※105話手前くらい ※ヒロ→玲だけど玲名ちゃん出てこない ※捉え方によっては吹春要素有り。 「うん、うん、え?わかってるよ。うん、じゃあこんな遅い時間に・・・ってそっちはまだ朝か。じゃあまたね、玲名」 ガチャン、と受話器を下ろすとヒロトはふぅと溜め息を着いた。 ハローハロー、マイスウィート 「れいなさんって彼女?」 「??!!!」 誰もいないと思っていた背後から声を掛けられ思わず心臓がドキンと跳ねる。 後ろを振り返ると、きょとんとした顔で吹雪士郎が立っていた。 「び、びっくりした・・・吹雪君」 「あはは、ごめんね」 「こんな時間にどうしたんだい」 「あ、うん。喉が渇いたから食堂に行ってたんだ。そしたらヒロト君が居たから・・・」 思わず声掛けちゃった、と吹雪はふわりと微笑んだ。 「ところで、さっきのれいなさん、って彼女?」 「ち、違うよ!おひさま園の・・・子、だよ」 「そうなの?結構頻繁に電話してるからてっきり彼女かと思ってた」 「・・・吹雪君、どうして知って・・・」 確かに玲名には良く電話をしているが、なんだか気恥かしくて周囲に誰も居ないことを確認しながら話をしていたはずだ。 ヒロトはドキドキと鳴る胸を手で抑える。 「あ、僕が見てたんじゃないけどね」 まるで思考を読まれたようなタイミングで吹雪は言った。 ヒロトは思わず周りをキョロキョロと見まわすが、静まり返り所々消灯された館内に誰かが潜んでいるような気配は無い。 「そう、なの?」 「うん。音無さん情報」 「・・・なるほど。・・・あれ、ということはみんなにバレてるのかな・・・」 そう問うと、吹雪はにっこりと笑った。 「ううん、多分僕にしか言って無いと思うなあ」 何故、吹雪だけに・・・という疑問が浮かんだが、それよりも音無さんの情報収集能力は侮ってはいけない、という結論に至った。 「れいなさん、ってどの子?」 「玲名はジェネシスで副キャプテンをしてた子だよ」 「ああ!あの青髪の綺麗な子だね!」 「そ、そうだね・・・」 ヒロトは先日メンバーで雑談していた時のことをふと思い出した。 誰かが「吹雪は天然たらしだな!」と言っていたのだ。彼は「そんなこと無いよ」と言ってたが確かにどこに行っても彼の周りには女の子たちが取り囲んでいたような気がする。 玲名が吹雪とバッタリ会ったりなどしたら、もしかしたらあの玲名でも吹雪に惹かれてしまうかもしれない。もし吹雪が玲名を好きになったら勝てる気がしない。 「で!でも玲名は、気が強いし、すぐ殴るし、全然人の言うこと聞かないし、」 「でも、好きなんでしょ?」 「・・・!!」 さも当たり前のように吹雪に言われ、しかもそれが当たっていたため思わず動揺してしまった。相変わらず吹雪はきょとんとした顔でヒロトを見ている。 ヒロトは少し考えた後、ぽつりと言った。 「俺は、好きだけど、彼女からは嫌われてると思うよ。・・・さっきも沢山怒られたし」 先ほどの電話の内容が蘇る。叱咤激励というよりは散々貶されたという表現の方が正しいかもしれない。彼女の性格から考えるとそれが彼女なりの叱咤激励なのかもしれないが。 「ヒロト君が怒られることなんてあるんだ」 「あるよ、玲名にはいつも。ジ・エンパイア戦で負けた時はもう日本に帰ってくるなって言われた」 「あはは」 笑い事じゃないよ、とヒロトは肩を落とす。そんなヒロトを横目にクスクスと笑っていた吹雪が白雪のような髪をふわりと跳ねさせながら真剣な顔になった。 「じゃあ次の試合、勝たなきゃ。あと絶対に完成させようね、新必殺技」 「そうだね」 今、二人が生み出そうとしている必殺技は完成間近だ。次の試合までに完成させるため必死に猛特訓をしていた。 「そしたられいなさんもヒロト君の事、見直してくれるよ」 「そうだと良いんだけど」 「明日も練習、頑張ろうね!ごめんね、引きとめちゃって」 「ううん。じゃあ、おやすみ」 「おやすみ」 吹雪と別れ自室に戻ったヒロトはぽすん、とベッドにダイブした。 (見直してくれる、か・・・) 吹雪の言葉を思い出しながら、ヒロトは枕元の封筒に手を伸ばす。それは緑川リュウジから送られてきた手紙だった。封筒を開けると、中にはリュウジからの手紙と一枚の写真が入っていた。写真を大切そうに手に取ると、その中に映っている人物をじっと見つめる。 リュウジにどうしても一枚送って欲しいと電話で頼んだ玲名の写真だった。 写真を嫌がる玲名が珍しく微笑みながら映っている。 (ただ一言、頑張れって聞けたら嬉しいんだけどなあ) 彼女の口からそんな言葉が簡単に出るとは思わないけれど。 「おやすみ、玲名」 写真をまた大切そうに封筒に仕舞うと、ヒロトは瞼を閉じた。 (ハローハロー、大切な君。せめて夢の中だけでも君に会いたいな) ※ザ・バースが大好きです。 ヒロトも吹雪も生まれ変わったって意味のザ・バースなんだなと思うと胸熱 11.07.04 |