もう19時になる頃だ。花火が見られるように土手の方へ向かうのかと思いきや、藍ちゃんは土手とは正反対の方向へ歩き始めた。途中、なにが食べたい?と聞かれたので、少し迷ってたこ焼き、と答える。藍ちゃんは道すがらたこ焼きと、おまけにじゃがバターも買った。花火のおつまみのようだ。
だんだんとすれ違う人の数が少なくなり、ついにあたりに人気がなくなったあたりで藍ちゃんは立ち止まった。だいぶ山の上まで歩いてきたようだ。古びたベンチが一つ置かれた小さな休憩スペース。

「わあ!」

そこから見下ろす景色は素晴らしかった。遠くに街の光が見える。ここに花火が上がったら、もっともっと素敵なんだろう。
藍ちゃんは私の反応を見て微笑んだ。

「よかった。気に入ったみたいだね」

「うん。とっても綺麗。ここから、花火も見えるの?」

「もちろん」

ベンチに二人で座る。

「一番花火が綺麗に見える場所を探したんだ。近ければ近いほど迫力は増すだろうけど、それだと人があまりにも多いと思ったからこっちにしたんだ。どうやらボク達だけの特等席みたいだね」

そう話す藍ちゃんの顔は、何だか得意げだった。それを見て、私も嬉しくなる。藍ちゃんが、わざわざこの場所を探してくれたのだ。二人だけの、特等席を。

「そろそろ始まるよ」

藍ちゃんに言われて、空を見上げる。どのへんに上がるのだろう。想像するだけで、わくわくした。藍ちゃんがカウントダウンする。5秒前、4、3、2、1。

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