森→←月←宮を書こうとしたらキャラ崩壊して失敗した。

 両方の気持ちを知っても尚、素知らぬふりをしてそこに居座り続けるオレはきっと、欲深く最低な人間なんだ。


 伊月と書かれた表札を掲げたお手本のような立派な日本家屋の前にオレ・宮地清志はいる。
 相変わらずの家のデカさに気圧されつつも呼び鈴を押せば、中から「はーい」と若い男の声がした。手入れの行き届いた植木をなんとなしに眺めながら、靴裏で砂利を摺り合わせていると中から引き戸が開かれて先程の声の主たる人物が人好きする笑みを浮かべて迎え入れてくれる。

「いらっしゃい」
「おう。…伊月は?」
「こたつで寝てる」

 家主の所在を聞けば、苦笑を零しながら答えるオレを迎え入れた男・森山由孝。それに「ふーん」と返しながら靴からスリッパへと履き替え、森山の後ろをぺたぺたとついて歩く。
 着いた先は障子戸で仕切られた六畳間の和室で真ん中に置かれたこたつからちょこんと艶やかな濡羽色の頭部が見え隠れしている。
 きっと家主の伊月俊だ。

「俊、しゅーんくん!宮地来たよー」
「んー…」

 伊月はこたつから片手を小さくひらつかせ、返事をする。森山はしょうがないと言わんばかりに一息吐くと「飲み物取ってくる」と言い残し、スリッパを鳴らしながらキッチンへ行ってしまった。
 残されたオレはテーブルにA4サイズほどの紙袋を置き、ジャケットを脱いでいそいそとこたつに足を突っ込んだ。こたつの柔らかな温もりが冷えた体をじんわりと包み込み、自然と全身から力が抜ける。
 こたつの素晴らしさをしみじみ噛み締めていれば、足に微かな痛みが走る。僅かによる眉根を気にしないようにしながら犯人が分かっていようと無視を決め込んでいると、もう一度同じ場所に微かな痛み。
 さすがにイラッとしたから近くにあったパイナップルのぬいぐるみを反対側の頭にシュート。見事にクリーンヒットする。

「大好きな“よしくん”に嫌われたくなかったら、お行儀よくしてるんだな」
「…」
「シカトかよ」

 無反応を決め込む向かい側の相手に聞こえるよう舌を打てば、三度蹴りをいれてくる足。その癖の悪い足を掴み掛けたが、本気で拒絶されるのは目に見えている。
 これ以上、伊月に嫌われたくはない。
 オレは膨れ上がる欲求を抑え込むように両手をぐっと握り締めた。

「お待たせー」






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