森月のエロをノープランで書こうとして書く気がなくなってしまった。
「ぅ…んぁ、あ、ああっ…!」
夢だろうが、現実だろうが。
「はっ……伊月、いづきっ、イヅキ!」
オレはこの熱を受け入れるだけ。
「あ、あ、もりゃ…さっ、」
夢だろうが、現実だろうが。
オレはあなたの言葉を受け入れるだけ。
――好きだ。
あなたの言葉がオレを縛るだけ。
それだけのこと。
夢だろうが、現実だろうが。
それだけは変わらない。
夕方から降り出した雨の音をBGMにさっさと済ませてしまおうと提出期限はまだ先のレポートを進め、休憩も兼ねてシャワーを浴びようとちょうど立ち上がった時だった。玄関扉の外側からドンッと大きな音がしたのは。テレビ台に置いてあるデジタル時計を見れば、時刻はちょうど22時になったばかり。そんな時間に自分の部屋の玄関扉、しかも外側から物音がすれば、誰だって驚くし不振に思うだろう。
オレは警戒心を強め、じっと無表情な扉を見つめる。するとまた外からドンッと大きな音がして、続いて聞き覚えがある声がオレの名前を呼んだ気がした。
急いで扉を開けるとそこに立っていたのはずぶ濡れの森山さんで。
「あ」
森山さんはオレが何か口にする前に目の前まで歩み寄って来て、引き寄せられるままきつく抱き締めた。服の水分がオレの方にまで移り、肌に纏わりついてしまって、あまり気持ちの良いものではない。
それにここまでぐっしょりと濡れていては風邪を引きかねない。オレは一つため息を吐くと何も言わない森山さんの背中をぽんぽんとあやすように叩き、声を掛けた。
「そのままだと風邪引きますよ。とりあえず体を温めましょ、ね?」
相変わらず何も言葉を発してくれない森山さんだったがオレの言ったことを分かってくれたらしく、腕の中から解放してもらえた。オレはこれ幸いと一言言いおいてからその場を離れ、寝室に使っている部屋のクローゼットからバスタオルを一枚ひっつかむと再び玄関まで小走りで戻る。
戻ってみると森山さんは腕で顔を隠し、その場にうずくまっていた。
「森山さん?」
体を包み込むようにバスタオルを頭から被せ、森山さんと目線を合わせる為にオレも屈む。どうしたのかと聞くべきだろうか。様子を窺いながら思案していると、雨音に混じって小さく掠れた声がオレの名を呼んだ。
「………いづき」
「何ですか?」
「抱かせて?」
森山さんは今、なんて言った?
「えっと、ハグ……ですか?」
「言い方が悪かった。エッチしよう」
えっち…H…エッチ……、
「ハッ!エッチなエッセイ、キタコレ!」
「ねえ伊月、オレ今すごい真面目な話してるからダジャレは止めよう」
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