぶのはとても楽しかったし、よい気分転換になった。しかし、伊月一人でというのがどうにも気になってしまう。
 こんなに楽しいことはやはり誰かと共有したいものだ。例えば、部のみんなとか。

「俊」

 子犬の頭を撫で撫でしながらそんなことを考えていると不意に名前を呼ばれ、はっとする。声のする方を見れば、そこには真っ赤な薔薇の花束を持った赤司が佇んでいて。

「え、赤司?! お前、なんで……」

 目を丸くした伊月は柔和な笑みを浮かべる赤司のもとに駆け寄った。

「今日は俊の誕生日だろう。だから迎えに来たんだ」

 おめでとうと目の前に突き出された真っ赤な薔薇の花束と赤司を交互に見る。男の自分が花束なんて受け取ってもどうしようもないし、母に渡して家の玄関に飾って貰うぐらいしか出来ない。
 けれど、赤司が自分の為に選んでくれたプレゼントなのだという事実が嬉しくて。

「ありがとう」

 伊月は受け取った花束を愛おしげに見つめながら、ふわりと微笑んだ。鼻孔をくすぐる薔薇の甘い香りが胸に心地良い。なんだかはぐらかされた気もするが気障なプレゼントに免じて、この場は流されやるのも悪くないだろう。
 これが年上の余裕。などと考えていた時期が伊月にもありました。
 ふわふわとした気分のまま、薔薇の香りを堪能していると急に体勢を崩し、体が宙に浮いたのだ。急いで手短なものに捕まったのはいいがそれが赤司で。顔の近さにも驚いたがそれ以上に自分の体勢にも驚いたのである。

「なんでオレ赤司にお姫様抱っこされてんの?!」
「だから迎えに来たと言っただろう」

 ――つまり、そういうことだよ。
 妖艶な笑みを浮かべた赤司を直視し、甘さと色気を配合した低音で耳元で囁かれた伊月はぶわりと顔を真っ赤に染め上げる。
 どうしようもなくそわそわして、落ち着きなく瞳をうろうろさせたあと、赤と橙のヘテロクロミアと視線を合わせた。

「重いんだから下ろせよ、ばか」

 赤司が伊月を下ろしたのはもちろん、ベッドの上である。
 その後の二人を知るのは、真っ赤な薔薇の花束だけ――。






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